「個と環境の相互作用」の視点、子どもの困りごと解決にどう役立てる?公認心理師・井上雅彦先生に聞きました
個と環境の相互作用とは
「個と環境の相互作用」とは、個人の特性と、場所や人、物といった環境が相互に影響することで、障害や困りごとが現れるという考え方です。また、この考え方のもとでは、それら両方向の視点で働きかけることで、障害や困りごとの軽減を目指していきます。
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LITALICO発達特性検査※でも、この考え方を大切にしています。お子さまの生きづらさや困りごとが「お子さま」と「環境」の相互作用で生まれると考え、監修を担当した検査結果のレポートでも、その立場から環境を調整する方法や、本人のスキルを獲得する方法といったサポートの方法を提案しています。
※LITALICO発達特性検査は、お子さまと保護者さまが感じている困りごとに対して、その特性の現れ方や背景、具体的なサポート方法が分かる検査です。オンラインで検査に回答するとすぐに結果が得られ、検査結果によって、お子さまの特性の現れ方の傾向や困っている事柄への対応方法のヒントが得られます。
「個と環境の相互作用」の視点で困りごとを捉え、軽減する手段について、いくつか具体例をご紹介します。課題への対応は環境調整や個人のスキルを獲得するなどの方法が考えられます。
【個】視力が弱い
【困りごと】裸眼で周りのものがよく見えない
【環境調整】メガネをかける/文字を大きくする/黒板から近い席にするなど
裸眼だと視力が弱くて見えにくい状態でも、メガネをかけて視力矯正したり、見えやすくなる工夫をすることで、困りごとや障害を軽減できます。
発達特性に関しても同様の考え方ができます。
【個】聴覚過敏があり、ざわざわした音が苦手
【困りごと】授業中の周りの音が気になって、教室を飛び出してしまう
【環境調整】音が気にならない位置に座席を変える/ノイズキャンセリングイヤホンやイヤーマフを使って苦手な音を軽減する/苦手な音が多い授業では休憩を入れるなど
【個人のスキル獲得】苦手な音源から距離を取る/好きなことや集中できることをするなど、苦手な音から気を紛らわす方法を見つけるなど
「医学モデル」・「社会モデル」と「個と環境の相互作用」
いわゆる障害についてのアプローチには、大きく2つの立場があると言われています。その一つが、本人への治療や働きかけによって困りごとをなくそうという考え方で、これを「医学モデル」と言っています。
一方で、障害が周囲の環境によって作り上げられるものと捉え、社会の環境を変えることが障害をなくすことにつながるというのが障害の社会モデルの考え方です。
「個と環境の相互作用」は、医学モデルと社会モデルを統合したもので、個人の問題と社会の問題、どちらかだけではないという立場の考え方です。つまり、障害を個人と周囲の環境双方から捉え、状況を全体的に理解することで困りごとや生きづらさを軽減していくということです。
これは2001年に世界保健機関(WHO)によって採択されたICF(国際生活機能分類)での主な考え方でもあります。
「個と環境の相互作用」を具体的に活かすポイント
家庭や園・学校でのお子さまの困りごとに対しても「個と環境の相互作用」の考え方を使って工夫できる場合があります。
まずは、個人の特性と環境それぞれを知り、それらの両面から、対応方法を検討します。困りごととなって生じている具体的な行動をピックアップすると、どのように対応するとよいかを考えやすくなります。課題が複数ある場合でも、ある特定の場面の具体的な行動に絞って一つずつ取り組むことをおすすめします。
その際のポイントとしては、本人のスキル獲得も合わせて検討することです。前述の聴覚過敏の例のように、環境調整だけでは難しい場合もあるので、双方から考えるといいでしょう。
お子さまの特性や状況について、洗い出したり保護者の方が自分で判断したりするのが難しい場合や、対応方法が分からない場合もあるかもしれません。そのような時にはLITALICO発達特性検査を活用すると、理解しやすい情報がまとまって提示されます。
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LITALICO発達特性検査の検査結果レポートを使って、「個と環境の相互作用」の視点で対応を考える方法を具体的にご紹介します。
LITALICO発達特性検査では、検査結果の回答から、お子さま一人ひとりに合わせたレポートが出されます。そのレポートも「個と環境の相互作用」の考え方でフィードバックされるものが多くあります。例えば、以下のようなお子さまの困りごとを例に考えてみましょう。
・いつもと違うことがあると、パニックになりやすい
・スケジュールの変更を受け入れられずに癇癪を起こすなど
生活する上では、思い通りにならないことや、予定などの変更が必要になることもあるので、うまく受け入れられるようになってほしい、パニックや癇癪を起こす場面を減らしたいというお悩みのある保護者の方も多いと思います。
上記のような困りに対して、LITALICO発達特性検査で表示されるレポートの一例をご紹介します。
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このように、まず、お子さまの特性や、困りごとの現れやすい背景要因が提示されます。ここでは、個の特性と、環境や条件などの相互作用によって困りごとが起きやすいことが分かりやすく紹介されています。
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検査結果レポートでは、単にお子さまの支援目標が提示されるだけでなく、その困りごとが「個と環境の相互作用」によって生じるという基本的な考え方に沿って、お子さま個人のスキルへの働きかけだけでなく、環境調整も視野に入れた対応方法も提案されます。上記のように、環境を調整することで困りごとが起きにくくなる方法など、特性に合わせ、うまくいきやすい対応方法に取り組むヒントが得られます。
環境と個の双方向の視点で、お子さまの行動にアプローチ
「個と環境の相互作用」の視点で捉えると、お子さまの特性を「いい・悪い」で評価したり、周りの環境を責めたりすることなく、どうしたら困りごとが生じにくくなるかという点に集中して考えやすくなるのではないでしょうか。それが本人と周囲の人、みんなで前向きに考え、困りごとが軽減できるヒントにつながります。
お子さまの困りごとについて、実際の場面で具体的に対処法を考える場合、特性と環境のどちらかだけに原因があるかを追及することはあまり意味がないとも言えます。「なぜできないのか?」と責められているように感じたり、お子さま自身も否定されたと感じてやる気や自信を失ったり、逆に頑張りすぎたりして、問題の解決から遠ざかることもあります。それよりも、お子さまにどのような特性があるかを把握し、困っている行動の一つひとつについて、それらの特性と、どのような環境が相互に作用して困りごととして現れるかを考えていくことが、日々の取り組みでは有効です。その際には、環境をお子さまに合うように整えていくことと、お子さまがうまくできるような「個」に働きかけるサポートの両面からのアプローチが大切です。
保護者の方が自分で分析するのが難しい場合もありますが、その場合にはLITALICO発達特性検査や専門家への相談などを活用し、できそうなところから少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。
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