折れないしなやかな心<レジリエンス>は幼少期から身につけたい
運動会のかけっこの練習をしているときに5歳の息子が「昨日も○○くんに負けたし、やりたくないなぁ」とポツリ。「今、彼は心が折れている」と夫と目配せをして「大丈夫!練習すれば絶対勝てるよ」や「でもさ、いつも2番なんでしょ。それだってすごいことだよ」と思いつく限り前向きな言葉がけをしました。でも、これって間違っていたのかも!?
子どもが凹んだとき親はどうしたらいいのだろう?と悩んでいたときに「レジリエンス」という言葉に出合いました。
「レジリエンス」とは?
金城学院大学多元心理学科の日詰慎一郎教授によると「竹のようなしなやかな心」のこと。「折れない心」と訳す場合もあります。より詳しくは「ストレスをときに跳ね返し、ときにスルーして、一時的に傷ついて落ち込んでも、しばらくするとやる気を回復して、前向きに生活を送ることができる力のこと。『人生には失敗やストレスがある』ということを受け入れ、それでいて前向きになれる力です」とのこと。
さらに日詰先生が強調していたのが「ネガティブな感情にフタをするものではない」ということでした。
今、そしてこれから、なぜ「レジリエンス」が必要なの?
「メンタルタフネス」や「ポジティブシンキング」という言葉を聞いたことがありますか?「日々の練習や努力で、何があっても倒れない丈夫な大木になる!」というのがメンタルタフネスで、「悪いことは忘れて早く次に進む」「他と比べればまだマシ」という考え方がポジティブシンキング。「これらも重要な概念で、ストレスマネジメントの主流だったこともあります。でも、成功体験を繰り返すのは難しく、またメンタルタフネスやポジティブシンキングでは悪い考えにフタをしてしまい、心の歪みが体に出てくるリスクがあります。そこでレジリエンスに脚光が当たっているのです」と日詰先生。
私の声かけは「レジリエンス」からはズレていた!?
こうしてみると、私が息子にした声かけはまさにメンタルタフネスとポジティブシンキング。私自身がこう言われて育ってきたのだから、当たり前といえば当たり前かもしれません。でも時代はレジリエンス!ぜひ子どもに身につけさせてあげたい!日詰先生、どうしたらいいでしょうか?
「レジリエンスは子どものころに身につけると生涯にわたり有効です。
お母さんが意識して道筋を作ってあげましょう」
幼少期からママにできることは?
レジリエンスを身につけるテクニックはいくつかありますが、その中から小さな子どものいるママが今すぐできる4つを紹介します。
1、気分転換でネガティブループから脱出させる!
「嫌なことが起ったときの感情を何度も思い返すことで、より気持ちが沈んでいきます。運動をしたり音楽を聴いて気晴らしをさせ、気分転換することを教えてあげましょう」
2、子どものモヤモヤした気持ちを言葉にする!
「子どもが自分で自分の感情を自覚するのは難しいもの。子どもに元気がないときに『今日、嫌なことがあった?』『そのあとに考えたことや気持ちはどうだった?』と聞いて具体的な言葉にしてあげます。自分の気持ちに気づくことが、ネガティブな感情から抜け出す第一歩です」
3、どんな感情もいったん受け止める!
「感情を話してくれたら『それでいんだよ』『今はそういう気持ちなんだね』と表現できたことをほめ、受け止めてあげます。それだけで気持ちが落ち着くし、ネガティブな感情は持ってもいいと伝わります」
4、「いいこと探し」を一緒に楽しむ!
「寝る前に『今日はどんな楽しいことがあった?』と子どもに聞いて、いいことばかりを振り返ってみましょう」
ある研究では、その日あった3つの良いことと、その理由を書き出すことを1週間続けると、ポジティブ感情を高める効果が半年続くと証明されているそうです。
ママも子どもも少しずつ意識して変化していこう
日詰先生の話を聞いてから、意識して子どもへの接し方を変えてみました。1歳8カ月の息子が転んで泣いたとき、今までだったら「痛くない痛くない。
泣かないの」と言っていました。でも最近は「そうかそうか。転んじゃったね」と声をかけるようにしています。また、5歳の息子とは、その日あった良いことを、夜、お互いに報告し合うようになりました。はじめは「え〜、わかんない」と答えていた息子ですが、だんだんと報告してくれることが増え、日常の「楽しいこと」を見つけ、覚えていることが上手になったような気がします。
冒頭のかけっこでのレジリエンスにつながる声かけはコレ!
最後に、冒頭のかけっこでの私たち親子のやり取りを読んで、日詰先生がレジリエンスにつながる声かけを考えてくれました。「2位になって悔しいんだね。でも、前より腕の振りが良くなってるよ!」や「2位になったけど、前より1位との距離が短くなってるね」。
気持ちを受け止め、いいところを見つけて伝える。効果がすぐに見えるものではないけれど、こうした日々のやり取りの積み重ねで、子どもたちにレジリエンスが身につきますように!そして私自身、日々心が折れてばかりなので、一緒にレジリエンスを身につけて、しなやかな心の母親になりたいと切に思いました!
<文:フリーランス記者飯作 紫乃>