地方の町に戻ってきて再会した小説家志望の三ツ郎と、彼の初恋の相手・真帆。町の映画館や喫茶店、小学校への通学路…ふたりの不思議な距離感を見守りたくなる大横山飴さんの『花の在りか』。新鋭による、青春グラフィティ。静謐で詩情あふれる映画を思わせる。「僕にも好きだった人や身近に感じていた塾の先生がいて、もう会うこともないけれど、もっと話したかったなとか、仲良くしたかったなと思い浮かべる人たちがいます。特定のモデルがいるわけではないのですが、思い出深い人たちといま再会したら何をしゃべるだろうかとか、どんな悩みを持っているのかな、という妄想をとっかかりに、登場人物や物語を考えていきました」彼らのセリフは切り詰められ、映画のカメラワークを思わせる洗練されたコマが静かに進行する。「マンガだと心の内の言葉を語らせることもできるのですが、彼らの内心を確定できなかった。わからないならいっそのこと何も語らせない方がいいと思ったんです。言葉にならない感情を描く方法として、言葉は使わず、表情で語るのはむしろよかったかなと。笑いや怒りなど、わかりやすい顔もとらせなかった気がします。お腹が痛いときに我慢して無表情になってしまうのと同じで、日々何かに耐えるような気持ちでいる人も多いのではないかと思います。自分のパニック障害もあって、症状を抑えるために感情の起伏を抑えたまま描いていた影響もあるかも」彼ら自身は、ままならなさを抱えながらも、小さな手応えをよすがとして、ほんの少し顔を上げる。そうしたささやかな勇気がこの物語の美点であり、エールになっている。「自分は弱い人間だと常に思っているのですが、そんな自分から見る他人は、とても強く見えることがあります。でも、足踏みしてもちょっとずつ自分が進みたい方向に進んでいければいいかなと思うし、そういう人たちに寄り添った話が少しでも描けていれば嬉しいです。ドラマの展開で読ませるわけでもなく、いわゆるロングショットで描いている場面も多く、淡々とした人物の表情も強い共感や感動には結びつかず、人と連帯することを重んじた作品ではありません。それでも、この本と出合い、自分なりに共感してくれる読者はいる気がしています」ちなみに、上下巻を通して読むと、デジャヴというか記憶違いというか、ある種のお遊びが仕掛けられていることに気づくはずだ。「間違い探しみたいなことって、面倒くさいけれど楽しい。どっちが本当なのかわからないのも、間違い探しならではのサスペンス感があるので、楽しんでもらえたら嬉しいです」大横山飴『花の在りか』上・下三ツ郎、真帆、ふたりの知り合いの“先生”が織りなす再生物語。次回作にも期待。「本作とは雰囲気もタッチも変えていくつもり。失恋のお話です」。KADOKAWA各902円©大横山飴/KADOKAWAおおよこ・やまあめマンガ家、イラストレーター。1998年、群馬県生まれ。SNSにイラストの投稿を始め、2015年にマンガ家として商業デビュー。※『anan』2024年7月24日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天沙子(by anan編集部)
2024年07月23日地面師という存在をご存じだろうか。土地の所有者になりすまし、金を騙し取る詐欺師なのだが、菅野カランさんは演劇が好きで、本作『オッドスピン』のアイデアもその流れで思いついた。クールでかわいくて、大胆不敵!「地面師」になった双子が暗躍。「演じることや嘘をつくことについて考えるのが好きで、詐欺師にも興味を持っていました。いろんな詐欺があるなかで地面師にしたのは、お金は隠したり、移動させたりできるけど土地はそうじゃない。なのに人間が“持つ”という感覚が不思議だったから。2017年に五反田で大きな詐欺事件が起きて、結構ニュースになったのですが、そのスケールに衝撃を受けたのもありますね」地面師として暗躍するのが、「英(えい)」と「蛍(けい)」という双子。ふたりの母は土地を騙し取られた過去を持つのだが「なんとなく面白そう」という理由で、母を騙した人物の後を継ぐ。「善い行いを完遂することって、モチベーションのあり方としては単純といえますが、詐欺のような悪いことは、最初から最後までどうやってモチベーションを保ち続けるのだろうと思って。モチベーションを保つエンジン担当と、手を動かすハンドル担当に分業することによって、ひとりだとくじけてしまいそうなこともできる気がして、双子がピタッとハマったんです。同じ場面の心境を2種類の表情などで見せられるので、描くのが楽しいですね」1巻では廃墟同然のビルを売却する側になりすまし、2巻では建設中のショッピングモールの一角に残る“母の土地”の謎に迫る。双子にそそのかされてチームを組む歯科衛生士なども含め、ゲーム感覚で詐欺を働いていく姿が印象的だ。「別の欲望を持った人が、たまたま噛み合って行動を起こすっていう形を描きたいんです。私たちって被害者の気持ちには寄り添えるけど、加害者のことは自分と切り離して考えがちですよね。そうではなく、加害者を地続きの存在として捉えることが大事だと思っていて。意外と軽い気持ちだったり、金額の大きさは重要視していないんじゃないかな、などと想像しながら描いています」マンガの表現として一般的な、登場人物の心理を描写するモノローグや、状況説明をするナレーションがほぼ出てこないのも、演劇の影響を受けた菅野さんの作風。読者もセリフや表情から真意を探り、展開を予測するスリリングさを味わえる。「セリフが好きなので、間違っていることを言っていたり、嘘をついていたり、言いたいことをためらっているようなときも、自然なセリフだけで表現したくて。難しいけど、つい頑張ってしまうところですね」大胆不敵な双子に振り回され、騙される快感がクセになる。『オッドスピン』2双子だけど性格は少し異なる「英」と「蛍」。2巻では、気になる母親など新キャラも登場。“怪しい土地”を巡って双子のルーツも垣間見え、新たなドラマが展開。講談社759円©菅野カラン/講談社かんの・からんマンガ家。2022年、第80回ちばてつや賞一般部門佳作受賞作「かけ足が波に乗りたるかもしれぬ」が話題に。本作で連載デビュー。※『anan』2024年7月17日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年07月17日本誌の人気連載「僕の姉ちゃん」の単行本最新刊が待望の発売!その名も『そう来る? 僕の姉ちゃん』。ちょっとユニークなタイトルの新作について、著者の益田ミリさんにお話を聞きました。笑いながら自己肯定感が上がる“読むサプリ”!「おかげさまでシリーズも6作目となりました。この漫画を描いているとき、よく“そう来る?”とわたし自身が思ってるんです。たとえば、3コマが4連作になっている『会話』という漫画は、主人公・ちはるのひとり語りです。会話【1】『「この人、わたしと話しててなんの得もしてないだろうな」って感じながらしゃべってることあるよね』という独白から始まり、会話【2】『「この人、わたしには本音は言わないって決めてんだろうな」って感じながらしゃべってることあるよね』とつづきます。残る【3】、【4】はこの時点では何も浮かんでいないので、さぁ、どうなる?とペンを進めるというか。最後の会話【4】で『「この人、わたしの名前思い出せないんだろうな、わたしもだけど」って時あるよね』というセリフをちはるが言った時は“そう来る?”と心の中で笑ってしまいました」掲載された作品は2021年から約3年にわたってananで連載された作品の中からセレクトされた全148エピソード。「長いコロナ禍に描いていたということもあり、“日常”の尊さについての漫画はいつもより多いかもしれません。仕事帰り、花屋の前を通ったちはるが『この、いつもの週末が当たり前と思っているこの日々が輝いて見えたのでした』と花を買って帰ったり、希望ってなにと弟に聞かれ、『明日もまたここでこうしてアンタと他愛ない会話ができるってコトを当たり前に思える』そういうものも希望だとちはるは答えています」そんなちはるの言葉は、私たちにも日常にある幸せに気づかせてくれる。こんなふうにハッとさせられる“ちはる語録”は他にもたくさん。「今回も、ちはるの独特のセリフは健在です。『わたしのことを愛さないと決めて生まれてくる男はいない』『生まれただけで貢献だらけさ』。彼女のこういうセリフは描いていてもスカッとします。自己肯定感という言葉がありますが、ちはるは無意識にそれが高い(笑)。『やりたいことってあんの?』と聞かれたときも、彼女は『なにかはある』と即答。それがなにかはわからないけれど『絶対なにかはある人ってそういうもんでしょ』と飄々としています。この気負いのなさこそが、悩み多き弟には心地いいんだと思うんです」読み手の自己肯定感も上げてくれそうな今回の『僕の姉ちゃん』。シリーズ通してのもう一つの魅力は、ちはるの恋愛エピソード。大いなる妄想と豊富な経験(?)からくる面白トークは今作も健在だが、益田さんがピックアップしてくれたのはちょっと甘酸っぱいエピソード。「恋のエピソードで特に好きなのは『スタバにて』です。ちはるがスタバで昔の恋を思い出すという漫画なのですが、『好きで好きで大好きで会いたくて会いたくて走りまわっていたあの恋も』色あせてしまったけれど、朝帰りにタクシーをつかまえるまで手をつないでいたシーンは忘れないでいる。恋のかけらって小さくても心の中でいつまでも発光しつづけている。そういうものだと思います」人生のこと、仕事のこと、恋愛のこと…。今回もさまざまなテーマで笑いと気付きを与えてくれる『僕の姉ちゃん』。シリーズ通じてほとんどのエピソードが姉弟ふたり暮らしのリビングでの会話でなりたっているのも大きな特徴。多くの会話を描いてきた益田さん、ご自身も会話の中でなにかに気づいたり、確認したりすることはあるのだろうか?「『僕の姉ちゃん』は姉と弟のテンポある会話劇ですが、作者のわたしは話し下手です。話している途中で“この話、あんまりおもしろくないかも…”と後悔が始まることはしょっちゅうで、基本、聞き役が多いです。そういうところではちはるとわたしは似ていないかもしれません。もちろん似た考え方もあります。弟に仕事の後輩の育て方について質問された時、育てるではなく『“一緒に働いてる人”それだけのことだわな』と答えています。わたしもうんと若い人たちと仕事をすることが増えましたが、年齢に関係なく一緒に働いている人という気持ちでいます」毎回、単行本のための描き下ろし作品がある本シリーズ、今回、益田さんが単行本オリジナルで描いたテーマは…。「描き下ろしでは姉と弟が『未来』について語っています。未来が見られるなら『10年後』と言う弟と、『100年後』と答える姉。わたしも100年後が見たいです。“それもうよくない?”と、今、この日常で感じていることがどれくらい改善されているのか、ちはると同じく確認したいです」「もうよくない?」の対象はひとそれぞれではあるけれど、それらが改善されることで、もっと風通しのよい暮らしができるようになっているのかも?未来の可能性を語るエピソードは、今作全体にただよう希望を象徴しているようにも思える。笑えて、共感して、ホッとして…。読んだあとにちょっと元気になれる『そう来る? 僕の姉ちゃん』。夏バテしがちな日々の読書タイムにぜひ。「会話【1】」「会話【4】」。この間に【2】、【3】あり。日常で感じがちな会話のモヤりを4連発で活写。ちなみに順平のセリフは4編通じて「ある」のみ(笑)。「スタバにて」より。ふとした瞬間に現れる美しい恋の記憶を描いた一編。「思い出しても懐かしくもないらしい」の一コマがちはるらしい(笑)。益田ミリ『そう来る? 僕の姉ちゃん』しっかり者の姉・ちはると、おっとり素直な弟・順平が繰り広げる会話漫画。恋に仕事に人生に、自分軸を持って語るちはるの言葉は痛快かつ共感度たっぷり。最新刊の今作は癒し度もアップ!小社刊1430円ますだ・みりイラストレーター。著書に『スナック キズツキ』(小社刊)ほか多数。『ツユクサナツコの一生』(新潮社)で第28回手塚治虫文化賞短編賞受賞。※『anan』2024年7月17日号より。写真・中島慶子(by anan編集部)
2024年07月16日仲間と本気で遊ぶ姿や、決して特別なことをしているわけではないものの、人生を謳歌する姿が多くの共感を呼んだコミックエッセイ『裸一貫! つづ井さん』。最終巻のラストで上京することを告白して読者を驚かせたが、新シリーズ『とびだせ! つづ井さん』では気になる東京ライフを描いている。気ままさと心細さとワクワクと、東京ひとり暮らし編、開幕!「日常のささやかなことを描くのは相変わらずなんですけど、生活がガラッと変わったので、新しいことへの挑戦だったり、ひとり暮らしを始めてからの気づきみたいなことが、自然とテーマになっている感じです。『とびだせ!』っていうタイトルにも引っ張ってもらっていますね」つづ井さんが「絵日記」と呼ぶその内容は、すべて事実に即している。だからマンガのためにネタを探すわけではなく、面白いことが起きたら描くというスタイル。たとえば、引っ越したばかりでおたまがなくて困ったり、あまりにも人と会わないため、表情筋を鍛えるトレーニングを始めたり、散歩中に出会う犬と仲良くなりたくてうずうずしたり…。「自分で、ふふって笑っちゃったことがうまく描けてたらいいなと思っています。反対に描きながら、まだエンタメに昇華できていないことに気づいて、寝かせてみることもあります。『裸一貫!』のときは、世論なんて吹っ飛ばせみたいな、前向きでハッピーなイメージを結構意識していました。今回はもう少しフラットにというか、底抜けに明るい話じゃなくても心が動いたことを描き残していきたいと思っています」一方、「前世からの友」と呼ぶ5人が集合する章に歓喜するファンも多いだろう。ノリの良さは健在で、オリジナリティ溢れるイベントが今作でも目白押し。友と無邪気にはしゃぐ姿は、変わらぬ安堵感を与えてくれる。大人になってからの上京、そしてひとり暮らしは気ままさと心細さが入り交じっていて、やはりちょっとした出来事で成長を感じるシーンには、グッとくるものがある。「いい意味で人の目を気にしなくなって、思いつきでいろんなことをやってみるたびに、自分の価値観がちょっとずつ広がっている気がします。東京に対しては、いまだ少しの畏怖と大きな憧れがあるのですが、このこじれた感情がなくなっちゃうのももったいないなと思っていて、新鮮な気持ちを楽しみ続けたいですね」シリーズのテレビドラマ化も決定して、「楽しみしかない」と言うつづ井さん。東京暮らしはこれからも、いろんなことが起こりそうだ。つづ井『とびだせ! つづ井さん』1「新しいことに挑戦したい」とアラサーつづ井さんが思い立った、東京でのひとり暮らし。断捨離から引っ越し、新生活、友との再会を描く待望の新シリーズ。文藝春秋1210円©つづ井/文藝春秋つづいマンガ家。