2017年3月26日 14:00
「ダウン症って不幸ですか?」その問いに答えるのは、ありふれた日常の光景
しかし、それがどんな感じだったか話してシェアしたり、この本のように当事者やご家族以外がまとめた経験談を読む機会というのは、あまり多くはないかもしれません。
私も自分の原体験を思い出すきっかけを得て、引き込まれるように読み進めましたが、特に姫路さんが文中で
「ダウン症のある子どもはまるでコタツの様な存在。温かくひとなつっこさに引きつけられ子どもたちが自然に寄ってきてしまう」
と言っていたのはとてもうなづけました。
それは一般的な「ダウン症がある子どもは天使のような存在」と恣意的に美化する文脈とは違います。"普通のお父さん"として等身大でダウン症のある子どもたちと向き合った姫路さんならではのユーモアとやさしさに溢れた表現だと思います。
ありふれた日常の情景なのに、どうして胸が熱くなるのか
出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=10248007577
この本を読まれた方は、ダウン症がある子と関わった自分の原体験をふと思い出すような、優しい気持ちになるエピソードにたくさん出会えることでしょう。もちろんその原体験が特にない方にとっても、胸を熱くさせる部分がとても多いと思います。
たとえば、第2章のおおとりを飾る喜井さんご家族のエピソード。
ダウン症がある娘・晶子さんの仕事帰りを待っている、定年退職されたお父様。晶子さんから毎日かかってくる「帰るコール」。そして時間ぴったりに始まる二人の晩酌、冗談を飛ばし合いながら楽しむ様子は、ありふれた日常の情景です。
それなのに、毎日がそうして巡っていること自体になぜか目頭が熱くなりました。
私が流すこの涙は一体何でしょうか。ありていにいえば「やっぱりどこかで偏見があった、ごめんなさい」という、社会を構成するひとりとしての懺悔の涙、なのかもしれません。
書籍の冒頭、姫路さんが引いている新出生前診断の示すショッキングな数字とその分析が端的に示すように、実際のダウン症のあるひととの生活像と、妊婦の立場でイメージするそれとのギャップは、決して小さくはないのが現状です。新出生前診断をめぐっては、賛否両論含め様々な見解が混在する昨今ですが、新出生前診断を受けるか受けないかの選択をする前に、姫路さんのこの書籍を読んでもらいたい。
いまここ・現在の日本で、こんなに幸せを分かち合いながら暮らす家族がいるという事実こそ知ってほしい、そう願ってやみません。