トイレが正社員と別!? “非正規社員差別”の体験談と差別を撲滅する方法
派遣社員が社員食堂を使えない事例や正社員とパートでは使うトイレが違う事例などを紹介しながら、戦前の『女工哀史』にみられるような奴隷労働が実は今“ブラック企業”や“ブラックバイト”といった形で復活しつつある ことも指摘しています。
●非正規社員差別撲滅には「当たり前のこと」が守られる世の中に戻す必要がある
さて、今回のテーマである「非正規社員に対する差別を撲滅する方法」ですが、森岡先生は『雇用身分社会』の中で、「ディセント・ワーク」という概念を提唱して、雇用身分による差別の撲滅を訴えています。
「ディセント・ワーク(decent work)とは、「まともな雇用」「良識ある雇用」という意味であり、すなわちそれが「まともな世の中」「良識ある社会」にわが国を戻すうえで必要不可欠だと述べているのです。
森岡先生の論を筆者なりに咀嚼して申し上げるならば、具体的にはまず1,000円にすら届かないような非正規社員の人たちの時給を“まともな”時給に法律で改めることでしょう。
非正規社員の人たちが1か月間フルで働いても10万円台前半の月収にしかならないような現状は、その事実そのものがすでに「政策による非正規社員差別」です。
これでは「まともな生活」ができるわけがありませんし、正社員の人たちが非正規の人たちを自然と見下してしまう大きな原因の一つになってしまっているように思われます。
勤務先のコンプライアンス室に訴えて設備を正社員と同じように利用できるようになった二人の実例もご紹介しましたが、20代・30代の若い非正規社員の彼らが少しでも“まともな働き方”を手に入れることができるように、筆者のようなディセント・ワークを享受してきた世代の者が彼らの勇気を後押ししてあげる ことも必要かと思います。
「おかしいものはおかしい」と声を上げる彼ら自身の勇気も大切です。
でも一人一人の小さな勇気ある行動をより大きなうねりにして制度を改良するところまで行かないと、非正規社員への差別を撲滅することまでは難しいような気がします。
【参考文献】
・『雇用身分社会』森岡孝二・著
●ライター/鈴木かつよし(エッセイスト)
●モデル/香南