著書に『腐女子のつづ井さん』『裸一貫! つづ井さん』。老犬の介護とお別れの日までをあたたかく綴った『老犬とつづ井』も発売中。※『anan』2024年6月26日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年06月25日夫の転勤を機に、娘を新しい幼稚園に通わせ始めた主人公・透子。転園から一週間、人見知りの娘がなかなか園に馴染めずにいると、とあるママ友グループから声をかけられます。そのグループのリーダーは、何もかも自分の言いなりにならないと気が済まない、度を超えた仕切り屋ママで…。■転園して馴染めない娘に救世主現る?夫の転勤で転園した娘は、なかなか園に馴染めずにいました。そんなある日、透子は真弓に声を掛けられます。「私たちの子のグループに入ればいい」と、真弓に言われて心強く思う透子。LINEも交換して、仲良くなりますが…。■ママ友グループのルールに振り回され…朝の登園で遅刻しそうになる透子と娘。やっと送り出した透子に真弓たちグループが話しかけます。違和感を感じた透子は帰ろうとしますが、井戸端会議に延々付き合わされぐったり。明日からは真弓より早く登園して、真弓より遅く帰るという、真弓のルールに従ってほしいと言われて…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■気になる読者の反応は?まずは、ママ友グループのリーダー真弓に対する読者の意見です。ママ友を作ることに対しても、経験を交えて意見する読者もいました。・グループね~。入ればいいのよってね~。無理して入るものでもないけどね~。気が合うかどうかもわからんグループこそ居心地悪いものよ。・でたでた!私、この園の上位のヒエラルキーよ!って人。私も悩んだ事あったけど今だから言えるのはママ友は友達ではないからね。・幼稚園を何件か見学する時、まだ入園決めてもないのにグループLINE作らされた園があった。そこは嫌だから入園させるのはやめました。・子どもが友達になりたいって思う人が出来てからでいいよ、ママ友は。また、ママ友たちのグループにルールがあり、それに従えと言われて落ち込む透子に対しての意見です。・全くもって無理な感じなんだから、抜けたら?今なら「声かけてもらって嬉しいけど、時間も私は合わせられないから」って言えるんじゃない?子どもだって、まだ正直そこまで馴染んでないでしょうし、またボッチになっても先生がフォローしてくれるさ。・グループの方針に合わないみたいなので抜けますって言って抜けちゃうかな~。ボス入れてもたったの3人でしょ?卒園まで無視されたところで大した問題じゃない。・そっちから声かけてきた上に店選べって。暇じゃないって言ったら角が立つから…ちょっと段取り悪くて家事に時間がかかるとか、夫を悪者にする…とか適当に流してフェードアウト!もちろん夫は味方でしょ。最後は、ママ友グループの在り方についての批判です。・真弓も面倒だけど、周りの人たちもよくないよ。真弓、真弓と持ち上げるからつけあがるんじゃん。一番いいのは一人でいること!それが楽!・狭い世界でしか威張れないって可哀想な人だね。ママ友なんて幼稚園が終わったら会う頻度減るのに、たった3年間しか偽物の王様になれてなにが楽しいんだろう。幼稚園での「ママ友グループのトラブル」について読者の経験談が多く集まりました。幼稚園は子どもが通うところですが、ママ友との交流も避けて通れず、一筋縄ではいかない問題のようです。この後、ママ友グループの謎ルールがどんどん気が重くなる透子。そういった態度がグループのリーダー真弓の逆鱗に…?▼漫画「ボスママから逃げたい」
2024年06月22日五十嵐大介さんによる、コミック『かまくらBAKE猫倶楽部』をご紹介します。不思議が不思議を呼ぶ……古都鎌倉で始まった猫の百物語。「今度のマンガは身近な題材で描きたいと思っていました。その点、鎌倉には10年以上住んでいますし、猫は描くのも楽しいので。何年か前に飼っていた猫が亡くなったのですが、自分の中でいろいろ整理するにはいいかな、という思いもありました」五十嵐大介さんの最新作はタイトルにもある通り、「鎌倉」と「猫」がモチーフの物語。そして「BAKE」が意味するのは……。「怪異というほどでもないですけど、ちょっと不思議なことも私にとっては意外と身近な感覚で、それも含めて鎌倉らしさなのかもしれません」鎌倉の出版社に勤める有紗は猫雑貨店「かまくら猫倶楽部」で、いつもリモートワークをしている。この店には、ガクトとマヤという2人の従業員がいて、有紗は彼らのことを猫なのではないかと疑っている。そして、いなくなった猫と会えると噂の「化猫倶楽部」と勘違いした人々が、たびたび店を訪れる。そこは実在するかどうかも怪しいのだが、「かまくら猫倶楽部」で猫にまつわる不思議な話をすると辿り着けるらしい、というガクトの口車に乗せられ、人々はさまざまな話を語り出す。「例えば鎌倉って夜にフクロウがよく鳴いているのですが、フクロウの鳴き声を認識していないと鳴いていることにも気づけないんですよね。そうやって多くの人は気づかないけど、実はいろんなことが起きているのだろうし、同じ現象を不思議な出来事と捉える人もいれば、全然別の捉え方をする人もいるかもしれない。そんな気持ちで描いています」人間は得体の知れないものへの恐怖心が本能的にあるからこそ、化け猫のような存在を作り出すことで、腹落ちさせたかったのではないか。語られるエピソードからは、人々が不思議な現象とどう付き合ってきて、それが現代にどう息づいているのかが浮かび上がってくる。そして古都鎌倉は、そんな不思議を語るにはぴったりな場所のように思えてくる。「私は得体の知れない状態が好きなので、できるだけ形を与えず、わからないまま描くのが理想だったりします。鎌倉は狭い範囲にいろんなものが詰め込まれている、ごった煮のような場所。全然関係のなさそうなものが隣に存在している面白さと豊かさがあるので、そういう世界を描ければいいなと思っています」ガクトとマヤは、本当に猫なのか。そして有紗はなぜここにいるのか。怖さと心地よさが溶け合う、不思議の世界に身を委ねてみよう。『かまくらBAKE猫倶楽部』1鎌倉にあるらしい「化猫倶楽部」の噂を聞きつけ、いなくなった猫に会いたい人が迷い込む「かまくら猫倶楽部」。不思議が連鎖していく猫にまつわる怪異譚。講談社836円©五十嵐大介/講談社いがらし・だいすけマンガ家。1993年デビュー。著書に『魔女』『リトル・フォレスト』『ディザインズ』など多数。本作は『BE・LOVE』で連載中。※『anan』2024年6月19日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年06月18日読む人の心に体当たりしてくるような、ビビッドなのに繊細な心理描写に痺れる。『恋とか夢とかてんてんてん』は世良田波波さんの初連載。夢にも異性にも「片思い」状態。等身大のリアリティに心を掴まれる。「恋愛マンガだとか夢を追う人のマンガだとかいうより、カイちゃんという人間の“不格好な人生のマンガ”じゃないかなと思っています」主人公は、29歳のフリーター・カイちゃんこと貝塚道子。挫折の連続で砂を噛むようだった東京での生活の心のオアシスになったのは、〈高円寺くん〉というハンドルネームのイケメン会社員だ。ところが、彼に異動辞令が下り、彼を追って大阪での新生活をスタートさせることに。「自分とあまりにもかけ離れている主人公で描いたりできなくて。物語はフィクションなんですが、何かやりたくて東京に憧れて上京して…みたいなカイちゃんの境遇は、私と近いです。上田正樹さんの『悲しい色やね』という曲が好きで、大阪はああいう哀愁のある恋が似合う街で、最初はそんなイメージで描くつもりだったんですが、暴走気味の恋愛に(笑)。でも、あの曲から感じる情景はこのマンガで大切にしています」SNSで「いいね」をつけてもらうだけで舞い上がってしまうくらい、ピュアな恋心を爆発させるカイちゃん。高円寺くんのささいな反応に一喜一憂する姿は、実は誰もが経験したことのある、忘れがたい感情だろう。自分と重ねて切なくなる人、遠い青春として懐かしむ人…共感するファンが、年齢性別を超え続出中。「リアリティを出す上で意識しているのは、キレイごとで済ませないで、人間のイヤな部分も恥もさらけ出すことですね。このマンガの登場人物はみんなわがままで自己中かもしれないです。でも、世の中のほとんどの人は自分のことだけで精一杯なんじゃないかなって思います。若い人は特に。ある程度わがままに生きてもいいって思う。人間のいいところもダメなところも描いていきたい」大阪のバイト先はコンビニで、ミュージシャンになりたい夢を追う同い年のスタッフ・千林(せんばやし)を前に、カイちゃんの思いは複雑だ。高円寺くん以外との人間模様も気になるところ。「カイちゃんはいま必死に心の拠りどころを探している感じなんですよね。その安息の地は、人を本当に愛することかもしれないし、自分自身を認めてあげることかもしれない。目標だった絵の道と向き合うことかもしれないけれど、違うものかもしれない。最終的には夢にたどり着くかどうかもわからないけれど、カイちゃんの人生を一緒に追いかけてもらえたら嬉しいです。いろいろうまくいかない、だけど生きていく!それが人生だと思うので」『恋とか夢とかてんてんてん』1Webマンガサイト「SHURO」で月イチ更新、好評連載中。カイちゃんと高円寺くんの現在をぜひチェック!大阪の実在するお店や風景も多数登場。小社刊1100円©世良田波波/マガジンハウスせらた・なみなみマンガ家。兵庫県出身。18歳で上京。その後、紆余曲折を経て現在は東京在住。2006年に『アックス』(青林工藝舎)で誌面デビュー。※『anan』2024年6月12号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年06月12日“何がアートの価値を決めるのか”をテーマに描いたマンガ『いつか死ぬなら絵を売ってから』について、作者のぱらりさんにお話を聞きました。「アート×マネー」のスリリングな関係性を見つめる、新感覚コミック。「絵画作品が高額で売れたというニュースが流れると『絵一枚にそこまでの価値があるのかわからない』と否定的な見方をされることがありますよね。私はアートが好きなので、そういう意見はつらいな、と。なので、絵画や芸術のすばらしさを、専門知識も噛み砕いてエンタメ的に面白く描けたら、みんなも興味を持ってくれるかなと思ったんです」かくて生まれたのが、ぱらりさんの本作。普通の暮らしさえ望めない境遇にいた霧生一希(きりゅう・かずき)の唯一の慰めは絵を描くこと。アート界にパイプを持つ資産家の嵐山透(あらしやま・とおる)に才能を見出され、一希は半信半疑ながら、絵を売って人生を変えていくことに目覚めていく。ぱらりさんは“何がアートの価値を決めるのか”という、多くの人が知りたかったテーマに挑む。それまではアートに触れたり学んだりする機会がなかった一希だが、透をはじめ、美大で教鞭を執る雲井(くもい)や売れっ子アーティストの凪森(なぎもり)らから刺激を受けて急成長。その変化にわくわくする。「一希は描かずにはいられないという衝動でやってきた部分があるわけですが、それを市場に乗せていこうとすれば、売れる絵とは何かも考えていかなくてはならないわけです」たとえば、一希の境遇も、“反骨の”とか“逆境から這い上がった”といった美辞麗句にすることはできるが、そう単純な話でもないだろう。「考え方次第で武器にもできるかもしれませんが、一希自身は自分の過去を一方的に消費されたら傷つきますよね。その中でどうしても衝突や葛藤が起きてくるはず。もっともそういう課題は雲井や凪森も同じ。もちろん絵に限らず、マンガや音楽…何でもそうだと思いますが」一希の絵の特徴を、雲井は〈パッと見で連想するのはヴァロットン〉〈「黒」にこだわってるのかな〉等々、瞬時に見抜く。実際、一希ほか誰がどんな絵を描くのかは本作のひとつのキモだ。「アート系のマンガをやるなら、登場人物が描く絵はすごく大事だなと思っていて。なので、そこも来歴を含めて考えていきました。一希なら、アカデミックな美術教育は受けていないけれど、幼少期からずっとドローイングを続けてきた独特の描写力はあるだろうな、といったように」3巻では、一希が意欲を見せていた、アート新施設のオープン記念企画展をめぐる、マーケティング戦略の話が動き出す。それぞれの願いの行方を見守りたい。ぱらり『いつか死ぬなら絵を売ってから』3養護施設育ちの一希がネットカフェ暮らしをしていたときに、アートへの愛情や審美眼を持つ透と出会う。ボーイ・ミーツ・ボーイの物語でもある。秋田書店748円©ぱらり(秋田書店)2023ぱらりマンガ家。京都府出身。2014年ごろからSNSや同人誌などで活動を始め、商業デビュー。他の著作に『ムギとペス~モンスターズダイアリー~』など。※『anan』2024年5月29日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年05月28日韓国のWebtoon(縦スクロールコミック)の出版社であるRIDI(本社:韓国ソウル市、代表:Bae Kisik)は、2024年5月24日(金)にめちゃコミックにて特設ブランド館をリニューアルオープンし、自社の人気コミック6種のラインナップを紹介することを発表しました。めちゃコミック×RIDI ブランド館RIDIは日本の読者に、より多彩な楽しみを提供すべく自社の誇る人気コミックを提供し続けています。特に自社のコミックでも人気の高い『オークの樹の下』、『その品格に反抗を』はめちゃコミックでの連載開始と同時に月間、週間1位を達成するなど着々と人気を得ています。2024年2月、コミック5種と共にめちゃコミックでブランド館をオープンした後、多くの読者様から声援を受け『その品格に反抗を』を追加したブランド館をリニューアルオープンしました。RIDIは、新しいコミックと共に2ヶ月の周期でめちゃコミックにブランド館をオープンする予定です。■リニューアルオープン概要めちゃコミック×RIDI ブランド館日程 : 2024年5月24日(金)作品リスト: 「オークの樹の下」「その品格に反抗を」「正統派悪役令嬢の裏事情」「愛しのあなたは怪物公爵」「ディレッタント」「木隣」 計6作品URL : ■ブランド館の重要作品紹介「その品格に反抗を」ジャンル: 女性漫画URL : ストーリー:戦争終結後、深刻な財政難を抱えていたベルディエ子爵家は一家のお転婆娘こと、次女のアリスが裕福な家に嫁ぐことに一縷の望みをかけていた。生まれつき足が不自由な長女クロエは、妹に付き添って舞踏会に赴くが、そこで再会したのは3年前、最悪な出会いをした公爵デミアン・エルンスト・フォン・ティセ。華やかな外見とは裏腹に、彼の性格は身勝手で傲慢だった。