母性とのバランスが大事!? “父性”の必要性と子育てへの生かし方
●現代は母性が強く自立できない子が多いというが、子どもにとって一番大切なのは母性
この母性と父性のバランスについて、現代は母性の方が強く父性が消失しつつあることが非常に問題だと提起をしたのが、冒頭でも紹介した樺沢紫苑先生です。
著書である『父親はどこへ消えたかー映画で語る現代心理分析ー』の中で樺沢先生が一貫して言いたかったことは、『現代は、子どもにとって「乗り越えるべき存在」である父親というものが最初から存在していない時代である』ということです。
そしてそのことが“いじめ”や“引きこもり”といった諸問題と深く関係していると、樺沢先生はおっしゃりたいようです。
一方、同じ精神科医でも児童精神医学が専門の臨床医である佐々木正美先生はまったく逆の見方をしています。
佐々木先生の見方では、現代は「そんなことをしてはいけません」というふうに子どもに厳しく制限をする“父性の強い家庭”が目立つというのです。
そして、子どもが健全に育つためには、「親はどんなことがあっても無条件に自分のことを愛し、守ってくれる」という絶対的な信頼感・安心感こそが大切なのであり、この“無償の愛”を与えることができるのは母性以外にはない 、という見解です。
そこから、『まずは母性で無条件に子どもを愛し、厳しさやルールを教えるのはそのあと』という、佐々木先生独自の「母性愛・父性愛を与える順番の定理」が導き出されたというわけです。
●順番は「母性の愛」から「父性の愛」の順番で
さて、樺沢医師や佐々木医師の見解について考えたうえでわが身を振り返ってみますと、筆者は母親も父親も「父性」が強い家庭で育ったため、少年時代は攻撃性の強い子どもでした。
負けん気が必要以上に強かったため人と軋轢を生むことも多く、今だったら「空気が読めないやつ」として“いじめ”の対象となり登校できなくなっていたのではないでしょうか。
ただ筆者の両親は二人とも、“自分の子どもは何であれかわいい。かわいくてしかたない”といった感じの「母性」も持ち合わせた人間であったため、まずそこから出発して育てられた自分は道を大きくは踏み外さないですんだのではないかという気がするのです。たしかに樺沢医師が言う通りで、現代は昔のように『巨人の星』の“星一徹”のような父親はまず存在しません。
それが子どもたちの忍耐の足りなさや“引きこもり”につながっているというなら、そういった面はなくはないのかもしれません。