こどもの皮膚科ドクターが語る 秋 -季節の変わり目- になぜ湿疹が悪化するのか
専門家・プロ:野﨑誠
第4回風邪をひいたら湿疹が悪くなるってホント?
さて、秋の湿疹のお話は最終回の4回目になりました。今回は風邪のお話です。もちろん、皮膚科では直接風邪の治療はしませんよ。でも皮膚科は風邪に振り回される所ではあるのです。今回はそんなお話をしていきます。
風邪と湿疹の関係性
風邪をひくと湿疹が悪くなる。そんなことを聞いたことはありますか?教科書や本を見てもそのような文章にはなかなかお目にかかれません。が、外来で患者さんをみているとそのように実感することが多々あります。とくに秋など変わりゆく季節には結構な頻度で見られます。風邪をひきやすい季節は、湿疹が悪くなりやすい季節?どうも両者には関係がありそうです。
このように湿疹と風邪の間には、教科書に載っているような「証明された関係」はありません。「医者の直感としては関係があるよ、でもなぜかははっきりしないよ」という「なんとなくな関係」です。「なんとなくな関係」止まりではあるものの、両者が関係していることをにおわせる理由がいくつか考えられるのです。
そのあたりから話を進めていきましょう。
風邪という「炎症」が湿疹を悪くする?
どこかに感染が起きたとき、そこは外からやってきた微生物たちとの戦いの場となります。その反応をまとめて「炎症」と呼びます。炎症が起きているとき、体はいろいろな化学物質を出して、微生物からの攻撃を押さえ、自分たちの体を守ろうとしています。けれども体を守るための化学物質が、湿疹を悪化させている可能性があります。そう考えられる理由はいくつかあります。
- のどの風邪や鼻の風邪をひいたときは、お腹の風邪をひいたときに比べて顔に湿疹ができるようにみえること
- 予防接種(人為的に病原体を体に入れて抗体をつくるため、その過程で炎症が起こります)のあとには湿疹ができやすいこと
- 予防接種のあとの湿疹と風邪をひいたあとの湿疹の形が似ていること。
などです
鼻水、よだれで湿疹が悪化する
鼻風邪をひいたあとには鼻と口の間に湿疹ができることがよくあります。同様によだれのせいで口の周り、とくにあごにかけて湿疹ができることもよくあります。これは鼻水・よだれそのものの刺激に伴い皮膚が炎症を起こすためでしょう。もちろん、それらを洋服でこすったり、ティッシュでかんだりするという子どもたちの行為も皮膚への刺激になって、湿疹を悪化させる場合もあるでしょう。