2023年2月24日 06:15
自閉症娘は音感抜群!周囲の期待とは裏腹に、3歳から通ったピアノ教室をあっさり辞めた「娘らしい理由」
ピアニストの道からドロップアウト、そして...
結局、いっちゃんは教室の「目に見えないプレッシャー」を理解することができないまま、その後開催されたコンテストにも一度たりとも出ることなく、教室をやめてしまいました。
やめる直接のきっかけは、中学入学のころに引っ越しをしたことでしたが、引っ越し先の近くにある系列のピアノ教室を紹介されたにもかかわらず、「もう習うのはいいや」と、一度も行ってみることはなかったのです。
Upload By 寺島ヒロ
今いっちゃんにピアノ教室のことを聞くと、
「とにかくコンテストが分からなかった!コンテスト用の曲は絶対間違えないように弾かなきゃいけないし、テンポも楽譜通りにしないといけないしで楽しくなかった」
「先生に言ったら、ピアニストになりたいならできるようにならなきゃ!って言うから、別になりたくないなあ~...って思って。じゃあ、私じゃない人が出たらいい、譲ろうと思った」
「今なら『そういうところが評価されるゲーム』だったんだと分かるよ」
と言います。
ASDらしい、いえ、いっちゃんらしいエピソードだと思います。
知識をシェアしてくれるということの価値
それから4年、ほとんど野生の勘で音楽をやってきたいっちゃんですが、自分で作曲した曲を動画投稿サイトなどに投稿して、ほかのクリエイターの方と交流などするようになると、言葉で音楽を説明しなければならない場面も増えてきました。
すると、「ピアノ教室で習ったことを周りも知っているので驚く!ピアノ教室で教えてくれたことって、世界中で通用することだったんだ!」と言いだしました。また、曲をつくっている間に唐突に「このコード進行、見たことあると思ったらピアノ教室で習った!」と言ってくることもあります。
いっちゃんが、習い事の価値に気がつくのはこれからなのかもしれないですね。
執筆/寺島ヒロ
(監修:鈴木先生より)
絶対音感を持っている自閉スペクトラム症のお子さんは決して珍しくありません。生活音全てが音符になってしまうので「ちゅらい」のです。クーラー、自動車、キーボード、プリンター、時計などさまざまなものから発する音が音符となって聞こえてくるのです。気が散ってしまい、集中して人の話も聞くことができません。しかも音に敏感なため、クラスがうるさいとなおさら教室にいることだけでも苦痛になってしまい、不登校の原因の一つとなってしまうこともあります。