断ち切れない悪縁に辟易するクロエ。そんな中、当のアリスが流浪の民と恋に落ち、城を去ってしまう。一族の危機にクロエはデミアンを訪ね、一世一代の大きな賭けに出る。互いに相容れない品格…。憎しみを募らせながらも、クロエはデミアンへ好意を抱いていることに気づくのだが…。「その品格に反抗を」「オークの樹の下」ジャンル: 女性漫画URL : ストーリー:吃音症で内気な公爵令嬢マクシミリアン・クロイソは父親に強要され、貧しい生まれの下級騎士リフタン・カリプスと政略結婚することになる。しかし初夜の翌朝、目を覚ましたマクシミリアンのそばにリフタンの姿はなかった。それから3年後、生死をかけた討伐戦に勝利し、大陸中に名を馳せる英雄となって帰還したリフタン。共に過ごす中で、マクシミリアンは彼が当初、印象に抱いたような無愛想で冷淡な人物ではないことに気づく。最悪の出会いから始まった二人の関係にやがて変化が訪れる。リフタンの不器用ながらも一途な愛や周囲の人々の支えを糧に、マクシミリアンは劣等感という殻を脱ぎ捨て、徐々に成長していくのだった。「オークの樹の下」「正統派悪役令嬢の裏事情」ジャンル: 女性漫画URL : ストーリー:不幸にも若くして事故死してしまった平凡な大学院生の私。目を覚ますと、生前読んでいた恋愛小説の世界の登場人物に憑依していることに気付いてしまった。それも悲惨な結末を迎える極悪令嬢「セリア」に。このままでは小説の通り、ヒロインを愛するヒーローたちに殺されてしまう運命。今度こそ幸せな人生を全うするためになんとしてでも生き残りたいセリアは、過去の悪行も改めたし、サブヒーロー・カリスと婚約もした。これでヒーロー・ルシェが原作のヒロインとうまくいけばハッピーエンディング…だったはずなのに!?「正統派悪役令嬢の裏事情」■RIDIについてRIDIは韓国を基盤としたグローバルコミックの出版社です。世界最高峰のウェブトゥーン制作能力を誇るインハウスウェブトゥーンスタジオを保有しており、これを通じて膨大なオリジナルストーリーIPを基盤にした良質のウェブトゥーンを全世界の読者に披露しています。代表作には「オークの樹の下」「その品格に反抗を」などがあり、特に女性をターゲットにしたロマンスジャンルでその競争力の高さが認められています。 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2024年05月24日橋本ライドンさんによる、コミック『妹・サブスクリプション』をご紹介します。サブスクなしでは生きられない!姉の歪んだ愛情が行き着く先は?定額料金でさまざまなサービスを受けられる、サブスクリプション。「私が使っている絵を描くソフトもサブスクですが、提供している会社の経営次第で、すべて失われる可能性もあるわけです。いまや生活に欠かせないものなのに、この危うさは怖いなあという思いがありました」橋本ライドンさんのこの物語も、絵柄のかわいさとゆるさに和んでいると、思わぬ怖さが待っていたりする。まずもって、「妹」と「サブスクリプション」という言葉の組み合わせが謎なのだが…。「指摘されて改めて気づいたのですが、私は執着とか愛の話を描くのが好きみたいで。もうひとつ、姉妹という関係にも惹かれていたので、姉が妹を追い求める話にしようと思いました。自分はきょうだいがいないので憧れもあるのですが、“血を分けた限りなく近い他人”という存在に、ロマンを感じてしまうのです」4コマ形式で進んでいく本作。1話目では、会社から帰宅した姉のみゆきを妹の今日子が無邪気に迎えている。その後も仲良し姉妹のやり取りが描かれるのだが、今日子はちょっとした衝撃やケガでピタリと動きが止まってしまい、そのたびにみゆきは落胆する。動かない妹はやがて業者によって回収され、何事もなかったように元気な姿で戻ってくる。どうやら妹はサブスク商品らしいのだが、なぜみゆきがそんなことをしているのか、読者にはなかなか見えてこない不気味さがある。「何かひとつのものを守ろうとして凶暴になる瞬間って、誰しもあると思うのです。みゆきは、会社ではしっかり者で通っていますが、そのギャップを描きたかったんです。彼女は妹と穏やかな暮らしを続けられさえすればいいと思っているけれども、周りがそうさせてくれない。袋小路に追い詰められたらどうなるのか、私自身も見てみたいと思いました」妹をサブスクするSF的設定とサスペンス的な不穏さ、多様な価値観や倫理観が交錯する社会派ドラマの一面など、さまざまな要素を内包しながら、姉妹はどこへ向かうのか。「いつもは一対一の関係性を描くことが多いのですが、今回はいろんな人の目線を意識しました。どの目線にもそれぞれに正義があって、どれも完全に正しいとは言い切れないけど、間違っているわけでもない。みゆきも普通に傷つく子だし、自分が正しいという絶対の感情だけで動いているわけではないのだと、描きながら理解できるようになりました」『妹・サブスクリプション』しっかり者のみゆきは、妹の今日子をひそかにサブスクしている。一体なぜ?本物の今日子は?SNSで話題を呼んだ衝撃作。描き下ろし番外編も収録。講談社1100円©橋本ライドン/講談社※『anan』2024年5月22日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年05月22日幼少期から英才教育を受け、どんな敵も6秒以内に葬り去る、殺しの天才“ファブル”。ボスから「1年間誰も殺してはならない」というミッションを与えられた彼は、佐藤明と名乗り、仕事のパートナーである“妹”の洋子とともに、一般社会で普通の生活を送ることになる。花澤香菜さんが演じるのは、明が働くデザイン会社の同僚、清水岬だ。こんなに面白い世界の住人になれる嬉しさを感じながら演じています。「『ザ・ファブル』のことは知っていましたが、オーディションをきっかけに原作を読みました。3~4巻までいくとキャラクターが掴めるかなと思っていたのですが、結局、先が気になりすぎて最後まで読んじゃいました(笑)。実は、人の生死が描かれる物語はちょっと苦手だったりするのですが、明は絶対に死なないという安心感があったし、とにかくキャラクターが魅力的で。ボケッとしてかわいかったり、心をぎゅっと掴むようなギャグを言ったりするのに、決める時は決めるカッコよさも持ち合わせている。ハマったのは、明という存在がいてこそですね」演じる岬は、正義感が強く優しい人物で、正体を知らないまま、明や洋子と交流を深めていく。「多分、岬ちゃんがいることで、明は“日常生活を送っているな”と思うことができるだろうし、平和の象徴というか、癒しや安心をいろんな人に与えられる存在なのかなと。だからこそ、そのあたりの素朴さみたいなものをちゃんと出していきたいと思いながら演じています」明だけでなく、キャラの濃すぎる登場人物たちも今作の大きな魅力に。「おバカな感じが気持ちのいい、明に憧れるクロちゃん(黒塩)が大好きだし、明が愛するお笑いピン芸人のジャッカル富岡も印象的に登場していて笑わされます。ジャッカルを演じる福島潤さんは、“お芝居が下手くそな芝居”をしているので、声が入ることでより楽しめる部分もあるのではないでしょうか。アフレコ現場も楽しいんですよ!明と洋子の掛け合いのシーンは、宇宙人同士で喋っているみたいな違和感があって、テストの時は思い切り笑ってしまって(笑)。演じる興津(和幸)さんと沢城(みゆき)さんが相当、考えて演じられていることが伝わってきます。こんな面白い世界の住人になれる機会はないので、めちゃくちゃ嬉しいです」『ザ・ファブル』といえば、原作漫画ではセリフの後ろに伸ばし棒がついていることでも知られている。「明役の興津さんは、伸ばし棒を意識しているんだろうなという喋り方をされていて。明というキャラクターの独特の“間”のとり方を表現するためには、必要なものなんだなと思いました。主人公が殺し屋だったり、登場人物たちの姿だけを見ると、一瞬、硬派な内容かな?と思うかもしれませんが、それだけではなくて。本当に笑えるし、私たちのまわりにも、もしかしたら明や洋子みたいな人がいるのかもしれない!と思って、ちょっとワクワクもできる作品なので、ぜひ見てください」大ヒット漫画が待望のTVアニメ化!『ザ・ファブル』とは?伝説的殺し屋“ファブル”の、おかしくも不穏な空気に満ちた休業生活を描き、シリーズ累計発行部数2400万部を突破した大人気漫画。明はもちろん、酒が強くて“ドランク・クイーン”の異名を持つ洋子など、個性豊かな登場人物に注目。毎週土曜24:55~、日本テレビ系にて順次全国放送中。©南勝久・講談社/アニメ「ザ・ファブル」製作委員会はなざわ・かな1989年2月25日生まれ、東京都出身。アニメ『鬼滅の刃』の甘露寺蜜璃役、『劇場版 呪術廻戦 0』の祈本里香役など数多くの作品に出演している。歌手としても活動しており、最新アルバム『追憶と指先』が発売中。※『anan』2024年5月22日号より。写真・小笠原真紀スタイリスト・新田アキヘア&メイク・宇賀理絵インタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年05月20日外資系企業に勤める長女・世利子(よりこ)、テレビ局でプロデューサーとして働く次女・比成子(ひなこ)、理系の大学院でカビの研究をする三女・実地子(みちこ)。三姉妹の共通点は元・現の東大生!磯谷友紀さんの『東大の三姉妹』は高学歴女子あるある物語だ。高学歴は、女性の武器か足枷か。三者三様の幸せ探しストーリー。「1年以上かけて、本当にたくさんの東大卒女子たちに取材したんですね。頭が良くて、周りもよく見えているから、どの方からも面白いエピソードが聞けたんです。なるべく振り分けて使いたいなと思ったのと、もともと三姉妹好きというのがあって、こうなりました」個性派揃いの彼女たちの下には、弟の一理(いちり)がいる。東大に落ちた末っ子は、姉たちに振り回されながらも、否応なく女ごころに敏感になり、要領よくサポートする立場に。その優しさと献身に、心がくすぐられる女性は多いのでは。「自立心の強い姉たちだけだと、いずれケンカ別れしたりもしそうで…。冷静な観察役であり、クッション役も務める一理みたいな存在が欲しかったんですよね」1巻でぐっと掴まれるのは、世利子や比成子の恋愛模様だ。世利子は初恋の相手で高校教師の岸里が忘れられないのに、自分の人生計画通りに事を進めたい気持ちが強すぎるのが難。比成子は、文芸バーで働く元東大生の悠人とつきあっているが、10年越しの関係性が宙ぶらりんすぎて、身動きが取れない。「堅実なエリートに見えて、大胆な行動に出る世利ちゃんみたいなタイプを描くのは初めて。内面的にはいちばん秘めた爆弾を持っていそうで、面白いです。比成ちゃんは、ただでさえ面倒くさそうなテレビの世界にいて、うまくいってもミスしても『東大だから』と当てこすられやすくはあるんですよね。波風避けるために、合わせることを覚えていった人なのかなという気がしました」姉妹だけでなく、彼女らの恋愛相手のキャラクターデザインも魅力的で、物語を盛り上げる。「メガネ男子は好物なので、岸里は、最後に食べるショートケーキのいちごのように大切に取っておいて描きます(笑)。一理や悠人にもファンがいるみたいでうれしいです」気になる伏線が張り巡らされ、ページを繰る手が止まらない。「学歴が高くても低くても、女性たちは何かしらの圧を受ける社会にいますよね。三姉妹を含め、女性たちの努力が報われて幸せになれるといいなと思いながら描いています」実地子や一理、さらに彼女たちの母親が抱える“事情”や“悩み”が見えてくるのは2巻以降だ。続刊が待ち遠しい。『東大の三姉妹』1三姉妹と弟が一軒家で同居中の坂咲家。恋愛、仕事、出産への焦燥感など、女性読者にとっては気になるトピックが次々と出てくる。2巻は今夏くらいに発売予定。小学館770円©磯谷友紀/小学館いそや・ゆきマンガ家。2004年、Kissストーリーマンガ大賞に入賞した作品が、翌年掲載され、デビュー。大ヒットした『ながたんと青と』ほか、著書多数。※『anan』2024年5月8日‐15日合併号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年05月11日2022年にTVアニメ化されたサッカー漫画『ブルーロック』が、シリーズ初の映画化。『劇場版ブルーロック‐EPISODE 凪‐』としてついに公開。キャストの島﨑信長さん、内田雄馬さん、浦 和希さんに演じる立場からの思いを聞いてみました。作品を彩るキャスト3人に本作の魅力をインタビュー。島﨑信長 as 凪 誠士郎凪にとって玲王は特別。言葉では言い尽くせない関係。今回の劇場版では、主人公の凪誠士郎が、“ブルーロック(青い監獄)”の中で“エゴ”に目覚めていく姿がドラマティックに描かれている。彼を演じた島﨑信長さんは、新しい視点からつくり上げられたそのキャラクターを、どのように解釈しているのだろうか。「わかりやすくカッコいいし、あれだけ能力の高いメンバーが集まっている“ブルーロック”の中でもひときわ目立つ天才。そういう表面的な記号だけでも魅力的だし、さらに、物語の中で彼の熱さ、つまり“エゴ”が引き出されていく変化や成長に惹かれましたね」この劇場版では、TVシリーズでは気だるい天才肌として描かれていた凪の心情が、より細かく描写されている。特に、当初はそれほどでもなかったサッカーに対する情熱が、“ブルーロック”への参加からふつふつと高まり、熱を帯びていく様子は、島﨑さんにとっても納得感のあるものだった。「TVシリーズでは、凪について描かれていない部分を自分なりに想像しながら演じていました。そのときに推測していた凪の心境…凪と玲王の出会いによって生まれた感情や、ふたりで“ブルーロック”に行くまでの気持ちなどは、『エピ凪』で描写されていたものに近かったですね。しかもその変化が、“エゴ”を剥き出しにする瞬間まで、丁寧に描かれていて。だから今回のアフレコでは、ある種の確信を持って凪と対峙できました。方向性としては、真実味というか、人間としての実在感を持たせた上で“エゴ”を表現していけたらと思いました」凪が主人公として描写されるため、本編の主人公である潔がライバルとして登場する。その視点の違いも見どころだと語る。「TVシリーズでは、凪が理解不能な天才として描かれているので、アフレコでもよりその得体の知れなさを強調する演出がなされていました。それが彼のミステリアスな存在感に拍車をかけていたけれど、一方で今回は潔が、(凪と玲王が所属している)チームVからしたら得体の知れない、恐ろしい存在になっている(笑)。潔の内面が描かれない凪の視点からだと、これだけ怖いんだと思いましたし、潔役の浦(和希)くんも、“魔王”のように演じていて(笑)」サッカーシーンとともに、『エピ凪』で大切にされているのは、凪と玲王の関係性。