映画のカメラワークを思わせる洗練されたコマにも注目! 大横山飴『花の在りか』
自分のパニック障害もあって、症状を抑えるために感情の起伏を抑えたまま描いていた影響もあるかも」
彼ら自身は、ままならなさを抱えながらも、小さな手応えをよすがとして、ほんの少し顔を上げる。そうしたささやかな勇気がこの物語の美点であり、エールになっている。
「自分は弱い人間だと常に思っているのですが、そんな自分から見る他人は、とても強く見えることがあります。でも、足踏みしてもちょっとずつ自分が進みたい方向に進んでいければいいかなと思うし、そういう人たちに寄り添った話が少しでも描けていれば嬉しいです。ドラマの展開で読ませるわけでもなく、いわゆるロングショットで描いている場面も多く、淡々とした人物の表情も強い共感や感動には結びつかず、人と連帯することを重んじた作品ではありません。それでも、この本と出合い、自分なりに共感してくれる読者はいる気がしています」
ちなみに、上下巻を通して読むと、デジャヴというか記憶違いというか、ある種のお遊びが仕掛けられていることに気づくはずだ。「間違い探しみたいなことって、面倒くさいけれど楽しい。どっちが本当なのかわからないのも、間違い探しならではのサスペンス感があるので、楽しんでもらえたら嬉しいです」