着床前診断とは?出生前診断との違いやメリット・デメリットについて解説
妊娠が判明した後に胎児に重篤な疾患がみつかる場合よりも、着床前の胚の段階で疾患につながる異常の有無を確認できるほうが、肉体的・精神的な負担を抑えられることもメリットと考えられます。また、遺伝性疾患や染色体の構造異常を持つ方が、子どもを得られるかもしれないという点において、可能性を広げる治療法ともいえます。
デメリット
着床前診断で懸念されているのは、胚に針を刺す検査手法が胚に必要のないダメージを与えてしまう可能性についてです。生検をした胚で正常に妊娠・出産にいたったとしても、長期的に子どもにどのような影響があるかはわかっていません。
検査により移植に適さないと判断された胚であっても、実際には子どもを得る可能性が否定できないことも、着床前診断に慎重になる理由です。妊娠・出産につながる胚が移植されないケースが出てくると、検査をすることでかえって子どもを得るチャンスが低下することになります。
こうした背景により、着床前検査を受けるにあたっては公益財団法人日本産科婦人科学会による審査が必要です。審査には半年から一年ほどの時間がかかり、費用が高額であることも、着床前診断のデメリットといえるでしょう。
着床前診断の費用は?
着床前診断は保険適用されないため、すべて自費診療になります。着床前診断にかかる費用の相場は、胚盤胞1個あたり11万円です。複数個を検査する場合は、その個数分の費用がかかります。
通常の体外受精では、年齢などにより保険適用となる場合がありますが、着床前診断を行う際の体外受精や移植費用は保険適用外となり、全額自己負担です。体外受精、凍結・融解、胚移植などの費用を含めて、トータルで50~100万円ほどが相場だといわれています。
将来的には保険適用される?
不妊治療においては、PICSI法やタイムプラス撮像法などの先進医療と、体外受精などの保険が適用される治療との併用が一部施設で行われています。着床前診断は先進医療とする条件を満たしていないため保険診療との併用が認められていませんでしたが、2023年3月に大阪大学で先進医療としての申請が了承されました。
着床前診断を先進医療とすることについては、厚生労働省で安全性や有効性の検討が進められており、ほかの大学からも同様の申請が上がっています。
保険が適用される治療との併用が認められれば経済的な負担が抑えられるため、今後の動きに注目が集まっています。