2021年12月23日 18:00
バイリンガリズムの5つのメリットとはエディンバラ大学准教授 Thomas H Bak博士のインタビュー記事公開
みなさんは、脳がどのように複数の言語を操るのか疑問に思ったことはありますか?バイリンガルになることのメリットがあるとしたら、それは何でしょうか?このような疑問は、日本に住んでいる私たちとどのように関係しているでしょうか?
ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(※以下、IBS)では、エディンバラ大学(スコットランド)心理学・言語科学科の准教授であり、近年は、マルチリンガリズムと脳に焦点を当てた研究を進めているThomas H Bak博士にインタビューを行い、公式サイトにて前編・中編・後編にわたって記事を公開しました。
●日本人が英語を話すのを苦手に感じる理由は、日本語の使い方の特徴、日本語や日本人らしさを失うのではないかという不安、「モノリンガルが普通」と考える社会にある。
●人間社会のほとんどは、複数の言語を使うマルチリンガル社会である。脳は、さまざまな領域が結びついて機能する「網(ネット)」のようなものであるため、複数の言語を処理することができる。
●バイリンガリズムにメリットがある分野は、主に「メタ言語意識」、「社会的認知」、「実行機能」、「意思決定」、「加齢と健康」である。
●早期から学習することのメリットは、脳の働きが自動化されることである。
Thomas Bak博士
■ 日本人は英語が苦手?モノリンガル社会の影響
Bak博士は医学を専門とし、神経学、心理療法、精神医学の分野における臨床現場でも活躍しています。現在の関心は、生涯にわたってバイリンガリズム/マルチリンガリズムが脳の認知機能に与える影響、マルチリンガリズムと脳疾患(認知症または失語症)との関連性、生涯における言語と記憶、そして複数の異なる言語や文化がどのように認知に作用するか、などです。
Bak博士は、それぞれ異なる言語を話す両親のもとで育ちましたが、当時は「早くから二つの言語を学ぶのは危ない」という見解が一般的だったため、家庭では一つの言語のみが使われていたと言います。国際交流プログラムがきっかけで日本文化や日本語にも興味を持ったBak博士ですが、「日本人が英語に苦手意識を持つ理由の根底には、二つ以上の言語を使いこなせるようになった人々を社会がどのように見ているかということもあります。別の言語を流暢に話せるようになることによって何かを失うのではないか、という不安が無意識にあるのかもしれません。」