記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」
たとえば、暗記作業中に感じたことをノートに記すということでもいいかもしれません。「感情」に着目して、いろいろと工夫してみてください。
それから、「複合する」ということも記憶の定着を促すために重要なキーワード。ある事柄を単体で覚えようとするのは、じつは脳にとってはすごく記憶しづらいものなのです。そうではなくて、覚えようとする事柄にいくつもの別の事柄を絡めてあげると覚えやすくなる。たとえば、鎌倉幕府ができた1185年という年を覚えるにも、それ単体で覚えようするのではなく、同時期にどこでどんなことが起きていたというようなことを絡めて覚える。そうすれば、記憶効率が格段に上がります。
これは、単体での記憶が稠密(ちゅうみつ)化してつながりを持ちはじめると、新しく加わったことも覚えやすくなるという脳の仕組みによるものです。
そういう意味では、子どもがなかなか暗記できないからといって、親御さんも子ども自身もがっかりする必要はありません。なぜなら、子どもが暗記作業をはじめたばかりのときは、脳のなかにはまだ記憶がまばらにあるだけなのです。それが徐々に増えてつながりを持ちはじめると、量質転化的とでもいいますか、暗記の質が一気に上がる。粘り強く頑張れば、いずれ結果が出ることを知っておくべきだと思います。
最後に「寝る前の復習」についてもお話しておきましょう。睡眠の直前に復習すると記憶に定着しやすいということを耳にしたことがある人も多いはずです。ただ、幼い子どもの場合、明るい光の下で机に向かって復習するような必要はありません。というのも、寝る直前に興奮して睡眠の質が下がると記憶の定着が阻害されるからです。
子どもなら、布団に入って、その日に勉強した内容を少しだけ思い出しながらそのまま寝る習慣をつけてみる。その程度でいいと思います。
『男の子がさいごまでできる めいろ』
『女の子がさいごまでできる めいろ』
篠原菊紀 監修/KADOKAWA(2018)
■ 脳科学者・篠原菊紀先生 インタビュー一覧
第1回:記憶力の要は「記憶の仕方」にあり。親が知っておくべき「記憶の脳科学」
第2回:子どもの「やる気」と「集中力」を引き出す脳科学的テクニック(※近日公開)
第3回:子どもの気質をテストで診断。脳のタイプ別「“勉強好き”に育てる方法」(※近日公開)
第4回:「間違った褒め方」していませんか?子どものやる気を維持させる「褒め方」