チームメイトとして高校で一緒にプレーをしてきたこのふたりの関係を、“ブルーロック”の中では「特殊」だと、島﨑さんは捉えている。「ほとんどが“ブルーロック”という閉鎖空間の中で起きる物語の中で、凪と玲王は、プロジェクトの前から出会っている特殊なコンビなんです。しかも“ブルーロック”の中で、その関係性が当たり前のように変化し続ける。仲が良いからといって常に一定の状態でもないし、だけど互いにかけがえのない存在なのは徹頭徹尾、変わらない。だから、『凪にとって玲王はどんな存在ですか?』と質問されることも多いのですが、言葉ではなかなか言い尽くせないですよね。凪にとって、玲王は玲王でしかないので」そしてもうひとり、凪の視点からクローズアップされているのが、チームVに欠かせない存在として登場する剣城斬鉄。脱落者が続出するシビアなルール設定上、シリアスになりがちな物語を、“バカ斬鉄”とも言われる彼のキャラクターが、アフレコ現場においても和やかな空気を生んでいたそうだ。「斬鉄は常に面白いですからね。アフレコ現場でも、斬鉄役の興津(和幸)さんが、真面目な顔してボケるんです。一方で、めちゃくちゃ熱い男じゃないですか。一本芯が通っていて、鋭さもあり、声がデカい(笑)。チームVでは、凪が基本的にローテンションだから、ハイな斬鉄が際立ちますよね。玲王と凪だと穏やかでゆるい空気なのに、斬鉄というアクセント、いやスパイスが利いている(笑)。あのチーム感はすごく好きです」映画館という大スクリーンで描かれる凪と玲王の絆。プレーは超一流でも人間関係は不器用で…。そんなふたりの関係に、もどかしさを覚える島﨑さん。最後に、本作の楽しみ方を語ってもらった。「凪の心情はモノローグとして語られることが多く、ドラマとしては口に出さない方がグッときます。でも、『凪、それは玲王に口に出して伝えてあげなよ~』と思うシーンもたくさんあります(笑)。ただ、そうやってままならないのが人間だし、口にしなかったことで成長を促すこともあるかもしれない。一方で、作品を観たお客さんだったら、『よし、気持ちはちゃんと口に出して伝えよう!』って前向きに思うのではないでしょうか。少なくとも僕は、そう思いました(笑)」しまざき・のぶなが宮城県出身。主な出演作にTVアニメ『Free!』(七瀬遙)、『バキ』(範馬刃牙)、『忘却バッテリー』(千早瞬平)など。衣装協力(パンツ)・NEW ORDER内田雄馬 as 御影玲王“宝物”との別れに拗ねてしまう、そんな玲王に共感。「じつは共感性の高いキャラクターですよ。彼は“ブルーロック”における凡才の希望だと思います」御影玲王について、彼を演じる内田雄馬さんはこう評する。御曹司で、何不自由ない生活を送ってきた玲王だが、自ら突き進んだサッカーの道=“ブルーロック”の中で挫折を経験する。「裕福な家庭に生まれた分だけ、人間的に未熟。自分の望み通りにいかないと、すぐにメンタルが崩れてしまう。でも、そういうところに僕は可能性も感じていて。この作品においてもっとも成長する伸びしろがあるのではと」サッカーで無二のパートナーであった凪は、玲王の大きな宝物だった。だが、彼は“ブルーロック”でサッカーへの熱い“エゴ”に目覚め、玲王との決別を選ぶ。「凪を宝物、つまり自分の“物”と感じていたところがポイントだったと思います。凪も最初はそれが心地よかったと思うのですが、“ブルーロック”で成長してサッカーを楽しむようになった。玲王にとってもそれは喜ばしいことのはずなのに、隣にいるのが自分じゃないことが許せなくて、拗ねてしまう。彼の、妙に素直になれない部分をなんだか親のような気持ちで見守ってしまいます」TVシリーズに比べ、凪との出会いや学園生活など、玲王の生活も細かく描かれているが、演じ方に変化はあったのだろうか。「TVシリーズのときは潔たちの視点の物語。ですが、今回は玲王たちの視点。本編では見えなかった、心の流れも描かれているので、素直に玲王が感じているものを出しています。本編では強大な敵、今回は普通の青年、ですね」閉鎖された“ブルーロック”で引き出される“エゴ”は、経歴やプライドを超えたところに存在する。それが本作の魅力であると、内田さんは語る。「サッカーアニメですが、人間ドラマがやはり面白いですね。特に、これまでの自分を捨てていくところが。潔だって、“ブルーロック”の中でどんどん変わっていったので、玲王もまだまだ成長するはず。その過程にある玲王を、『エピ凪』では凪の視点から、TVシリーズでは潔の視点から体感できる、二度おいしい作品です」うちだ・ゆうま東京都出身。主な出演作に、TVアニメ『呪術廻戦』(伏黒恵)、『シャングリラ・フロンティア』(サンラク/陽務楽郎)、『MFゴースト』(片桐夏向)など。コート¥57,200カットソー¥14,300パンツ¥33,000(以上Blanc YM/TEENY RANCH TEL:03・6812・9341)チョーカー¥36,300リング¥27,500(共にPLUIE/HEMT PR TEL:03・6721・0882)浦 和希 as 潔 世一凪と玲王から見た強い潔を、主人公を意識して演じる。TVシリーズの『ブルーロック』では主人公である潔世一。凪と玲王の視点から描かれる『エピ凪』も彼の存在感は不変だと、潔役の浦和希さんは確信している。「彼はこの作品の中でもっとも“エゴ”が強い人間です。玲王のようにお金持ちでもないし、凪のように天才でもない。だけど、“ブルーロック”の中で這い上がって心身ともに強くなっていく姿は共感を呼ぶものだし、それが彼の魅力だと思います。今回は、凪と玲王がメインですが、改めて潔ってカッコいいなと思いました」『エピ凪』は、TVシリーズで描かれた『ブルーロック』と出来事自体は同じだが、凪と玲王の前に立ちはだかる潔には、TVシリーズとは違う凄みが表れている。「アフレコの際、監督からひとつだけ明確なオーダーがありました。『TVシリーズで演じた潔はいったん置いてもらって、凪から見た強い潔を見せてください』と。その瞬間に、これまでのお芝居は全部忘れて、凪からどう見えるかを考えて取り組みました。TVシリーズではもがき苦しむセリフが多かったのですが、今回はあえて息が上がるような演技はせず、余裕があるように。言葉のひとつひとつに重さを出そうとしました」一方で、視点の違いによる演技の変化はあるものの、譲れない部分もあったという。「『ブルーロック』の主人公は潔ですからね。『エピ凪』ではちょっと凪に譲っているだけで(笑)。自分が主人公である、というのは絶対にブレないように。演じ方が変わっているとしても、潔の気持ちに嘘はないですから」強大な敵役として参加したことで、浦さんは凪と玲王の関係性を客観的に見ることができたそう。一方、途中で決別するふたりの関係にはもどかしさも感じていて…。「凪ってホント、口下手だな~って改めて思いました(笑)。素直に思ったことを言うタイプだと思っていたのに、玲王に対しては正直な気持ちを伝えていないことが多い。この行間は誰も読めないと思います(笑)。ただ、TVシリーズでは天才でしかなかった凪が、人間的で、未熟な部分があるのを今回の作品で知れたのは興味深かったですし、面白かったです」うら・かずき大阪府出身。最近の出演作に、TVアニメ『カミエラビ』(ゴロー/小野護郎)『テクノロイド オーバーマインド』(コバルト)など。『ブルーロック』が初主演作となる。『劇場版ブルーロック‐EPISODE 凪‐』原作/金城宗幸漫画/三宮宏太キャラクターデザイン/ノ村優介(講談社「別冊少年マガジン」連載)監督/石川俊介構成・脚本/岸本卓ストーリー監修/金城宗幸アニメーション制作/エイトビット出演/島﨑信長、内田雄馬、興津和幸、浦和希ほか全国公開中。※『anan』2024年5月1日号より。写真・木村心保スタイリスト・宇都宮春男(YKP/島﨑さん)奥村 渉(内田さん)ホカリキュウ(浦さん)ヘア&メイク・瓜本美鈴(島﨑さん)花嶋麻希(内田さん)西田聡子(ZOSP/浦さん)取材、文・森 樹(by anan編集部)
2024年04月28日2022年にTVアニメ化されたサッカー漫画『ブルーロック』が、シリーズ初の映画化。『劇場版ブルーロック‐EPISODE 凪‐』としてついに公開されます。原作を務めた金城宗幸さん、監督の石川俊介さんに、本作の魅力について語っていただきました。『エピソード凪』がここまで濃厚なドラマになるとは。原作・金城宗幸「日本代表にものすごいストライカーがひとりいたら、何か変わるんじゃない?そんなテーマから企画は始まりました」漫画『ブルーロック』の着想について、原作者の金城宗幸さんはこのように話す。日本サッカー界において長年、課題となっている決定力。そのピースを埋めるのは、“エゴ”を剥き出しにしたストライカーではないか――そうした仮説から“ブルーロック(青い監獄)”でしのぎを削る高校生たちのサッカー群像劇が生まれた。テーマに合わせ、本編の主人公である潔をはじめ、『エピ凪』の主人公である凪やチームメイトの玲王など、個性豊かなストライカーたちが登場する。「本編の主人公である潔は、周囲を見て周りに合わせながら成長していくタイプ。一方で、凪はやる気はないし、適当で面倒くさがり屋なんだけど、すごい才能を持っている。つまり、ふたりは真逆のキャラクター。ただ、凪の性格だと、サッカーはおろかひとりで生きるのも難しそうなので…(笑)、彼を世話できるキャラクターとして玲王が生まれました」潔の真逆のキャラクターとして生まれた凪は、『ブルーロック』を別角度から見る格好の存在に。そして始まったのが、本編と同じ時系列を凪と玲王の目線で描く『‐EPISODE 凪‐』だった。「『ブルーロック』は群像劇なので、別のキャラクターの目線からスピンオフをやれるね、とは担当編集と連載初期から話していました。その適役として当初から名前が挙がっていたのが凪でしたね。彼には玲王との関係性も含め、本編で描いていない背景やエピソードがたくさんあったので。ただ、連載を進める中で、ここまで濃厚なドラマになるとは思っていませんでした」『エピ凪』では、努力を嫌う凪が、“ブルーロック”で戦ううちにサッカーの楽しさに気づき、自らの“エゴ”と向き合っていく。周囲からは天才と称される彼であるが、その内面にある迷いや苦悩などもストレートに描かれた。本編と比べると、ひとりの青年として成長していく凪の姿を捉えている。「凪は才能だけでなく、玲王をはじめ仲間や環境にも恵まれている。天才なので、特に苦労なく“ブルーロック”を勝ち抜けるという物語でも成立したと思います。でも、『そうはさせない』と、巨大な壁として本編の主人公である潔が立ちはだかる。天才がその才能だけで“ブルーロック”をのし上がるような傲慢さには抵抗があったし、凪をそういうキャラクターにはしたくなかったので」一方で、凪の才能を見出し、世話する存在である玲王も、成長していく凪への葛藤など、劇場版ではその心境も明らかになる。「玲王は登場させるだけで面白いというか。凪にフォーカスしたことで、彼の方が人間的に掘り下げることができたように思いますね。お金に恵まれ将来を約束された御曹司であるけれど、僕らみたいな一般人に近い感覚があるので、読者目線からも共感しやすいキャラクターだと思います」“ブルーロック”入寮から一次選考終了までを中心に描かれる劇場版の『エピ凪』については、金城さんはストーリー監修として参加。映像としての感想を聞くと、「凪と玲王に焦点を当てているので、ウェットな感じとキラキラしている感じ、どちらも入っている人間ドラマだなと思いました。途中、凪と玲王の関係も含めてドロッとしたり、ギラついたりするところもあるけれど、最後は光の射す方へ抜けていく。TVシリーズの『ブルーロック』の変奏、曲調が違うというイメージですね」現在も『ブルーロック』『エピ凪』ともに原作の連載は続いているが、TVシリーズや今回の劇場版の映像演出が、原作に反映されることはあるのだろうか?「連動はしています。原作を描きながらアニメを観て、アニメを作るときにもアイデアを出したり。自分の中でその連動というのが連載する上での良いグルーヴを生んでいます。凪と玲王も、役を演じてもらっている島﨑信長さんと内田雄馬さんが普段交わしている会話のノリとかに、無意識に影響されているように思いますし」『ブルーロック』は現在連載されているサッカー漫画の中でもトップクラスの人気を誇り、Jリーグとのコラボ企画も続いている。こうした状況に金城さんは驚きつつ、光栄なことと話す。「作品の中では絵心(甚八)が日本のサッカー界の問題点に苦言を呈するシーンがあります。ですが、テーマを汲み取って観てくださる方が増えているのはめちゃくちゃ嬉しいです。それこそJリーグのコラボ企画も(国立競技場に)観に行かせていただいて、生のサッカーの面白さを改めて体感することもできました。僕としては将来、『ブルーロック』や『エピ凪』を観てくれた子供たちが、ストライカーとして日本代表に入ったりすることがあれば、感無量です」かねしろ・むねゆき漫画原作者。『ブルーロック』ではノ村優介と、『エピ凪』では三宮宏太とタッグを組む。原作者としての代表作に『神さまの言うとおり』『僕たちがやりました』など。テーマは凪の成長。そして凪と玲王の絆。監督・石川俊介TVシリーズの『ブルーロック』で副監督を務め、今回は監督を務めた石川俊介さん。TVシリーズのエンディングアニメーションや絵コンテ、演出も担ってきた石川さんが改めて重視したものとは?「まず見せたいものとして持ってきたのが、凪の成長物語です。次いで自分の中で重視したのが、凪と玲王の絆ですね」TVシリーズの『ブルーロック』では、一般家庭に育った普通の少年ではあるものの、人一倍サッカー愛に溢れた主人公・潔世一が“エゴ”を剥き出しにして成長していく。対して、劇場版の主人公である凪は玲王に誘われてサッカーを始めたばかりの天才肌。“ブルーロック”入寮を嫌がって“負け抜け”をしようとするなど勝利への執着心や感情表現に乏しかった彼を、主人公としてどのように描こうとしたのだろうか。「凪は表情にも行動にも、言葉にも出さないのが特徴なので、そうしたキャラクター性を維持しながら主人公として描く必要がありました。そこで大切にしたのが、玲王の視点です。凪と玲王が互いを補完する関係性に置くことで、物語としての発展性やひとつの感情線ができるように組み立てていきました。具体的には、それぞれの心境を語るモノローグから思い合うふたりを丁寧に積み重ね、山場である凪の決断までをしっかりと流れで見せています」また、TVシリーズの『ブルーロック』と時間軸を同じくする物語ではあるが、その中で重要になる凪と玲王のシーンには、劇場版ならではの解釈で表現している。「TVシリーズにもあるふたりの初対面シーンですが、その出会いの重要性を深掘りしたかったので、新たな解釈を交えながら描き直しました。