美しさの奥に感じるのは、画家の静かな怒り…ジャン=ミッシェル・フォロンの大回顧展
不自由さや孤独という現代の不条理な一面を描くことは、幸福や平和を願う画家自身のヒューマニズムの裏返しかもしれない。
フォロンは600点以上のポスターも残した。それらはいま世界で起きていることを柔らかな色彩を通して語りかける。1点に使われる色数は多くはなく、グラデーションやにじみの技法が駆使されている。海洋核実験反対のポスターや「世界人権宣言」の挿絵など、美しさの奥に感じるのは、画家の静かな怒りだ。厳しい現実から目を背けることなく、多くの人が共鳴できるのは、同じポスターの中に描かれる空、海、地平線の彼方に、平和や自由への希望を感じ取れるからではないだろうか。
生前、空を飛んで風と話してみたいと語っていたというフォロン。タイトルの「空想旅行案内人」は名刺に記載されていた自らの肩書から。
彼と一緒ならどんな空想旅行へ連れていってもらえるだろう。
《無題》
《Lettera 32すべての人にオリベッティを》1967年
《グリーンピース 深い深い問題》1988年
《無題》1968年頃
《月世界旅行》1981年
《秘密》1999年©photograph by Fernandez
空想旅行案内人 ジャン=ミッシェル・フォロン東京ステーションギャラリー東京都千代田区丸の内1‐9‐1開催中~9月23日(月)