俳優の要潤さんがオフィシャルサポーターを務める展覧会、『ボストン美術館展芸術×力』が、7月23日(土)から東京都美術館ではじまります。本展では、古今東西の多彩な作品が集まるほか、「日本にあれば国宝」ともいわれる作品も来日。今回、アートにお詳しい要潤さんに、展覧会の楽しみ方を聞いてきました!要潤さんがオフィシャルサポーター!【女子的アートナビ】vol. 245『ボストン美術館展芸術×力』では、アメリカのボストン美術館が所蔵する古今東西の多彩な美術作品から、エジプトやヨーロッパ、アジアなどで生み出された選りすぐりの作品約60点を紹介。その半数以上が日本初公開となります。本展で特に注目されているのは、日本の作品です。遣唐使・吉備真備の活躍を描いた《吉備大臣入唐絵巻大臣》や《平治物語絵巻三条殿夜討巻》など、日本にあれば国宝レベルの作品も展示されます。展示は5章で構成。「芸術と力」をテーマに、力を見せつけ、維持するために芸術を利用してきた権力者たちと、芸術のもつ役割にも迫ります。なお、本展は一度、2020年に新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止となっていました。2年の期間を経て、いよいよ待望の開催となります。今回、展覧会のオフィシャルサポーターを務める要潤さんにインタビューを実施。楽しみにしている作品や好きなアートなどについて、語っていただきました。要潤さんにインタビュー!増山雪斎 《孔雀図》江戸時代、享和元年(1801)Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld Collection Photograph © Museum of Fine Arts, Boston――まず、今回の展覧会について、どんな印象をおもちですか。要さんボストン美術館は、市民のみなさんの有志で維持されてきた美術館です。日本の作品も多いので、一度は行ってみたいと思っていた美術館のひとつでした。今回、オフィシャルサポーターを務めるという機会をいただき、不思議な縁を感じています。僕自身、いろいろな芸術に触れたり(美術の)番組をさせてもらったりしていますが、ボストン美術館は本当に日本の作品を大切にしているのです。外国の美術館に行くと、外国の作品が主流だと思うのですが、ここまでアジアや日本の作品を大切にしている美術館の姿勢に感銘を受けました。「日本の美をすごく感じる…」《平治物語絵巻三条殿夜討巻》(部分)鎌倉時代、13世紀後半Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld CollectionPhotograph © Museum of Fine Arts, Boston――今回の展覧会で、特に楽しみにしている作品を教えてください。要さんメインのひとつである絵巻です。《平治物語絵巻三条殿夜討巻》が一番見たい作品です。――日本の作品ですね。絵巻とか日本画は、少し難しそうなイメージをもつ人もいるかと思うのですが、要さんはどんな点がお好きなのでしょうか。要さんこのような作品は、社会の授業で習ったりして、断片的に知っているかもしれませんが、身近にはなかなかないと思います。僕たちも、(時代劇などで)役を演じたりすることもありますが、写真があるわけではないですし、当時の人たちに話を聞くこともできない。リアルに感じることができないのです。今回の展覧会のような機会を利用して本物の作品に触れることで、日本の歴史や日本画に対して、日本人としてすごくインスピレーションを感じる部分があるのではないかな、と思っています。伝 狩野永徳 《韃靼人朝貢図屏風》桃山時代、16世紀後半Museum of Fine Arts, Boston, Fenollosa-Weld CollectionPhotograph © Museum of Fine Arts, Boston要さんモネやピカソとか見ると、確かに「わっ、上手」とは思うのですが、異国の文化が全部自分の身に染みて感じられるわけではありません。でも日本画は、日本人の根底にある何かがしっかりと表現されているのを感じられる気がします。色づかいひとつにしても構図にしても、日本の美をすごく感じるので、僕自身は日本画が好きですし、きっとみなさんも理解していただけるのではないかな、と思うのです。