子どもの声に徹底的に耳を傾け未来をつくる。前例が無いからこそやってみる精神の、宮城県の新しい教育
2023年、宮城県教育庁副教育長。2024年、宮城教育大学副学長連携担当理事・副学長
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教育を開き、学校現場と悩みや感動を共有する
ーーまずは佐藤教育長にお話を伺います。宮城県が推進してきた教育がどこを目指しているのか、そして教育長としてその原点にあるものがどこにあるのか、教えていただけますでしょうか。
宮城県ではこれまで、小・中・高等学校を通じて、人や社会と関わる中で社会性や勤労観を養い、社会の中で果たすべき役割を考えながら、将来の社会人としてのよりよい生き方を主体的に求めさせていく『志教育』を推進してまいりました。
そんな『志教育』が始まった1年後に起きたのが、東日本大震災です。
ーー2011年の震災のタイミングと重なった。
子どもたちは内面的なストレスや、将来に対する不安を抱えながらの生活を余儀なくされました。
その時に、ある方の言葉が心に残っているのですが、「子どもたちは復興の進まない荒れた地域で生活をして、その光景を見続けることでそれが『心の原風景』になるんだ」というようなものでした。その言葉に、心を動かされたんです。
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ーー震災後の風景が、子どもたちの原風景となった。
だからこそ最優先に考えたのが、1日でも早く学校を再開するということでした。多くの方々のご支援のもと、当時の被災状況からは考えられないスピードで学校を再開することができて、子どもたちの居場所をつくることができました。停電することも多かったのですが、先生たちが蝋燭の火を灯してその中でテストの採点をしていたことをはっきりと覚えています。
学校を再開して、学校に行けば友達に会えることが、一番の心のケアになったのではと感じています。
地域の方々にとっては元気に学校に通う子どもたちの姿に、希望や未来を見ていたのではないでしょうか。
その光景がずっと心に残っていて、それが私の教育における原点の一つになっています。ーーその原点が、『志教育』にも繋がっていると。
『教育は明るい未来のためにある』と思っており、同時に教育は未来のための仕事だと信じています。学校は子どもたちの夢の実現のために、未来を創る場所だとも思っています。『志教育』の取り組みは子どもたちに将来への夢や希望を持たせ、復興や地域に貢献できる人材を育てる上で重要な役割を担ってきたものと考えています。