子育て情報『【新連載】精神科医・田中康雄先生――肩の力を抜いて相談して。精神科の役割と、大切にしていること』

2021年5月25日 06:15

【新連載】精神科医・田中康雄先生――肩の力を抜いて相談して。精神科の役割と、大切にしていること

でもそれは、その子が『眠たい』と言わない限り、なかなかわかり得ないことです。

決めつける前に、いろいろとこれまでの経験から一緒に協力して推測する情報交換することで、その子理解は深まります。

曖昧ななかでも精神科に相談しようと思った時点で、なにかしら漠然とした思いが保護者にはあるはずです。その思いを言葉にすることで、徐々に輪郭をはっきりとさせて、曖昧な相談が確認したい項目へと整理されていきます。


診察室で大切にしていること

できるだけ個々の不安や心配事に近づき、整理するお手伝いをしていきたいのです。でもその思いは個々に異なります。両親が来たときも、それぞれの保護者が不安に感じていることは別々なものです。

保護者が発達の気になる子どもをつれて受診されたとき、僕は子どもに向かって「今日ここに来ることを、どんな風に説明されたの?」と確認します。
ほとんどの子どもは、首をかしげます。「聞いていないのかもしれないね」、「ここは、生活しているなかで困ったこと、いやなこと、心配なこと、相談したいと思っていることを相談する場所なんだ」と伝えます。「もしかして、お父さんやお母さんが、なにか君が相談したいことがあると感じたのかもしれないね」と付け加えることもあります。

いずれにしても、多くの子どもは、最初は「ないよ」と話します。初対面の大人に、気楽にべらべらと相談できるほうが、心配な位ですから、僕は「ないか、よかった。今はない。でも、もしこれからなにかあったら、相談しようね。ここはそのための場所だから」と伝えます。
「じゃ、同じように今日はお父さんやお母さんからも、心配なことがあれば相談したいので、ちょっと待っていてね」と、子どもにはプレイルームへ移動してもらいます。

もっとも、切羽詰まっている子どもの場合は、最初の関わりでたくさんの困りごとを語ることもあります。その場合は、診察室での面接を続けていきます。プレイルームに移動した場合でも、スタッフと遊びながら、ちょっと困ったことを口をしたりすることもあります。そのときは、スタッフは、それを相談したらいいんだよと後押しします。

診察室では保護者の困りごとを聞きます。発達のうえで「気になっている」ところ、そして今日、受診するまでにあった思いを聞き取り感じ取りたいと思います。

診察室は、子どもの、そして保護者の、今困っているこが語られるところです。

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