小児科の先生が取りたがらないのはある意味当然かと思います。子どもたちに痛い思いをさせてしまい、今後別の病気の治療のときに差し障る可能性がありますからね。では皮膚科医は水いぼを取る先生が多いのかと思いきや、取らない先生も増えているようです。結果として、水いぼを取ってくれる先生のところに水いぼ治療を希望する患者さんが殺到することになっています。
当院では水いぼを取ること自体は別に構わないのですが、最近新たな問題が発生しました。それは医師の目と腰問題です。近頃どうも老眼が出てきたようで、小さな水いぼを取るのが徐々に大変になってきました。また中腰で水いぼを取っていますので、腰の痛みもだんだん出てきたみたいです。
これもまた職業病でしょうか・・・。
水いぼはいつ治るのか?
この問題も結構難しいですね。先ほどお話したように、免疫が成立すれば完治するのですが、免疫の成立は目で確認できません。したがって水いぼの完治を知ることは非常に難しいのです。一般的には水いぼが数カ月間見られなかったら治癒と判断します。潜伏期を考えると数週間で判断するのは早すぎます。2~3カ月後に水いぼが再発する子を何人も目にしていますから。ある日、別の型を持つ水いぼウイルスが感染を起こすこともありますしね。
なので、水いぼについては完治をめざすというよりもほかの人へ感染するリスクを最小限に抑えるというのが現実的な対策になると思います。つまり見た目に水いぼがなければ大丈夫だという考え方ですね。社会問題として完治が必要になる状況は合宿などの集団生活とプールです。いずれの場合も他者に感染するリスクがなければ問題は生じませんので、水いぼの症状がなくなることを実際のゴールと考えてよろしいかと思います。そしてしばらく経過を見て、新しい水いぼができたらすぐにそれを取ってしまい、症状がない状態をキープしていくということでよいのではないかと思いますよ。
さて水いぼのお話はいかがでしたか?見た目は大したことがないのですが、実は奥が深い病気です。治療の大変さもおわかりいただけたのではないでしょうか。社会を反映する病気の1つともいえるかもしれませんね。
野﨑誠(のざきまこと)わかばひふ科クリニック(東京都武蔵野市・皮膚科、小児皮膚科)院長。国立成育医療センター(小児皮膚科)、東京都立東大和療育センター(皮膚科)勤務。2001年山形大学医学部卒業山形大学医学部皮膚科入局山形県公立置賜病院(山形県長井市)