ブンデスリーガ、マインツが「技術レベルが高くても内面が未熟な選手」は獲得しないワケ
前回、前々回のコラムで、サッカー大国ドイツ・ブンデスリーガクラブのマインツでは育成アカデミーでの取り組みとして、プレー面だけではなく、子どもたちの学校生活、そして彼らの人間性の成長とどのように向き合い、サポートすべきかが丁寧に考えられているというお話をしました。
ではこうした人間性へのアプローチはどんな子どもに対してもうまくいくものなのでしょうか。マインツ育成アカデミーで教育担当スタッフチーフを務めるヨナス・シュースターさんに伺いました
(取材・文・写真:中野吉之伴)
マインツのクラブハウスにて、お話を聞かせてくれたヨナス・シュースターさん
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■家庭環境が選手の成長に大きな影響を及ぼす
シュースター「私がマインツでこの仕事を始めて5年、その前の育成指導者時代を含めると11年このクラブにいることになります。いろんな子どもたちを見てきましたが、本当に家庭環境というのが彼らの歩みに非常に大きな影響を及ぼしていると思います。
この年齢までにそれぞれがご家庭で親のもとでどのような教育を受けてきて、どのような習慣が当たり前になっているのかがとても重要になります。ただ私たちが重要視する価値観とは全く違う環境で育ってきた子どもたちがいます。
これはあくまでも一例ですが、ベルリンからとある外国籍選手の獲得を考えていた際、全くうまくいかなかったんです。彼がどのような影響下で育ったかというと、『女性は男性よりも価値が低い』という教えのもとだったんですね。
大人の男性から何かを言われたらリスペクトを持って聞こうとしますが、大人の女性から言われたら何も聞こうとはしない。学校でもです。女性の先生からは何を言われても何もしない。でも同じ事を男性の先生に言われたらするんです。彼はそのようにしつけられてきた。でもそれを私たちは受け入れることはできない。
何度も何度も彼と話をしました。
『男性と女性とを比較してはいけない。
男性でも女性でも同じようにリスペクトの心を持たなければならない』
1、2週間は効果がありました。でもすぐにまた元に戻ってしまったんです。しみついている習慣を根本から変えるのはあまりにも大きな労力が必要になります。それこそそのための専門家の助けが必要なほどに。