5歳児が市場調査から販売まで! ビジネスの基礎を学ぶイギリスの「エンタープライズ教育」
子供の手で作ることができるものを、子供たち同士が話し合って決めるのです。
1年生の頃は先生がかなり手伝って、ブレスレットを作っていました。材料はリボンと穴の空いたシリアル、Cheerios(チェリオス)。まさに「食べられるブレスレット」です。
イギリスの小学校一年生は4歳。年齢の低い子供でも作れるし、食べてしまっても問題がない。よく考えられた商品でした。一箱どこかの家庭が寄付したものを使ったようです。
もう少し年齢が上がると売り物も多様化してきます。空き箱で工作をして売り出す班もあれば、家庭から持ってきた布切れや輪ゴムを元に、使えそうなものを器用に作ってしまう高学年の班も。小麦粉や砂糖を手分けして集め、学校の調理室でカップケーキを焼いて売り出す子供達も現れました。
出来上がったものは10ペンスから50ペンス(15−75円程度)の値段がつけられます。
ものを売るだけがお金の稼ぎ方じゃない!?
色々と話し合っていた下の子の班は、最終的に「ものを売るだけがお金の稼ぎ方ではない」という結論に達したようです。
「それじゃあ、どうするの?」
「ママ、きれいなスポンジある?スポンジ投げをするの!」
よく日本の観光地にあるような、穴から顔だけ出すことのできるパネルを班全員で作り、班員がモグラ叩きのようにそこから顔を出す。水を含んだスポンジを投げて、顔に当たったら景品の紙で作ったおもちゃがもらえる──1回スポンジ3つで10ペンス。当たっても外れても大笑いです。
「先生が “まと” の役で顔を出してくれたらすごく盛り上がると思って、交渉したんだけど、うまくいかなかったの」
素晴らしいアイデアですが、それはさすがに先生も断るでしょう。
お菓子を作ることが得意な子供はお菓子を作り、楽器が得意な子供たちは集まって楽器を演奏し──と、「今の自分の得意なこと」を中心に考えながら、「他の人は何を楽しいと思うのか」聞いて回ったりと、初歩的ながらも市場リサーチのようなこともしたようです。
楽しいお祭りを通して、デザイン力・観察力・交渉力を育む
子供にとっては楽しいお祭りの一週間、「エンタープライズウィーク」。親の視点からは、そこにいかに多くの学びのチャンスが仕込まれているのかが、ありありと見て取れます。
ディスカッションを大切な技能だと考えるイギリスの小学校ではおなじみの光景ですが、みんなで話し合って制限時間内に計画を立てたり、自分の身近な場所にどんなニーズがあるのか探したり、どの程度の値段付けが適切なのか考えたり、と多岐にわたる技能が使われています。