“ブルーロック”への入寮テストとなるオニごっこのパートでも、言葉ではあまり語らないものの、互いの感情が行動に表れる部分なので、『エピ凪』のひとつのポイントになっています」一方で、メインとなるサッカーシーンのみならず、部屋や食堂、大浴場など、寮生活での日常描写で見せる高校生らしいやり取りも『ブルーロック』シリーズの魅力のひとつ。石川さんは、大きな物語を追いつつ、そうした青春感のあるシーンをなるべく残そうと考えていたという。「劇場版なので、もちろん尺の制限はありましたが、数カット…最悪ワンカットだけでも日常シーンは残したいと考えていました。例えば、凪と玲王が通う白宝高校の描写も、物語のメインではないので優先順位は低くなってしまう。でも、凪と玲王の絆を築いていく流れの中では必要なシーンですからね。“ブルーロック”に入ってからだと、チームVの剣城斬鉄の存在を大切にしています。彼はただのオモシロ担当ではなくて(笑)、この世界観に幅を持たせてくれる。特に『エピ凪』は主役級のキャラが本編よりも少ないので、斬鉄も含めた3人の関係性から、凪と玲王の距離感も描きました」アフレコもこの作品に合わせ、セリフの新録が行われている。特に凪は、キャストである島﨑信長さんの要望もあってTVシリーズと重複するシーンであってもすべて新録となっているほか、『ブルーロック』本編の主人公である潔も、今回は明確に敵であることを意識したアフレコ演出が行われた。「凪役の島﨑さんと玲王役の内田さんには方針だけ説明して、あとはおふたりにほとんどお任せしました。一方で、潔は凪の前に立ちはだかり、彼を変えていくキャラクターになるので、潔役の浦さんには『魔王でいてほしい』とディレクションしました(笑)。そこで潔の存在感が出せればと」映像・音響面は、TVシリーズを踏襲しつつも劇場の大スクリーンを想定した変化や調整を行っている。特に、凪の性格を表現する“瞳”にこだわったという。「主人公である凪の特別性を表現するには、シュートシーンや彼の“エゴ”が覚醒する過程は非常に大切でした。『ブルーロック』ではオーラの表現を特徴的に使っていますが、これも劇場用にブラッシュアップしたものにしています。瞳の表現には以前からこだわってきましたが、凪は特に表情や言葉には出ないキャラクターなので、瞳の表現をさらに追加で開発して、そこで彼の想いを語らせました。音楽も、劇伴作家の村山潤さんとより綿密にやり取りをして、大部分のシーンでフィルムスコアリング(シーンの尺に合わせて作曲する方法)を導入しています」石川さんにとって初監督作品となった『劇場版ブルーロック‐EPISODE 凪‐』。監督として関わり、より『ブルーロック』シリーズへの愛は強まったようだ。「監督になって、自分のビジョンを形にできる幅は広がりました。やりがいがありますし、キャラクターのことをより好きになりますね。『ブルーロック』的に言えば、キャラと私たちの間にも良い化学反応が生まれているので、それを劇場で楽しんでほしいです」いしかわ・しゅんすけアニメ演出家、監督。TVアニメ『ブルーロック』第1期の副監督。参加作に、『転生したらスライムだった件』(演出)などがある。『劇場版ブルーロック‐EPISODE 凪‐』原作/金城宗幸漫画/三宮宏太キャラクターデザイン/ノ村優介(講談社「別冊少年マガジン」連載)監督/石川俊介構成・脚本/岸本卓ストーリー監修/金城宗幸アニメーション制作/エイトビット出演/島﨑信長、内田雄馬、興津和幸、浦和希ほか全国公開中。©金城宗幸・三宮宏太・ノ村優介・講談社/「劇場版ブルーロック」製作委員会※『anan』2024年5月1日号より。制作:エイトビット作画・仕上げ:AQUASTAR Inc.取材、文・森 樹(by anan編集部)
2024年04月28日筋トレの方法をストーリーに組み込んだ、そんなマンガ、意外とあります。登場人物に思いを馳せているうちに、いつの間にかあなたも筋トレがしたくなる…。サブリミナル効果、期待しましょう。鍛える気持ちを刺激します!おすすめ筋肉ライブラリー。筋トレ社長原作・Testosterone漫画・たむらあやこひ弱な大学生が筋肉隆々の社長と、出会った…。「筋肉がこの世の全てを解決する」と信じる社長が、偶然出会った筋肉ゼロな大学生・星野くんを、めくるめく筋トレの世界に誘う物語。社長が言う決めゼリフに説得力があり、思わず鍛えそうになってしまうのがすごい…。全1巻¥605/KADOKAWA©たむらあやこ/Testosterone/KADOKAWA好きピのために腹筋割りたいギャル輪立さく大好きな筋トレYouTuberの彼のために、腹筋、割ります。主人公は女子大生・シノ。同じゼミにいる筋トレYouTuberのマジ本のタイプは“腹筋が美しい人”。彼が大好きシノは、意を決して腹筋を割るために筋トレを開始。筋トレ内容をきちんとわかりやすく紹介してくれるので、ガイド本としても使える。全1巻¥693/講談社©輪立さく/講談社全てを筋肉で解決する童話赤信号わたるみんながムキムキなら、世界は平和…なのか?シンデレラやかぐや姫、一寸法師など、お馴染みの童話の登場人物がもしマッチョだったら…?というオムニバス作品。赤ずきんは〈赤ず筋〉、浦島太郎は〈浦島筋肉太郎〉など、名前にも筋肉が。こちらは筋トレ要素は薄めです。全1巻¥990/双葉社©赤信号わたる/双葉社筋欲のカノジョ岡田幸士周囲にバレずにこっそり筋トレするOLの物語。一見ごく普通のOLに見える丹練子、実は筋トレ大好き女子。ジムに行く時間がないゆえに、オフィスや会議室などで、今日も周囲にバレないようこっそり筋トレ中。思わず笑っちゃうコメディですが、それぞれのメソッドは役立ちます!全2巻電子版 各¥693/小学館©岡田幸士/小学館※『anan』2024年4月17日号より。写真・内山めぐみ(by anan編集部)
2024年04月17日昨今の辞書ブームや、校閲者が主人公の作品などが人気を博し、校閲という仕事が広く知られるようになってきた。本書『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』もまた、そんな校閲の世界にスポットを当てた楽しいコミック。著者のこいしゆうかさんは、取材に1年ほどかけたそうで、現在も文芸誌『小説新潮』で連載中。校閲の世界の奥深さに触れるコミック。タイトルの意味がわかると、痺れる!「こういうミスがあった、こういうやりとりがあったなど、作家さんと校閲者さんとの間で起きた実際のエピソードを交えながら、ストーリーの部分は、校閲者さんたちの日常や、ひとりひとりが持つ校閲の哲学のようなものをどうやったら織り込めるかなと考えていきました」舞台は、老舗出版社〈新頂社〉の校閲部文芸班。社歴10年目の九重(くじゅう)心さんを中心に、新入社員の瑞垣さん、校閲部OGのとっとこちゃんこと月山さん、ストイックな丹沢さん、校閲部のレジェンドと呼ばれる矢彦さんなど、個性的な面々揃い。彼女たちが実直に語り合う言葉が、どれも興味深い。「九重さんをはじめ、ほとんどのキャラはお会いした校閲部の方の印象をミックスしています。最初は、比較的もの静かな方が多いなと思っていたのですが、ちょっとしたこだわりなどに触れると話が止まらないこともあり、そういう人間らしさも参考にしています。瑞垣さんには、仕事のあり方についてシロウト感覚で質問していく、いわば読者目線に近い役割をしてもらいました。矢彦さんだけは実在の人物を描いています。校閲への哲学や考え方が明確で、そのまま漫画に出したいと思ったんです」校閲者がゲラ(校正紙)を読んでいて疑問に感じた部分などを指摘することを「鉛筆を入れる」「鉛筆書き」などと言うのだが、そこにも個性が出る。誤植を見つけたり、ファクトチェックしたりするのは、もちろん仕事として求められる部分ではあるのだが、同時に、文芸の校閲には、実は「これという正解がない」といわれているのが驚きだ。「校閲者さんはみな作家さんの気持ちや意図を汲むのですが、それゆえに葛藤します。鉛筆の入れ方を経験を積みながら学び、九重さんの言うように、〈百年後に残す一冊を作っていくという意志〉で、さらに次の世代へ技術を引き継いでいく。まさに職人仕事なんだなと。校閲者さんは編集者さんとは違うけれど、作品をより良くするために親身になって一緒に考えてくださっているし、私自身も一著者として、自分が考えた世界について誰よりも真剣に考えてくれる人が一人でも多いのはありがたい。編集さんだけではなく校閲者さんも味方なんだなと思うと、心強いです」プロの仕事ぶりを堪能されたし。『くらべて、けみして 校閲部の九重さん』新潮社校閲部および編集者(OB含む)が全面協力。実際に校閲部に所属する方々のミニコラムも収録。続刊では、フリーの校閲者にもスポットを当てる予定。新潮社1265円©こいしゆうか/新潮社こいしゆうか漫画家、キャンプコーディネーター。ゆるいタッチで難しいことをわかりやすく伝える漫画を得意とする。主な書籍に『ゆるっと始める キャンプ読本』など。※『anan』2024年4月3日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年04月02日夫・翔太に隠し子発覚…!あなたが奥さんなら、どうしますか?まさかの事実に動揺する恵。友人からは「娘の目的がお金なら大金を払うことになるかもしれない」と言われ、恵は現実的な問題を考え始めます。翔太とともに夫婦で背負うべきものなのか…悩んだ末、恵は翔太を呼び出します…。■夫の隠し子に動揺 友人に相談するも… 夫に高校生の子どもがいたということを知らされ、動揺する恵は友人に相談。友人は、お金が目的で翔太に会いに来たのではないかと言います…。■一緒に乗り越えたい!妻の決意友人から、結婚前の行いをこれから恵も背負っていくのかという現実を指摘され、冷静になる恵。翔太としっかり向き合うことを決意します。恵は翔太と一緒に乗り越えていくということを伝え、自分も相手の子どもと母親と会って真意を確かめたいと伝えます。そうして恵たちは、2人を呼び出したのですが…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。漫画に対する読者からのコメントを紹介します。■夫に隠し子による妻の立場に読者は…まずは、ウーマンエキサイトの公式Instagramから「みなさんが妻の立場なら…どうしますか?」という質問に対しての意見です。・どんな理由があろうと母親が知ってるかどうかも不明のまま子どもにお金を渡すこと自体間違ってる。まず母親と現状を確認し、その後どうしていくかを決める。母親も養育費が欲しいなら初めっから消えたりしなかっただろうし。・認知してもない状況で知らぬ間に生まれた子を今更認知しろとか言ってもねー…。・徹底的に調べます。また、恵が友人に相談した際に出た「養育費」についての読者の見解です。まだ高校生の子どもに渡すということに対して批判の声が集まりました。・お友だちの「大学の費用を出させたい」が合ってる気がする。私の妄想だけど、家庭環境の悪かった母親が、真優ちゃんの父親と結婚して苦労したから自分はちゃんとした道を歩むために気弱そうでフリーのエンジニア(お金ありそうに見える)な誠さんを狙ったんじゃない?・養育費が何たるかをこの場で説明できるなら払ってやるわ。・お金出すだけじゃなく教育するのも親の仕事だから、そんな態度なら出さないとはっきり言ったら良い。養育費とお小遣いは別。・認知してないなら養育費の支払いは不要。・児童相談所に連絡すれば、女の子の母親にすぐ連絡つくのではないでしょうか。真相を確認するには手っ取り早い。そして、本当に子どもなら養育費は払うべきだと思う。最後に、翔太に同情する声や夫婦関係の良さについての読者の考えです。・妊娠も知らされずに勝手に自分の子供を出産されてても、母子が本気出せば強制認知で養育費払わないといけないのかな…怖い…。妊娠は2人の責任だけど、流石に男性側に同情する。・素敵な奥さんで良かったね。でも今までの夫としての父親としての積み重ねが、奥さんにそう思わせてくれたんだから、それも素敵な話。向き合うと決めた恵の決意…そしてこの後どのような展開を見せるのでしょうか。▼漫画「優しい夫の秘密は何?」
2024年03月30日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「凝り性の夫が迷惑過ぎる!」です。友美は夫と娘の3人家族。夫の健太は凝り性で、育児でさえも放棄し、趣味の動画作りや動画視聴に没頭してしまいます。夫は料理に凝るも、まだ幼い娘が食べられるものを考えず自分本位。夫婦ふたりの時は、そんな少年のような夫が面白く魅力的に思えていた友美ですが…。■凝り性で自分本位の夫にイライラ夫の凝り性気質は子どもが生まれてからも変わらなくて、友美はイライラしていました。料理に凝るも、まだ幼い娘が食べられるかどうかも考えずマイペースな夫。しかも洗い物は友美に任せるのでした…。■不安的中!出産後も変わらない夫夫婦2人での時から、凝り性だった夫。中華料理に魅せられた時は、鍋を買ってきてあっというまに本格的な中華料理を作ったのでした。さすが!と思う反面、基本的に自分本位のため困ることも…。産後も夫の気質は変わることがなく…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!? ライターが気になった場面をピックアップします!■私のこと見てる? 夫の反応は…凝り性で自分本位の夫に振り回される友美。この後、夫の暴走が度を過ぎ、家の購入を勝手に決めてしまいます。これには、さすがに怒り爆発の友美なのでした…。今回、友美がなぜ起こっているのか分からず謝る夫に、友美が不満を明かす場面をピックアップしました。友美は夫に、引っ越そうとしたときに「私と娘の気持ちを考えたか」とうこと、「娘のお世話で必死な私を見ているか」ということを訴えます。夫だけが楽しいということに、夫自身が気が付いた場面です。凝り性な人って「自分本位」から「家族のため」にと切り替えれば、持ち前の器用さで子育ての強い味方になるかもしれませんよね!この後、夫がこれまでの探究心を子どものため家族のために発揮してくれるようになります。果たしてその変化とは…?▼漫画「凝り性の夫が迷惑過ぎる!」
