高評価を得たデビュー作! 大正大阪を舞台にした、ホラーミステリー『をんごく』
「私も身の回りの人を亡くした経験があって、私自身はまだちょっと割り切れてないところもあるんです。ただ、作中の壮一郎の苦悩を無駄にしたくなかったので、再生の希望を持つまでの心理的な変化をどう描くかには腐心しました」
その面白さに拍車をかけるのが、〈エリマキ〉の存在だ。特定の顔がなく、だが、見る者の意識が転写された姿が顔となる不思議な生態を持ち、死を自覚していない霊を喰って腹を満たしている。そんなエリマキが壮一郎の相棒として、倭子の霊と対峙し、秘められた謎を追っていく。
「私自身が、エリマキに対して理解しきれていないというか、『あいつ、何なの?』て思ってます(笑)。怪物、化け物、あやかし、妖怪…どの呼び名もしっくりこなくて、〈何か〉としか言いようがないですし。でも赤い襟巻きをしているというイメージだけは最初から強烈に浮かんでいました。小説であっても映像的なところというか、たとえば映画『シャイニング』の双子の出てくる場面のように、読者に忘れがたいインパクトを残すシーンがあるのが理想形だと思っています。
そんな物語をこれからも書いていきたいですね」
『をんごく』影響を受けた作家は江戸川乱歩や澤村伊智だそう。