連載記事:毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」
「親にされたことを、わが子にしたくない」そんなママに限界がきたら…【毒親連鎖を防ぐ「後悔しない子育て」 第1回】
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「親のことを、手放しで『大好き!』と言える人って、案外、少ないんだな」と、そんなふうに筆者は感じています。
仕事仲間やママ友の多くが、自分の生育歴のどこかは、納得していない…。言い換えれば、「親にされて、嫌だったこと」は、誰にでも、ひとつや、ふたつあるんです。
それでは、
自分の子育てで繰り返さないためには、どうしたら良いのでしょうか? 原宿カウンセリングセンター所長であり、母子論の第一人者の信田さよ子先生が、初の育児論を書かれたというので、お話しを伺ってきました!
信田 さよ子さん(のぶた さよこ)
臨床心理士。原宿カウンセリングセンター所長。親子・夫婦関係、暴力、ハラスメントなどの問題に関するカウンセリングを行っている。著書に『母が重くてたまらない』(春秋社)ほか多数。
■親にされたことを、自分の子どもにはしたくない!
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信田先生は、言います。「私のところにカウンセリングに訪れる人たちの多くが、自分が親たちから受けた育児態度やしつけ、もっと具体的に言うなら
虐待に近い経験を子どもに対して繰り返したくないと考えています」。
日本では、いまだ「虐待」という響きから、殴る蹴るといった残酷な行為のことをイメージしがちです。けれども、虐待とは次の4つのことを指すことを、まずは知っておいて欲しいと思います。
<「4つの虐待」の定義>
●身体的虐待:殴る、蹴るなど身体的な暴力を行う
●心理的虐待:「ばか」「お前なんかはいらない」といった、言葉の暴力や、DVを見せること
●性的虐待:子どもに対して性的な言葉を浴びせたり、性的行動を見せたり、行う
●ネグレクト:子どもの心身の健康な成長・発達に必要な世話・対応をしない
(筆者作成)
身体的な暴力はもちろんのこと、
「子どもの心になんらかの傷を負わせる行為は虐待である」という知識があると、親との間にあった「納得のいかない感情」を、俯瞰(ふかん)しながら突き放して眺めることに役立つのではないでしょうか?
「カウンセリング現場からの声を逆算していくと、
『これだけは子どもに対してやってはいけない』というものが見えてきます。それをしないようにするだけで、虐待の防止になります」(信田先生)
■家族が機能するために大切なことは?
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信田先生のカウンセリングは、「家族の中で生じる問題は、原因があるわけではない」というスタンスです。
「私たちカウンセラーの仕事は、原因を見つけ、犯人を摘発することではないのです。考え方としては、因果論ではなく循環論に近いのかもしれません。
『原因によって問題が起こっているのではなく、悪循環が起こっているのだ』と考えています」(信田先生)
では、その悪循環は、どう断ち切れば良いのでしょうか?
キーワードは、
世代間境界です。わかりやすい例としては、夫との関係がうまくいかない母親が、子どもとタッグを組んで、夫の存在を疎外してしまう…。「適度な世代間境界の形成と尊重が、家族関係を適度に機能させるんです」(信田先生)