養育費はもらえナイ? 元夫の悪口が偶然広まった場合は名誉毀損になるか
などと言いふらした場合や、ネットに書き込んだりした場合は、名誉毀損が成立する可能性があります。
●今回は名誉棄損になる?
名誉毀損が成立するためには、“実際に多数の人に広まってしまった”という結果は必要ないですが、“ある程度広範囲に知れ渡る可能性が生じた”ということが必要です。
たとえば、4~5人の集まりであっても、「絶対内緒にしてね」と伝えていれば、基本的には名誉毀損には当たらないでしょう。
さらに、名誉毀損が成立するためには、“聞いた相手がその人が誰なのか特定できる ”ことが必要です。
「私の元夫がね……」と言われても、どこの誰だかわからないのであれば、その人の社会的評価が下がることがないからです。
今回は、話している相手にまさか夫の知り合いがいるとは気づけなかったでしょうから、基本的には相談者の方に故意・過失がないと判断され、名誉毀損となる可能性は低いでしょう。
今回は実際に悪口が広まってしまっていますが、これは偶然元夫の大学の先輩に知れてしまったからであって、通常は井戸端会議的なところで、「元夫」の表現で事実を述べているのであれば、名誉棄損に該当する可能性は低いと言えるでしょう。
そもそも、名誉毀損に当たるか否かの判断においては、諸事情が考慮されます。
そのため、「お酒を飲んで暴力をふるう、家にお金も入れず浮気相手の部屋に入り浸る、といったことを、数人に相談することさえ許されない」と裁判官が判断するとは到底思えず、やはり、名誉毀損になる可能性は極めて低いと思われます。
過去に、主婦同士の井戸端会議での悪口で、名誉棄損に基づく慰謝料を命じた判決がありました。
しかしこれはそれ以外にも、「窃盗癖がある」といった内容の手紙を会社に送りつけたり、自宅にも悪質な手紙を送りつけたり、といったさまざまな行為をしていた背景事情があります。
この判決は極めて悪質な主婦たちによるいじめの事例なので、今回のようなケースには当てはまらないでしょう。
●養育費を払わないなんてあり?
仮に、100歩譲って名誉棄損が成立したという場合であっても、養育費を支払うべきか否かとは別の話 です。
名誉毀損が成立した場合、これに基づく慰謝料を支払う必要が出てきますが、極めて低額に落ち着くと思います。その慰謝料を支払うことと、養育費の話は別なので、慰謝料の支払云々にかかわらず、別途、養育費は“子どもを育てるために必要な費用”として、父親に当然の義務として支払うよう請求することができます。