2024年03月23日誕生日ディナーに家族で向かう途中、もらい事故で両親を亡くした主人公の平沢実斗(みと)。自分は指に後遺症が残りバンドデビューの夢も潰えた。思い出の詰まった家も、新しい所有者となった作家の浅賀から〈加害者が集うシェアハウス〉になると告げられてしまう。だが、実斗は、ひょんなことからその家で加害者たちと一緒に暮らすことに…。被害者と加害者はふれ合うことで何かを変えることができるのか。夕海さんの『ノラの家』は、そんな深遠なテーマを内包した意欲作。対話は悲劇のストッパーになり得るか。予測不能の物語がここから始まる。「ハードな設定だと言われるのですが、一見真逆の立ち位置に見える被害者と加害者って、実は同じような葛藤を抱えているように思うんです。誰にも自分の気持ちをわかってもらえないとか、居場所がなくて孤立するとか。それでも腹を割って話したら相容れないと思っていた相手を少し理解できたりもするのではないかと。対話せざるを得ないような状況って何かなと考えたとき、共同生活をさせようと思いつきました」かくて浅賀が集めたルームメイトは、実斗を含めて5人。1巻ではまだルームメイトたちがどんな加害をしたのかの詳細はわからないが、交通事故加害者が交じっているらしいことや、実斗を過剰に敬遠する人間がいることなどは描かれ、今後の伏線がたっぷり詰まっている。「誰が何をやったのかの秘密を、だいたい1巻につきひとりくらいずつ明かしていく予定です。実斗は、周囲に愛されて何の不自由もなく生きてきた分、甘ったれだろうし心も弱っていると思いますが、彼が恵まれた環境の中で育ててきた優しさとかポテンシャルが、誰かを救うこともあるかも…と期待しています。私自身の過去を振り返って、自分がこうできたらよかったなと思うことを、実斗にしてもらっているというか。あと、この作品は登場人物が多いので、パッと見の造形をなるべく変えるなどの工夫はもちろん、しぐさのクセやポーズもその人らしさが出るように意識していますね。部屋の中の生活感にも“その人”が出ると思うので、背景でも“人”を描くことができたらいいなと思っています」実斗は亡父が遺した「人との縁を大切にするんだよ」という言葉とどう向き合っていくのか。これが本作の底に流れる大きなテーマだ。「私自身が父に言われた言葉なんですね。孤独や絶望に囚われてしまいそうなとき、ひとりではないと思えることの安心感があったら、自棄にならないでいられるかもしれません。簡単には答えが出ない重い問いだからこそ、考えるきっかけにしてもらえたらうれしいです」夕海『ノラの家』1ルームメイトのバックボーンのみならず、家のオーナー浅賀の真の目的も気になる!『ヤングアニマルZERO』にて、本作を連載中。待望の2巻は春頃発売の予定。白泉社715円©夕海/白泉社ゆみマンガ家。東京都出身。日本大学藝術学部美術学科卒。2015年に講談社にてTHE GATE奨励賞、’16年、ちばてつや賞大賞を受賞しデビュー。※『anan』2024年3月20日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年03月20日大のマンガ好きとして知られる麒麟・川島明さん。彼が惹かれるマンガの主人公とは?『寄生獣』泉 新一高校生の等身大の主人公を通していろいろ考えさせられる作品です。泉新一は、マンガ界において数多くいる“普通の少年”といわれる主人公の中でも、本当に一番なんでもない人物ではないでしょうか。だって、ほんまにただ寝ていただけの、できるだけ何もしたくない高校生が、寄生生物であるミギーに寄生されるところから物語がスタートしますから。でも、戦う使命が生まれたことやミギーの影響もあり、どんどんワイルドになり、周りの人から雰囲気が変わったと言われるくらい、すごい男になっていきます。本作には無駄な描写が一切なく、また、えげつないシーンもたくさん出てきます。“なぜ動物は食べるのに人間は食べないのか”という問いを寄生獣が投げかけてくるなど、世界や人が抱える問題を泉新一という等身大のキャラクターの目を通じて描いた、考えさせられる作品でもあります。メッセージ性は強いのに難しくなく読めるというバランスも、すごくいいんですよね。『新装版 寄生獣』岩明 均突如、宇宙から地球に飛来した、人間の脳を乗っ取り他の人間を食い殺す寄生生物たち。その一つであるミギーと共存関係になった新一は、寄生生物と激しい戦闘を繰り広げることに。アフタヌーンKCDX全10巻各770円/講談社©岩明均/講談社『ジョジョの奇妙な冒険 PART4 ダイヤモンドは砕けない』東方仗助(ひがしかた じょうすけ)虹村億泰(にじむら おくやす)ヤンキーで未熟な二人ですけど、「ジョジョ」で一番好きなキャラ!「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズはどれも大好きなんですが、主役という意味ではPART4の東方仗助が一番ですね。『ビー・バップ・ハイスクール』のようなヤンキー漫画も読んでましたが、それを“ジョジョ風”に味付けすると、仗助や(虹村)億泰みたいになるんだろうなと。メルヘンチックでSF的な架空の街で巻き起こるスタンド使いの話に、非常に昭和なリーゼントと短ラン姿のやつがいる(!)というのは面白いですよね。それに、リーゼントをけなされるとキレたり、妙な罠に簡単に引っかかってしまう仗助と億泰は、すごくかわいいんです。ダメで未熟な二人やからこそ力を合わせたらすごいというところも魅力的やし、僕は二人ともが主役やと思っています。亡くなったと思われた億泰が、空間を削り取るという強いスタンドである“ザ・ハンド”と共に登場するシーンなんて、しびれますから。登場人物が全員いい!「PART4の登場人物たちはみんな、個性豊かで魅力的。全員がいいんですよね」と川島さん。PART3の主人公であり、仗助に迫る危機を伝えるため杜王町にやってきた空条承太郎、真面目な広瀬康一と彼に想いを寄せる狂気的な山岸由花子などが登場。また、スピンオフが作られるほど人気を博すキャラクターである漫画家の岸辺露伴や、仗助とラストバトルを繰り広げることになる殺人鬼の吉良吉影など、クセの強い人物が揃っている。『ジョジョの奇妙な冒険 PART4 ダイヤモンドは砕けない』荒木飛呂彦ジョースター一族の運命を綴る、壮大なスケールの物語。PART4は、スタンド使いが集まる杜王町と、そこに暮らす温厚な高校生である東方仗助に迫る危機を描くサスペンス。ジャンプコミックスDIGITAL全12巻各792円/集英社©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社『機動警察パトレイバー』泉 野明(のあ)運命のライバルと1対1で戦う主人公を応援したくなります。小学生の頃、兄貴がハマっていたのをきっかけに途中まで読んでいたのですが、40歳になってようやく全巻読み終えました。主人公の泉野明は、“レイバー(汎用人間型作業機械)”による犯罪を取り締まるために開発された“パトレイバー”の新人操縦士。仕事の面ではあまり優秀ではないけど、勝ち気で強い女の子です。彼女にはバドという敵というかライバルがいて、最後まで読むとわかるんですけど、本作を簡単に言うと二人の喧嘩の話なんですよね(笑)。ずーっと決着がつかない状態が根底にあるなかで、いろいろな出来事が起こるんですけど、最後は、野明vsバドの戦い、いわゆる武蔵と小次郎みたいな展開に。やっぱり、この戦いをやらなければいけなかったんやな…としびれます。最後までこの二人で走りきる勇気もすごいと思うし、ストーリー的には単純なんですけど、野明を応援したい気持ちになります。ここが鳥肌シーン!川島さんがめちゃくちゃ心を掴まれたという、野明と最強のライバルであるバドとのラストバトルがこちら。「特に最後の2巻は、すべてを取っ払った二人だけの戦いになるので必見です。しかも、取っ組み合いで終わるというところも、すごくいいんですよね」『機動警察パトレイバー』ゆうきまさみレイバーが普及した近未来の東京。新たな社会的脅威となったレイバーの犯罪に対処するため、警視庁は特殊車輌二課を創設。そこの第2小隊に配属された警察官たちの活躍の物語。少年サンデーコミックス全22巻各528円/小学館©ゆうきまさみ/小学館『ひらやすみ』生田ヒロトマイペースにゆったりと過ごすヒロトくんを見て癒されています。最近の作品ですごく好きなのが『ひらやすみ』です。周りに慌ただしくしている人が多いなかヒロトくんだけマイペースに過ごしているんです。ボーッと釣り堀で働いていたり、ちょっと気になる子ができたりと、ゆったりと日常を送る姿を見ているだけでホッとするし、癒されてます。また、真造圭伍先生だからこそ描ける、コマをぜいたくに使った画を見ていると、呼吸が整うというか、深呼吸ができるというか。それでもたまに、キュッと胸を締め付けてくるような表現や展開もあったりして。それも先生らしいなぁと思います。このシーンが好き!マイペースに過ごすヒロトだが、過去に何かがあったことを匂わせるような描写も登場する。「芸能界にいて、とんでもないショックを受けたことがあるようです。これから明らかになるんでしょうけど気になります」このコマ割りが好き!読んでいて気持ちがいい構図やコマ割りにも癒されているという川島さん。「ヒロトくんが働く釣り堀のワンシーンを見開きで描くなど、ページをゆったりと使った、真造先生にしか描けない画が本当に素晴らしいです」『ひらやすみ』真造圭伍人柄の良さだけで、近所に住むおばあちゃん・和田はなえから家を譲ってもらったヒロト。お気楽に暮らす彼と、その周りに集まってくる、生きづらさを抱えた人たちの物語。ビッグ コミックス1~6巻各715円/小学館©真造圭伍/小学館かわしま・あきら1979年2月3日生まれ、京都府出身。『ラヴィット!』『ベスコングルメ』(共にTBS系)、『川島・山内のマンガ沼』(読売テレビ系)などレギュラー番組多数。※『anan』2024年3月20日号より。写真・土佐麻理子取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月20日大のマンガ好き芸人として有名な、麒麟・川島明さん。好きな作品は「今でも読み返しますね」と言う川島さんに、今も魅了され続けるバイブル的な名作の主人公を教えていただきました!大のマンガ好きとして知られる麒麟・川島明さん。今や朝の顔にもなり多くの人を魅了している彼が惹かれるマンガの主人公とは?「『あしたのジョー』の矢吹丈や『ピンポン』のペコなど、どんなにすごい人間でもスランプやエアポケットがあり、それを乗り越えて初めてヒーローになれると教えてもらえる主人公が好きです。圧倒的に強すぎる人もいいんですけど、絶対的エースじゃないからこそ応援したくなるし、欠点やコンプレックスなどの人間味が、ファンが魅了される部分になると思うんです。僕自身、そうした主役の“欠片(かけら)”を持ちながら、日々、頑張っている感じがしています」『あしたのジョー』矢吹 丈背中を押してくれるジョーはずっと一番好きな主人公です。小学生の時に出合った矢吹丈が、原点というか、いまだに一番好きですね。ジョーは特殊能力で悪を懲らしめるような絶対的主人公ではなく、人道に反する少年で未熟なところから始まるけれど、強くなりたいというピュアな思いがあり、また、力石徹やカーロス・リベラなどとの出会いを通じて負けられない理由もできる。そんな成長物語を読むのが初めてで、こんな主人公もいるんだと衝撃を受けました。力石と戦い、彼が亡くなって生きる目標を失い、長いスランプ期間に陥りますが、その長さや行動の描写はめちゃくちゃリアル。一度どん底まで落ちたことで、カーロス・リベラと戦って野性を取り戻すというその後の展開がよりドラマティックになるし、深みも増すんですよね。本作がなければ芸人になっていなかったかもしれないと思うくらい背中を押してくれた作品で、自分がブレていると思った時に読み返します。『あしたのジョー』原作/高森朝雄漫画/ちばてつや矢吹丈が、力石徹やホセ・メンドーサなどの強敵と戦い、葛藤しながらも成長する様を描く。魅力あふれる登場人物、名台詞や名場面がめじろ押しの、ボクシング漫画の金字塔。講談社コミックス全20巻各385円/講談社©高森朝雄・ちばてつや/講談社『ピンポン』ペコとスマイル復活をとげたペコと幼馴染みのスマイルの決勝戦に胸打たれます。主人公のペコは天才でありながら、次第に、どんどん潰れていきます。彼がいなくても卓球界は当たり前に回り続けるけれど、彼を意識しているドラゴンやアクマなどの選手たちみんなが、ヒーローの戻りを待望し続け、復活するというストーリーがすごくいい。そして最後に、幼馴染みのスマイルとやり合うという展開も胸を打つ。単純にスポーツ漫画とはいえない素晴らしい作品です。卓球って、描くには結構スピード感が求められる展開が続くんですけど、一枚一枚の絵が素晴らしくて画集のようだし、躍動感もある。NSC時代に出合い、マンガの概念を覆されました。当時、自分たちでネタを作って先生に見せていましたが、発表前日の夜に本作を読んだせいで“もっとちゃんと深く描かないとダメだと”思い、作ったネタを一回捨てたことも(笑)。あれだけクオリティの高い作品を読むと、背筋が伸びますよね。このキャラも好き!川島さんが「お気に入りのキャラです」と名前を挙げたのが、ペコとスマイルの前に立ちはだかる強豪校の主将であり、卓球に人生を捧げてきたドラゴン(風間竜一)。最後の大会でスランプを克服したペコと戦うことに。この表紙が好き!川島さんが所有するビッグ コミックス版の表紙は、1巻はスマイルで、5巻にペコが登場する。「最終巻にようやくヒーローであるペコが出るところも、物語と同じ“おまたせ”感があって好きです。松本先生が計算していそうです」『ピンポン』松本大洋卓球に絶対的な自信と愛を持つペコ(星野裕)と、暇つぶしだというスマイル(月本誠)はじめ、卓球に打ち込む5人の高校生を描いた青春ドラマ。ビッグ コミックス全5巻 961円~、小学館文庫全3巻各734円/小学館©松本大洋/小学館『BLUE GIANT SUPREME』宮本 大(だい)夢に向かってピュアに走る大は、令和の時代にこそ必要な人です。本当に真っすぐな意味で大好きなのが「BLUE GIANT」シリーズ。今は第4部が連載中ですけど、どれも最高でしかないです。主人公の宮本大は“久しぶりに昭和のど真ん中の気持ちいいやつが出てきたな”と思いました。勢いと努力だけで夢に向かって突き進んでいく彼は、何かを諦めていた周りの人をも引っ張っていく。根拠のない“大丈夫”という言葉がなかなか言いづらくなった令和の時代に、すごく必要な人なんだろうなと思わされました。とにかくピュアに走り続ける姿も“これぞ主役”という感じだし、ある種、『ドラゴンボール』の孫悟空みたいともいえる存在です。そして、大を見て心が熱くならないなんて嘘やろ!と思うくらい、見ているだけで何かを始めたくなるカンフル剤みたいな人物でもあって。僕自身、初めて読んだ時は思わず走り出しましたし、なんならサックスも始めましたから(笑)。このキャラも好き!大が単身で乗り込んだドイツで出会った、ウッドベーシストのハンナが好きだと川島さん。「女がジャズをやるな、体が小さいから向いてないなどいろいろ言われながらも、努力を重ねる姿に感銘を受けます。ぶつかり合うけど最終的に大と組んだバンドがうまくいってよかった」『BLUE GIANT SUPREME』石塚真一ジャズに魅了されサックスプレイヤーになった宮本大の挑戦の物語。川島さんが特に好きという第2部にあたる本作は、ドイツはじめヨーロッパが舞台となっている。ビッグ コミックス スペシャル全11巻各770円/小学館©石塚真一・NUMBER 8/小学館かわしま・あきら1979年2月3日生まれ、京都府出身。『ラヴィット!』『ベスコングルメ』(共にTBS系)、『川島・山内のマンガ沼』(読売テレビ系)などレギュラー番組多数。※『anan』2024年3月20日号より。写真・土佐麻理子取材、文・重信 綾(by anan編集部)
