ソニーが “子ども投資” を59年間も続ける深い理由
これは、小中学校の理科の先生から理科教育論文を募り、優秀な論文を執筆した学校に助成金やソニー製品を贈呈するというもの。
論文の内容は、たとえば「てこの原理をこういうオリジナルの手法で教えている」というような授業内容についてのもの、あるいは「いま授業で抱えているこういう問題を解決するために今後はこんなことを試してみたい」といったPDCAサイクルのような、先生方が日常的におこなっているアイデアや工夫についてのものです。
子どもたちではなく学校、先生に助成金を贈るということには、明白な理由があります。テープレコーダーが大きな利益をもたらしてくれたとはいえ、資金は限られていました。そういう状況において、どうすればより多くの子どもたちの教育を支援できるでしょうか。
答えは、「先生を支援すること」です。50人の子どもではなく、50人の子どもを教えている50人の先生たちに資金を使う。そうすれば、2500人の子どもたちの教育に資金が有効活用できます。
こうして、学校の先生たちを支援するというかたちとなったのです。
子どもの「科学する心」の芽生えを大人にも共有してほしい
当初、小中学校を対象にはじまったこの活動も、現在では幼稚園、保育所、認定こども園にまでその対象を広げています。
幼稚園等から募集するのは「『科学する心』を育む保育実践」をテーマとした論文です。「科学する心」とは、わたしたちは7つの項目で定義づけていますが、ここではかいつまんで説明しましょう。
幼い子どもにとって身近な生きもののひとつに、ダンゴムシがいます。はじめてダンゴムシに触れ、どんどん集める子どももいれば、なかには半分に折って殺してしまうような子どももいるでしょう。
でも、そういうことを子どもがしなくなるためには、大人が「殺しちゃ駄目」と言うのではなく、子ども自身が実感として「命の大切さ」を感じる必要がある。植物学とか動物学といったものだけではなく、道徳に近いようなものも含めて理科をとらえる心――それを、わたしたちは「科学する心」だと定義づけています。
そして、子どもの「科学する心」が芽生える瞬間をぜひ大人も共有してほしいのです。そのためにはじめたのが、『「科学する心」を見つけようフォトコンテスト』です。これは、子どもが探求し感動した姿をとらえた写真を募集するというもので、2018年でもう12年目になりました。