2022年9月30日 16:15
ダウン症がある子ども「食べ物を丸のみ」していない?摂食・咀嚼・嚥下機能が弱い理由やデメリット、トレーニング方法も解説【医師監修】
なぜダウン症のある子どもは摂食嚥下機能が弱いの?
それではなぜダウン症のある子どもは、食べたり飲み込んだりがうまくいかないのでしょうか。ダウン症の特性と合わせてみていきましょう。
まず、発達がゆっくりであることがあげられます。食べ物をあげようとしても、舌が前に出やすいために、食べ物をのせたスプーンを舌で押し戻そうとしてしまいます。これは、発達がゆっくりなため原始反射が消えていくのもゆっくりだからということもあります。まずは原始反射が消えるのを待ってから、離乳食を開始します。
全身の筋力の緊張が低いために、噛む力が弱い場合もあります。ダウン症のある人は筋の緊張が弱く、噛む力も強くないこともあります。
このため、口に入った食品をよく噛んで食べるということがむずかしく、食べたものをそのまま飲み込んでしまうことが起こります。
噛み合わせの問題がある場合もあります。ダウン症のある人は、上下の前歯が噛み合わず、開いた状態(開咬・かいこう)や受け口(反対咬合)などの歯並びになりやすく、上下の歯のかみ合わせが悪いことがあります。
口の中の形状的な理由がある場合もあります。上あごがせまくて高いということから、舌がうまく使えないことも多くあります。通常は、飲み込むときに舌は上あごに接触しながら食べ物をのどの方へと送り込みます。しかしその舌の動きがうまくできなかったり、上あごが高くて舌が十分に届かなかったりする場合があります。すると、上あごに食べ物が残っていたり、食べるときに空気を一緒に飲み込んでしまったりすることがあります。
鼻で呼吸ができずに、口呼吸になってしまうのも原因の一つです。摂食嚥下のプロセスの中で、大事なことは、食べ物を口の中で噛んで飲み込むまでの間、上下の口唇が閉じていることです。食べ物を口の中で噛むときに口が開いていると食べこぼしの原因となります。また、のどへと送り込むことやごっくんするときは、口が開いたままではできません。
一口量の認知の問題もあります。身体面の特性だけでなく、認知力も食べ方に影響します。一口サイズがどのくらいなのかがよく分からないために、大きく食べ物をかじりとり、そのままよく噛まずに食べてしまうということがあります。
こうした特徴から、食べ物を大きい塊のまま口の中に入れて、筋力が弱いためにうまくかみ砕くことができず、食べ物をそのまま飲み込んでしまう「丸のみ」