2024年03月20日ananwebで連載された本作『そうです、私が美容バカです。』は、美容をテーマにしたマンガのなかでも異彩を放っている。まんきつさんは、美肌作りに20年以上励んできた筋金入りの美容オタクだ。「キレイになりたい」思いが暴走!笑えて、タメにもなる美容法。「美容マンガはいつか描きたいなと思っていたんです。だから柳川さんからお話をいただいたときは、跳び上がるくらい嬉しかったです」柳川さんとは「おヤナさん」として登場する担当編集。美容入門者のおヤナさんが、まんきつさんにさまざまな美容法を教えてもらうスタイルで話が展開していく。今すぐ始めたくなる手軽なもの、本格的な施術、真似しないほうがよさそうなトンデモ系が入り乱れるカオスっぷりだ。「難しい説明より、マンガとして読んで面白い内容を意識しました。ネタ決めのときは、柳川さんと本当によくしゃべりましたよね。雑談がほとんどでしたが、好き放題に語り合うその自由さも出せた気がします」「まんきつさんは本当にいろんな美容法を試されていて、なぜこんなバカなことを!?と言いたくなるものや、マンガには描けないことも結構あるんです(笑)。ガチガチの美容法の間に、笑えるけど、誰でもどこでもできて、お金もかからないようなネタを挟んだりして、メリハリをつけています」(柳川さん)絵を描きながら発見した美しさのバランスを、自分の体で再現しようとしたり、脱毛器でおでこを広げて後悔したり。情熱と行動力は頭が下がるほどだが、ストイックすぎず、サボるときはしっかりサボるのも親近感が湧く。後半、ページを割いているのが、余分な皮膚を切って顔のタルミを引き上げる「切開リフト」。やると決めるまでの葛藤や、その顛末を赤裸々に綴っている。「柳川さん含め身近な人から『本当に描くの!?』と言われたのですが、エッセイマンガなのだから、正直に描かなければと思っていました。何をやるときもそうなのですが、物事にハマっている自分がいつつ、いいネタができたことを客観視している自分もどこかにいるんですよね」美容に執着する様をユーモアたっぷりに描きながら、ふと頭をよぎるのは、「誰のため」「何のため」にここまでやるのか、という問い。「行き着くのは自己満足なんです。傍から見たら大して変わらないかもしれないけど、自分はやってよかったと思えるし、元気になれるので」美容だけでなく、何かしら沼落ちしたことのある人にはわかりすぎる悲喜こもごもが、詰まっている。『そうです、私が美容バカです。』キレイになりたくて必死な様子が失笑と共感を呼ぶ、美容エッセイ。安くできる美容法にこだわる著者の体験談が満載。新シリーズも再開予定!マガジンハウス1210円©まんきつ/マガジンハウスまんきつマンガ家。1975年生まれ。『アル中ワンダーランド』『湯遊ワンダーランド』『犬々ワンダーランド』などのコミックエッセイが人気。※『anan』2024年3月6日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年03月06日『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』をより深く楽しむため、ここまで烏野と音駒の両校がたどってきた道のりを、プレイバック。日向翔陽「バレー好き?」孤爪研磨「別に なんとなくやってる…嫌いじゃないけど…」(1期/第11話)日向と研磨の初の邂逅は、ほんの偶然から。烏野高校バレーボール部に入部してまもなく、ロードワークに出た日向が道端で出会ったのが、座り込んでゲームをしていた研磨だった。そのときは名前も素性も知らず、カバンの中のバレー用のシューズを見て、嬉しくて声をかけただけ。しかしそのすぐ後、練習試合の相手だったことを知り、互いに興味を惹かれるように。いま思えば、人見知りの研磨が見ず知らずの日向と会話してたことがすごい。夜久衛輔「彼だって相当レベルの高いリベロなのに慢心するどころかひたすら上だけを見てる…恐いっスねェ」夜久衛輔「3番さんのレシーブ凄かったっス」(1期/第13話)ハイレベルなリベロ同士だからこそのリスペクト。初めての音駒との練習試合で、その守備力の高さに苦しめられた烏野。試合後、音駒のリベロ・夜久に話しかける機会を窺っていたのは、烏野で同じくリベロの西谷だった。てらいなくまっすぐに称賛の言葉を口にする西谷に、リベロというポジションへの誇りと、バレーへの真摯な姿勢を感じた夜久。この時点ですでに夜久は、西谷が現状に甘んじず、さらに進化していくことを確信していたはずだ。田中龍之介「なんだお前!けっこうイイ奴だな!」山本猛虎「…お前もな」(1期/第13話)烏野女子マネージャーの美しさを通じて一気に親密に。烏野の田中と音駒の山本は、どちらも熱血で硬派で仲間を大切にする一方、血の気が多く、敵となれば威嚇するという似た習性の持ち主。それゆえ当初は何かというと対立していたが、山本が田中に烏野のマネージャー・清水潔子の名前を尋ねながらも、「(本人に)話しかける勇気は無い」と素直にぶっちゃけたことから一気に打ち解け、互いに意気投合。その後、ライバルながらも固い絆で結ばれた友人関係に発展。日向翔陽「次は… 絶対…必死にさせて俺達が勝ってそんで―“悔しかった”とか“楽しかった”とか「別に」以外のこと言わせるからな!!」(1期/第13話)日向と研磨の因縁はまだまだ始まったばかり。初の烏野vs音駒の練習試合は、3戦やって烏野の全敗。たとえ練習でも勝ちたい日向は、圧勝しながらも淡々としている研磨が不思議でたまらない。「今日勝ってどう…思った?」と尋ねると、返ってきたのは「…別に普通…かなあ」と、やっぱり淡々とした様子。それは、烏野がまだ研磨を熱くさせるほどの対戦相手ではないということでもある。ここから徐々に研磨が変化していく姿が興味深い。黒尾鉄朗「君MB(ミドルブロッカー)ならもう少しブロックの練習した方がいいんじゃない?」(2期/第7話)いまいち本気にならない月島を黒尾がわざと皮肉で挑発。インターハイ予選で青葉城西高校に敗退した烏野は、さらなる成長を求めて、音駒高校と梟谷学園高校、森然高校、生川高校がおこなっている合同合宿に参加することになる。陽が落ちるまで練習した後も、みんなが自主練を続ける中、月島だけはひとり冷めたまま。身長にも頭脳にも恵まれながら、あと一歩を踏み出そうとしない月島のことをもったいないと感じた黒尾は、発奮させようと挑発を試みる。月島蛍「僕は純粋に疑問なんですがどうしてそんなに必死にやるんですか?」(2期/第8話)月島が烏野のブロックの要へと成長を遂げるきっかけに。幼馴染みの山口に「頭脳もセンスも持ってるくせに、どうしてこっから先は無理って線引いちゃうんだよ!」と詰め寄られるも必死になれない月島は、自主練中の黒尾らの元へ赴き、「たかが部活」になぜそんなに必死になるのかと疑問を投げかける。そんなやり取りをきっかけに、黒尾からブロックの技術を学ぶようになった月島は、いつしか烏野のブロックの要へと成長を遂げていく。孤爪研磨「根性って多分最終奥義精神と体力を鍛えてきた者が満を持して発動できるもの」(4期/第18話)つねに淡々と冷静な研磨が語るチームへの信頼。春の高校バレー2回戦で、早流川工業と対戦した音駒。早流川の作戦は、音駒の頭脳である研磨を疲れさせるというもの。体力のない研磨は、敵の作戦通り第2セットで疲労のピークに。しかし、じつはそれも敵の策に乗ったと思わせ相手を翻弄する研磨の戦略だった。粘りと集中力を必要とする作戦だが、「できるよ。みんなは根性の使い手だから」との研磨の言葉に、チームメイトへの信頼が滲む。黒尾鉄朗「チームワークがハマる瞬間ってのは多分お前が思ってるよりずっときもちいいぞ」(OVA『ハイキュー!! 陸VS空』「ボールの“道”」)ひとりよがりだったリエーフがチームワークに目覚める。全国大会への出場権をかけた春の高校バレー東京都予選で、自分がいかに活躍するかばかりを考えているリエーフに対して、チームで勝つことの面白さを説いた黒尾。当初はピンときていなかったリエーフだが、3位決定戦の戸美学園との試合中、すべてのプレーがチームメイトとの連携により成り立っていることを自覚。同期の芝山優生との連係が成功したことで、チームワークの大切さと面白さに気づく。いざ、決戦の舞台へ!(4期/ 第25話)激戦を勝ち抜き、ついに訪れた決戦のとき。春の高校バレー2回戦で、優勝候補と謳われた稲荷崎高校を接戦のうえで破った烏野。そして同じく2回戦で、研磨の見事な戦略により早流川工業を倒した音駒。前日に激闘を制した両校が、決戦の朝、会場前で顔を合わせる。ここまで共に切磋琢磨を重ねてきた両校が、ついに約束の地で邂逅する。互いの長所も短所も知り尽くした好敵手。その結末は、劇場でぜひ目撃してほしい。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』原作/『ハイキュー!! 』古舘春一(集英社 ジャンプ コミックス)監督・脚本/満仲勧キャラクターデザイン/岸田隆宏総作画監督/千葉崇洋アニメーション制作/Production I.G全国公開中©2024「ハイキュー!!」製作委員会©古舘春一/集英社※『anan』2024年3月6日号より。構成、取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2024年03月04日『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』ついに公開!烏野vs音駒、因縁の行方は?ひたむきにバレーボールに打ち込む高校生たちの青春を描く『ハイキュー!!』。その魅力は勝者に目が注がれがちなスポーツの世界にあって、バレーを愛するすべての人に光が当てられているところ。主人公・日向翔陽が影山飛雄という相棒を得てチームの要になったように、対戦相手や練習試合の相手、マネージャーやOB、応援団…あらゆるものがそのプレーや勝利を支えている。そのあたたかい視点があるからだ。そんな『ハイキュー!!』で、初期から描かれてきたのが、主人公が通う烏野高校と音駒高校との長年の因縁。これまで何度も練習試合を重ね切磋琢磨してきた両校が、今回の劇場版「ゴミ捨て場の決戦」で初めて公式試合で対戦する。制作陣の熱量に圧倒される!劇場版『ハイキュー!!』のここがすごい。たかがバレーの試合。それでも何かに打ち込んだ経験がある人なら、きっと心震わす瞬間があるはずだ。長きにわたる因縁・ゴミ捨て場の決戦がついに開幕。もともと宮城の烏野と東京の音駒がライバル関係になったのは30年前。現在、烏野のコーチを務める烏養繋心の祖父・烏養一繋と音駒の猫又育史監督とは中学時代にバレーでしのぎを削った仲。しかし高校では直接対決が叶わず、母校の監督となってから、いつか全国大会でと約束していた。すでに退任した一繋の志を孫の繋心が引き継ぎ、過去の約束が果たされると思うと、より胸アツ度が増す。劇場版だからこそ描ける大迫力の試合シーンに注目。アニメ『ハイキュー!!』の魅力のひとつは、バレーの試合を動きのある絵で見られること。テレビシリーズでもあらゆる角度から、さまざまな手法で臨場感のある試合を見せてくれていた。そして今回の劇場版はそこからさらにパワーアップ。迫力たっぷりの映像に、手に汗握ること間違いなしだ。研磨と黒尾の出会いから現在までの歴史に泣ける。今回の主人公ともいうべき存在が、音駒のセッター・孤爪研磨だ。子供の頃から他人と関わるのが苦手で家に引きこもりがちだった研磨。しかし黒尾鉄朗と出会ったことで、気が進まないながらもバレーを始め、体を動かすことが苦手なのにもかかわらずここまで続けてきた。今回、ふたりの歴史が回想シーンで描かれることで、多くを語らない研磨の心情に迫ることができ、共感度は一層増すはず。それぞれの努力の軌跡が進化となってあらわれる。今回描かれる試合は、春の高校バレー3回戦。両校とも、ここにたどり着くまでにさまざまなライバルと対戦し、その中で自らの弱点や多くの課題にぶち当たってきた。もっと上を目指すために、それぞれがその課題と真摯に向き合い、地道な練習を重ねてきた成果、その成長の跡が、試合の中で発揮される。あのときのあの悔しさも、進化のためには必要だったんだと思える。それこそが本作の魅力だ。お馴染みのキャラクターたちも多数登場し場を盛り上げる。両校の戦いには、多くのライバルや仲間たちも注目。上段左からシーンごとに、音駒のリエーフの姉・アリサと猛虎の妹・あかね。音駒と東京予選を戦った戸美学園の大将優と恋人の美華。烏野の田中の姉・冴子。烏野や音駒と合宿をおこなった森然高校の千鹿谷と小鹿野、生川高校の強羅。烏野と宮城大会決勝を戦った白鳥沢学園の五色、天童。月島の兄・明光、烏野OBの滝ノ上、嶋田。両校のライバル校・梟谷学園の赤葦と木兎。知ってる顔が登場するだけでアガる。『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』原作/『ハイキュー!!』古舘春一(集英社 ジャンプ コミックス)監督・脚本/満仲勧キャラクターデザイン/岸田隆宏総作画監督/千葉崇洋アニメーション制作/Production I.G全国公開中©2024「ハイキュー!!」製作委員会©古舘春一/集英社※『anan』2024年3月6日号より。構成、取材、文・望月リサ(by anan編集部)
