今の社会で生きていくために必要なことは? 生きる方法を模索する若い男女を描く『K+ICO』
法律や英語を学び、カフカの『城』の朗読を聴きながらウーバーイーツの配達をする男子大学生、K。将来を見据えて颯爽と自転車を漕ぐ彼を描く第一章〈K〉から始まるのが、上田岳弘さんの『K+ICO』(ケープラスイコ)だ。
生きる方法を模索する若い二人。現代のボーイミーツガール物語。
「最初は単発の短編として〈K〉を書きました。散歩中、ウーバーイーツの配達員が転んでいるのを2回ほど見かけたことがあって。前に配達員を見下したととられたある方のSNSの投稿がボヤを起こした出来事と重なり、今の社会の負担が彼らにかかっていると感じました。それで、書くべき対象だと思ったんです」
Kというイニシャルについては、「カフカが小説で描いた不条理な世界と現代社会とが重なる感触があります。
不条理に適応しながら生きている人物を書く際、カフカも主人公の名前によく使っていたKにすると意図が伝わりやすい気がしました」
第二章〈ICO〉は、TikTokで学費と生活費を稼ぐ女子大学生ICOが主人公。配信では顔を隠しているが、身バレの危険を感じ、そろそろ活動をやめようと考えている。
「〈K〉を書いた後、対比すべき人物がいると感じて浮かんだのがICOでした。