「気持ちをぐっとかき回される感じ」――要さんは美術の番組にも出られ、いろいろな美術館を訪れていらっしゃると思いますが、はじめて行かれた美術館やアートに触れた経験を教えていただけますか?要さんはじめて訪れたのは、地元の丸亀市猪熊弦一郎現代美術館です。小学生くらいのときに、家族と行きました。――猪熊さんの作品は現代アートで難解なイメージがありますが、お子さんのときに見られてどうでしたか。要さん当時は「なんだこれ」みたいな感じでしたけれど(笑)、周りの大人たちがすごく楽しそうに見ていたので、「きっとこれはすごいものなのだろうな」という感覚でした。作品を見たときの感想は、気持ちをかきたてられ、ぐっとかき回される感じです。はじめてそういうものに触れる経験をして、衝撃的だったという記憶があります。不思議な感覚でした。――今、お好きなアートや美術館はありますか。要さん現代アートの作家さんで、大巻伸嗣さんの作品は好きで、何点かもっています。好きな美術館は、箱根の彫刻の森美術館です。自然が好きで、自然と彫刻が一体化されているところがいいです。地元である香川県の直島とか瀬戸内海の島々でも、自然の中にぽつんとアートがあります。箱根は、そこの雰囲気とも似ているので、好きですね。――ご自身でも絵を描かれるのですよね。油絵もはじめられたそうですが、どんな絵を描かれているのですか。要さん描くのは風景が多いです。自然が好きなので、どうしても描きたくなります。季節の移ろいとか、今このときにしか見られない風景を自分のなかで探して描いています。――いずれ発表されてはいかがでしょうか。要さんいやいや、お恥ずかしいので(笑)。「僕も楽しみにしています」――最後に、この展覧会を楽しみにしているファンのみなさまにメッセージをお願いします。要さんボストン美術館展が、今年ようやく開催されます。この美術館には、日本の作品がたくさんあり、日本にくると国宝級といわれている作品も数点あります。ぜひ、この機会を見逃さないようにしていただきたいです。僕も楽しみにしていますし、一緒に体感できたらいいなと思います。――いろいろお話いただき、ありがとうございました。インタビューを終えて…要さんのお姿は、まさにアートのように端正で美しく、お話されているときの表情も穏やかで、本当にステキな方でした。質問にも丁寧に、やさしいお声でお話くださるのですが、その内容が深く、特に日本画の楽しみ方については目から鱗で、すごく勉強になりました。本物の「日本の美」をはじめ、多彩な作品に出会える『ボストン美術館展』、どうぞお見逃しなく!展覧会は7月23日開幕。チケットは7月1日発売開始予定で、日時指定予約制です。Information会期:2022年7月23日(土)~10月2日(日)※休室日は月曜日、9月20日(火)※ただし8月22日(月)、29日(月)、9月12日(月)、19日(月・祝)、26日(月)は開室会場:東京都美術館企画展示室開室時間:9:30~17:30※金曜日は20:00まで(入室は閉室の30分前まで)観覧料:※本展は日時指定予約制一般¥2,000、大学生・専門学校生¥1,300、65歳以上¥1,400高校生以下無料(日時指定予約必要)※最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)All photographs © Museum of Fine Arts, Boston衣装ブランド名/カナーリメーカー名/コロネット問い合わせ先/03-5216-6521値段/¥316,800(税込)スタイリスト/今井聖子(Canna)
2022年05月20日ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」のメンバー7人全員が『ボテロ展 ふくよかな魔法』のオープニングイベントに登場!東京・渋谷にあるBunkamura ザ・ミュージアム内で、トークとフォトセッションが行われました。メンバーのコメントと、彼らが好きな作品をご紹介!BE:FIRSTのみなさん、登場!BE:FIRST(左から)LEOさん、SHUNTOさん、JUNONさん、MANATOさん、SOTAさん、RYOKIさん、RYUHEIさん【女子的アートナビ】vol. 243『ボテロ展 ふくよかな魔法』のオフィシャルサポーターをつとめるBE:FIRSTのメンバーが、展示室に登場!LEOさん、SHUNTOさん、JUNONさん、MANATOさん、SOTAさん、RYOKIさん、RYUHEIさんが、作品《コロンビアの聖母》の前に並び、フォトセッションが行われました。