2024年03月04日アニメ化が決定している大ヒット作『チ。―地球の運動について―』では、異端とされた地動説の証明に命を賭けた人々を描いた、魚豊さん。最新作『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』のテーマは陰謀論なのだが、世界を揺るがしたふたつの出来事が創作のきっかけになっている。深読みしすぎて迷宮入り!?恋と陰謀論が行き着く先とは。「ひとつは、2021年にアメリカで起きた議事堂襲撃事件。あまりにもセンセーショナルで驚いたのと同時に、陰謀論にまつわるこれほど大きな事件は、今後起こりようがないだろうと思いました。だけど翌年に、ロシアとウクライナの戦争が始まって。ほぼリアルタイムで送られてくる戦地の映像に対して、SNSなどでは『これは陰謀で、ウクライナではそれほど人は死んでいない』なんてコメントを見かけたりする。戦争という大惨事すら呑み込んでしまうくらい、陰謀論は大きな事象になっていて、なくなるどころか、もはや人間がずっと付き合っていかなければならないものだと思ったんです」そもそも、陰謀論にハマりやすいと自覚している人なんていないはず。主人公の渡辺も例外ではなく、食肉の冷凍倉庫で積み下ろしのアルバイトをしながら、人生を好転させようと自己啓発セミナーに参加していたものの、まんまと騙されてしまう。失意のどん底にいた彼を救うのが、飯山さんという女性だった。「陰謀論に陥る人は、物事を深読みしがちなところがあるらしいんです。その情報の奥に本当のことがあるのではないかと必要以上に疑ってしまう心理は、恋愛に置き換えてみると意外と身に覚えがあったりしますよね。陰謀論を信じる人の気持ちはイメージしにくいけど、恋と絡めれば身近なこととして描けるかもしれない。この発見は大きかったです」裕福な家庭に育った大学生の飯山さんは、世の中を良くしたいという高い志を持っている。フリーターの渡辺とは、いわば住む世界が違うのだが、“恋は盲目”状態の彼にはそれさえも燃料になってしまう。「経済的・文化的格差は、残酷な現実としてあらゆる場面に存在していますが、心だけは平等だと思うのです。渡辺と飯山さんのようにたとえ格差があったとしても、通じ合うことはできるっていうのも、描きたかったことのひとつだったりします」恋心が暴走して渡辺はやがて謎の組織と接触するのだが、1巻は序章としてもたっぷりの読みごたえ。「よくわからない存在として陰謀論者を切り捨てるのではなく、共感できなくても認知はするというような、エンパシーが今の時代は大事だと思うんです。3作目にこのテーマで作品を描くチャンスを頂けたことを誇らしく思います」魚豊『ようこそ!FACT(東京S区第二支部)へ』1「人生が始まってる気がしない」19歳青年が、意識の高い女子大学生を好きになり、世界を揺るがす陰謀論と出合う、前代未聞のラブコメ。3月12日に2巻発売予定。小学館715円©魚豊/小学館うおとマンガ家。2018年「ひゃくえむ。」で連載デビュー。『チ。―地球の運動について―』で第26 回手塚治虫文化賞マンガ大賞など数々の賞を受賞。※『anan』2024年2月28日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年02月27日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「うちのダメ夫 達也の場合」です。20代後半の専業主婦、萌。夫の達也とは職場が同じで、仕事をテキパキとこなす姿に惹かれていたのですが…。出産後、夫の家事育児はうまくいかず。怒ってばかりいる萌なのでした…。■理想的な旦那さん でも育児は大変過ぎて…萌は職場で見る達也のテキパキとした仕事姿がカッコいいと思っていました。二人は授かり婚をし、妊娠中も達也はパパママ教室に一緒に通って、理想的な旦那さんでした。しかし、出産後の家事育児は大変で…。■家事育児 夫に任せたものの…疲労困憊の萌を見て、達也が家事育児を頑張ってくれていたのですが…。「オムツがズレた」「ゲップしてくれない…」と、事あるごとに寝ている萌を呼びます。泣きつく達也を見て、萌は呆然とするのでした…。こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!?ライターが気になった場面をピックアップします!■出来ない夫に激怒 見方を変えると…?出産間もない家事や育児、慣れない事ばかりで親としても体力的にも辛い時期ですよね…。そんなとき、頼りにしていた夫が仕事は出来るのに、家事や育児が全くダメって、もう…!萌の気持ちも分かりますが…。今回は、育児を頑張ろうとする達也の空回りをピックアップしました。激怒していた萌の変化にも注目です!萌は姉に言われて、協力的な達也のダメな部分ばかりに目が行っていたことに気が付きます。赤ちゃんの育児の時は色んな事にナーバスになるものですね。命にかかわることとなると激怒する萌の姿に共感する読者もいるのではないでしょうか。達也の優しさに気が付いた萌。この後、萌は達也にどう歩み寄っていくのでしょうか…。▼漫画「うちのダメ夫 達也の場合」
2024年02月27日同じクラスの前後の席になったことがきっかけで、少しずつ距離を縮め、はじめての彼女/彼氏の関係になった荻野美穂と村田くんの恋の行方を描く『きらきら、あおい』が大バズり中のitoさん。主人公と同じ世代はもちろん、初恋から遠くなった大人たちの心もくすぐる繊細な作品だ。テーマははじめての恋愛。ふたりのピュアさや不器用さに胸キュン必至。「前作『だけどやっぱり彼が好き!』の試し読みとしてふたりの短編をインスタに載せたところ、『続きが読みたい!』とのお声をたくさんいただいたんです。もともと高校生の恋愛物語を描きたい気持ちはボンヤリとあったのですが、フォロワーさんからの言葉がなければ描けていなかったかもしれません。感謝しています」1巻で描かれるのは、はじめての告白、はじめての手つなぎ、はじめてのキス…ややスローに関係が深まっていくふたりの1年数か月。自分の体験と重ねて、あるいは憧れて、ドキドキしたりじれったかったり、読者にいろいろな思いを抱かせる。「自分的には大勢が共感できるものをというよりも、超“主観”を意識しています。ふたりの恋愛模様を描いているのですが、物語の進行は美穂の一人称視点を徹底させました。等身大の素直な思いを描くことでリアリティが出たらいいなと」水彩画のような柔らかなitoさんのタッチが、このみずみずしい初恋物語によく合っている。itoさんはイラストレーターとしても活躍しているが、マンガを描くときとどんな意識の違いがあるのだろう。「大きく違うのは人物の表情ですかね。俳優とモデルの違いに近いのかなと個人的に思っているのですが…。漫画は人物の感情を伝えるために表情を描きますが、イラストは他の大切な情報を伝えるための補助の役割であることが多いので、最初に顔に目が行くような主張はしすぎないようにするのが重要かなと。意識としては真逆なのでとても難しいですが、奥が深くて楽しいです」物語が進むにつれ、ふたりの恋愛に対するスタンスや価値観の違いなどが見え始め、ハラハラ感が加速。「恋愛って最初のドキドキ期間が終わったら、どこまでも現実的な人間関係になっていくというか、あらゆる人づきあいにおいて根本的に大切なことは同じ。ありがとうやごめんなさいが言えるかとか。いわば人間力が試されるので、高校生のふたりには大きな試練。ふたりの成長を見守るつもりで描いています」ito『きらきら、あおい』1恋人とのありふれた情景がいかに忘れがたいものだったかを思い起こさせてくれる極上のコミック。Webコミックメディア「路草」にて連載中。トゥーヴァージンズ979円©ito/トゥーヴァージンズイトマンガ家。高知県生まれ。2017年からInstagramにマンガやイラストをアップするようになり、’19年に初単行本『だけどやっぱり彼が好き!』を刊行。※『anan』2024年2月21日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年02月19日今回ウーマンエキサイト編集部ライターの独自目線とあらすじを交えてご紹介するコミックは「義父母がシンドイんです! 愛の場合」です。愛は仕事好きで、どちらかというと隠し事が嫌いで思ったことは口にすぐ出てしまうタイプ。夫は逆で、人の面倒をみるのが好きで、頼まれると断れず自分で抱え込んでしまいます。優しい性格の夫と気が強い愛とは相性が良く二人は結婚生活にとても満足して過ごしていました。義母と義妹が来るまでは…。■聞いてない!義母たちと突然の同居愛は夫と家でのんびりしていると…。突然、義母と義妹が家にやってきます。夫が愛に相談なしに、義妹の結婚相手を探すため上京して3カ月の同居を決めてしまいました。夫は愛に迷惑は掛けないと言いますが…。■ズレてる? 義妹の婚活義妹は結婚するなら兄が良いと言うほど夫の事が大好き。兄の家で婚活したいと言い出すもなかなか結婚相手を見つけられないでいました。家事の負担も増え、愛の怒りはピークに…!こちらは投稿者のエピソードを元に、ウーマンエキサイトで公開された漫画です。ここからはネタバレ!?ライターが気になった場面をピックアップします!■最悪の状況を打開 義妹への助言とは?妻に内緒で、夫が義母と義妹との同居を決めてしまったという状況にビックリ!妻の立場からすると「ありえない!」ですよね…。しかも義妹の婚活って?3カ月限定って長い!など読んでいて突っ込みどころ多すぎです!妻に内緒で…という箇所も、気になりますが…。今回注目したのは、愛が義妹へアドバイスする場面です。婚活が上手くいかない義妹。愛の助言によって、義妹の心境に変化が生まれます!どんな風に変わっていくのか…!?▼漫画「何かズレてる義母と義妹のおしかけ同居で大混乱…私たちどうなっちゃう?」
2024年02月01日デビュー作の『先生と僕~夏目漱石を囲む人々~』や『漱石とはずがたり』など、漱石やその弟子たちを描くコミックなどを多く手がけてきた香日ゆらさん。最新作『JK漱石』は、漱石が没後100年の現代に、なぜか女子として生まれ変わってしまったという転生モノ。朝日奈璃音(りおん)という名で、女子校の人間関係に右往左往したり、友だちと一緒にお茶をしたりと、女子高生ライフを堪能している。文豪が現代に生まれ変わったら?女子高生になった夏目漱石の運命は。「漱石については人物史からこぼれ話までだいぶ描いたので、これ以上は難しいかなと思っていたのですが、漱石であって漱石でない人物としてなら、また一から漱石を知ってもらうために描けるかなと。また、漱石や文学に興味のない人にも読んでもらえるかも、と思ったんです」文豪と女子高生。一見、真逆の存在だが、香日さん曰く、「資料などを見てもわかるんですが、結構身だしなみなどに気を遣うし、身のこなしも上品な方だったようです。なので案外、ギャップや違和感はなかった」そうだ。キャラデザは、漱石は天然パーマでタレ目なので、璃音はストレートヘアでつり目にするなど、漱石の特徴をキャッチアップして反転させて作り上げた。「とはいえ、璃音の地は漱石なので、顔の造作が違っても漱石の表情をさせる。そういうのがポイントかなと。苦虫を噛みつぶしたような表情をさせたり(笑)」ストーリーは基本的に1話完結。毎回、流行のスイーツを友だちと食べたり、推し話をしたりと、女子あるあるの出来事を軸に展開する。「今回は漱石の作品よりも、談話や評論などをネームに活かしています。実在の人物を元にしているので、絶対ひっくり返してはいけないポイントがあって、その点をどう結ぶか、璃音や彼女の周辺の女の子たちの日常をどう絡めていくか、という点を工夫しました」2巻では、漱石が可愛がっていた若き芥川龍之介とのエピソードなども登場。マジメな文学談義がある一方で、漱石と璃音がオーバーラップすることで醸し出されるコメディパートも楽しい。「漱石は同時代に生きていた人にも後世の人にもすごく影響を与えた、まさに文豪です。私もファンになったことでマンガ家になる人生なんて想定していなかったのになってしまって、メンタルのみならず物理的に人生が変わったんです。あらためてすごい存在だなと思いますね」『JK漱石』2自他ともに認める漱石マニアの香日さん。膨大な資料と深い読解で作り上げた独特の漱石ワールドが、本作でも軽やかに炸裂。今年中に3巻を刊行予定。KADOKAWA682円©香日ゆら/KADOKAWAこうひ・ゆらマンガ家。青森県出身。同人活動で細々と漱石をめぐるマンガを描いていたところ、編集者から声を掛けられ、2009年に商業誌デビュー。※『anan』2024年1月31日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・三浦天紗子(by anan編集部)
2024年01月30日“息が合う”ことの難しさと喜びを描く、吹奏楽青春譚。山本誠志さんによる『宇宙の音楽』をご紹介します。本作のタイトルになっているのは、吹奏楽の超難曲とされる曲。宇宙(たかおき)零はこの曲を聴くと、病室と消毒液の匂いを思い出す。有望視されるトランペット奏者だった彼は、持病のぜん息で夢を阻まれてしまったのだ。「吹奏楽の本質は“息を合わせる”ことですが、それができない主人公にしようと思いました。僕も小さいときに軽いぜん息を経験しているので、感情を込めて描けるかなという思いもあったんです」と、著者の山本誠志さん。零はあえて吹奏楽部がないはずの高校に進学するが、創部したての吹奏楽部と、部長で独特の感性を持つ星野水音(みお)と出会い、彼女の導きで指揮者を志すことに。「音楽はひとりでできると思っていた零が、ほかの奏者がいないと成立しない指揮者になる。その過程を通して、人と共にいる喜びを知る姿を描こうと意識していました」挫折を味わっているものの、音楽の才能に溢れる零は生意気で理屈くさく、社交的なタイプではない。そんな彼が1年生ながら、創部して日が浅いチームを指揮者としてまとめようとしても、もちろんそう簡単にはいかないのだが、それぞれの巻で見せ場となるのが演奏シーン。読み手も呼吸を重ねながらページをめくっていく高揚感を味わえる。「海外では吹奏楽をウィンドバンドと呼んだりするのですが、息が集まって風が吹き抜けるような爽やかさや力強さを表現したかったんです。マンガの大前提として音を出すことができないので、音以外の周辺の部分を丁寧に描くことを心がけていました。それこそ音楽以外の場面で、たとえばマンガを描いていても編集さんと息が合う瞬間があったりするので、そういう感覚も後半のほうでは特に大事にしていましたね」演奏の難しさと喜びが生き生きと表現されているのは、山本さん自身が吹奏楽経験者であることも大きいだろう。本作が連載デビューになるのだが、これまでも一貫して吹奏楽を題材にしたマンガを描いてきた。「『アイシールド21』や『SLAM DUNK』のようなスポーツマンガに対する憧れと、中学で始めた吹奏楽に夢中になる気持ちが重なって、好きなマンガで、好きな吹奏楽を広めたいと思ったのがきっかけです」そんな山本さんにとっても指揮者は未知の部分が多い存在で、チャレンジングな設定だったようだ。「スポーツでいったら監督的な立場なので、高校生だと学生が指揮棒を振ること自体が少ないんです。でも責任が重いぶん、最も成長できるポジションなのかなとも描きながら思ったので、この作品を機に指揮に興味を持つ人が増えたらいいですね」山本誠志『宇宙の音楽』3音楽と孤独に向き合っていた少年が、再び皆で奏でる喜びを味わう青春物語。コンクールを控え練習に励むなか、最大のピンチに遭遇する最終巻を見届けよう。講談社836円©山本誠志/講談社やまもと・まさしマンガ家。「先輩とクラリネット」で月刊少年マガジン新人賞準入選。最新作は「ホルンは後ろに鳴く」。自身もクラリネット奏者。※『anan』2024年1月24日号より。写真・中島慶子インタビュー、文・兵藤育子(by anan編集部)
2024年01月24日