加害者家族をめぐる人々の悪意の暴走と再生への希望…衝撃の社会派コミック
認知の歪みではなく、認知が曲がる感じを、淡々と描いていきたいという思いは昔からあります」
前半は重苦しい場面が続くが、驚きの展開が待っている。何より、いじめられっ子の海藤亮介と転校生・大島真琴とのボーイ・ミーツ・ガールは甘酸っぱく、一筋の光となる。
映画監督志望だったというウチヤマさんのマンガは、実際、一本のショートフィルムを観るようだ。
「北野(武)映画や、コマ割りは小津安二郎のカメラワークに影響されているかもしれません。本書も、着想のきっかけのひとつが岩井俊二監督の『リリイ・シュシュのすべて』なんですが、自分でも、初めに考えたこととはどうも違ってしまった気がするなと思うんですけれど(笑)」
ウチヤマさんは、連載でもすべて最初に完成させてしまい、それを分割で提出するやり方なのだそう。
「ハマってしまったパズルは動かせない」と言うが、それくらい完成度が高いのだともいえる。サスペンスフルなメインストーリーに加え、セクハラ、ネグレクト、DVなど、簡潔に描かれたコマで裏側にある世界まで連想させる凄み。他の作品もぜひ手に取ってみて。
『もろびとこぞりて』クリスマス・イブに起きた新宿駅無差別殺傷事件。