2017年6月9日 17:00
オキシトシンとは?ホルモンの働き、自閉症スペクトラムの新薬開発に向けた研究動向などくわしく紹介します
こちらの研究では、オキシトシンの投与を受けていない24名の対象者と比べても、自閉症スペクトラムにおける社会性、行動発達、常同行動のいずれにおいても改善されたという結果は出ませんでした。
このように、現段階では研究チームによって、また実験方法、対象人数、評価などによってばらつきがあり、効果についての明確な立証には未だたどり着けていません。またオキシトシンが鼻からどのような経路で脳内に入るのか、判明していません。さらには、適切な投与量や投与期間も分かっていません。オキシトシンの効果は個人の性質によっても異なることや、時には逆の作用をすることもあります。
また、オキシトシン投与時の経過観察における、研究者(定型発達者)と自閉症スペクトラムのある当事者の関係性にも着目する必要があるでしょう。オキシトシンを投与された当事者にどのような効果が出るのかを判断するのは、その研究者自身です。
つまり、「当事者である自閉症スペクトラムのある人が、観察者である定型発達者に視線をよく向けるようになった」ということを研究成果としてよいのかという疑問も残っています。
同時に、これらの研究は、実生活とはかけ離れた環境で行われた実験であり、実際の治療においての結果ではないことを理解しておかなければなりません。
http://www.readcube.com/articles/10.1111/jcpp.12305
出典:Guastella et al. “The effects of a course of intranasal oxytocin on social behaviors in youth diangnosed with autism spectrum disorders: a randomized controlled trial” J Child Psychol Psychiatry. Vol.56, No.4. pp.444-452. 2015.
https://academic.oup.com/brain/article/138/11/3400/331027/Clinical-and-neural-effects-of-six-week
出典:Watanabe et al. “Clinical and neural effects of six-week administration of oxytocin on core symptoms of autism” Brain, Vol.138, No.11. pp.3400-3412. 2015.
http://ci.nii.ac.jp/naid/40020925700
参考:山本英典「オキシトシン点鼻薬の自閉スペクトラム症に対する臨床応用」