「特性を検査する」ってどういうこと?【LITALICO発達特性検査監修者・井上雅彦先生インタビュー】
という困難や弱みになることもありますし、個人の趣味などでは「集中して本1冊読み切った」といった強みとなることもあります。
本人にとっては、まずはそういった個別の特性や、個人の中の苦手と得意の差が、困ったこと→障害となって現れないように考えていくことが必要になりますし、そのためにお子さまと保護者さま、周りの方にとって、どのように本人に合ったやり方にしていくのか、できることを増やしていくのかという観点で考えていくことが大切になってきます。
その意味で、まずは先入観がつかない「特性」という言葉を使うことが、その子を理解し、サポートしやすくするうえでも馴染む考え方なのではないかとも思っています。
特性理解を「診断がないと支援できない」を変えるきっかけに
LITALICO発達特性検査のように、特性をキーワードにすることは「困り」をスタート地点とする支援にもつながります。
診断のある場合は支援対象とされるけれども、診断がない場合には支援が受けにくいという現状もまだまだありますね。
ですが、「診断がないかぎり何もできないのか」というとそうではありません。先ほども言ったように、「その人に特性があって、それが本人にとって困った状況であれば変えていく」、その観点がすごく大事です。身近にいる保護者さまや周りの方が本人のもともと持っている得意や苦手に対して、できることを考えることが重要です。
診断がないが、何らかの困りごとや特性がある場合「グレーゾーン」と呼ばれることもあります。現状だと、診断があることでサポートや制度が受けやすくなる傾向があるので、こうした診断がないグレーゾーンの方に、支援が届きにくい場合が出てしまうこと、また、本人の努力不足、あるいは保護者の育て方の問題ではないかとされてしまうこともあります。
そうすると診断がないことが支援を遅らせてしまう場合もあるかもしれません。必要な支援が届かず、放置されることによって、困りごとや、生活をしていくうえでの困難が大きくなり、それぞれの特性が診断域になってしまうケースもあります。この問題は、何とかしていくべきではないかと思います。もう一つの課題として、診断名だけにとらわれていると、特性が合併している場合などに、診断のある症状や特性以外に困っていることがあっても、それに対しての支援が見過ごされがちになるということもあります。