この展覧会では、南米コロンビア出身の美術家、フェルナンド・ボテロ(1932~)さんの作品を展示。初期から近年までの油彩や水彩、素描作品など全70点を楽しめます。ボテロさんは、現代を代表する美術家のひとり。1950年代後半から欧米で高く評価され、世界各地で展覧会が開かれています。彼の作品の特徴は、あらゆるかたちがふくらんでいる、という点。人だけでなく、植物や果物、楽器や日用品でさえもふくらんでいます。2022年は、ボテロさんが生誕90年を迎えた節目の年。本人が監修したこの展覧会は、彼の作品をまとめて見られる貴重なチャンスです。ボテロ愛あふれるトーク!ボテロ展の開幕に合わせて開かれた取材会では、BE:FIRSTのみなさんがオフィシャルサポーターとしての意気込みや、展覧会の楽しみ方を語ってくれました。まずは、メンバー全員のコメントを一挙にご紹介!LEOさんこんなステキな絵のオフィシャルサポーターを、デビューして間もない僕たちができるのはすごくうれしく思います。たくさんの人の愛を受けて、この場所に立てることを感謝していますし、誇りに思っています。SHUNTOさんこの機会をいただき、ありがたいと思っています。老若男女問わず、いろいろな目線やその人なりの解釈で絵をご覧になれると思います。すごい魅力がつまった絵画ばかりです!JUNONさん今日、はじめてボテロ展を見て、オフィシャルサポーターになれたことを誇りに思いますし、改めて自信をもって僕たちもみなさんにおすすめしたいと思いました。MANATOさん僕は、もともと美術館に来たことがほかのメンバーよりも少ないと思うのですけど、今回、いろいろな絵に興味をもちました。絵は、音楽とけっこう近い。表現するのが、絵と音楽という違いだけだったので、僕たちが刺激をもらえることが多かったし、勉強になりました。SOTAさん今日までオフィシャルサポーターとして意気込んで、がんばってきました。音声ガイドや映像撮影、僕たちだからこそ感じるボテロ展の魅力を精一杯伝えてきました。それがみなさんに届いて、少しでもここに来たいとか、興味をもつ人が増えたらうれしいなと思いました。RYOKIさん個人的に美術館や展覧会はすごく好きなのですが、ここ数年は忙しくてあまり行く機会がありませんでした。今回、久々に来させていただき、この独特の空間、すごく好きだなと感じました。絵と見つめ合い、ボテロさんはどういう思いでこの絵を描いたのかとか、説明文を読んで妄想し、自分の時間をつくれる場所だなと思いました。忙しければ忙しいほどリフレッシュできるし、自分を見つめ直せる時間になる。ぜひ、お越しいただきたいです。RYUHEIさんボテロさんが長年描いてきた歴史、すべてがこの展覧会につまっています。音声ガイドでは、絵の魅力を正確に説明するためにすごく丁寧にゆっくり話すよう意識しました。今回、美術館に来て、絵の魅力を感じたので、みなさんにもぜひ来てほしいです。「みんなで決めた絵がある」――続いて、展覧会で印象に残った作品について、LEOさんとRYUHEIさんがコメントしました。LEOさんみんなで、「これがいい」と決めた絵があるんです。RYUHEIさん《楽器》というタイトルの作品で、楽器がたくさん机の上に置いてある静物画です。それが、メンバーのなかで「いいんじゃないかな」となって、決めました。楽器は音楽とも関係があり、僕たち全員が音楽をするグループとして関係性がすごく深いと思い、この作品を選ばせていただきました。「自分たちができる芸術は音楽」――さらに、『ボテロ展』で影響を受けた点について、JUNONさんとRYOKIさん、SOTAさんのコメントをご紹介。JUNONさん芸術を見ると、自分たちができる最大限の芸術は音楽なので、改めて音楽でやっていきたいと思いました。RYOKIさんボテロさんの作品は、もともとの絵があり、それをオマージュしてボテロさん風にアレンジしている作品がけっこうあります。元の絵も、ものすごく芸術性の高い絵です。僕たちも、本物の良いエンターテインメントを見て、それで刺激を受け、良いところを吸収して、自分たちなりにBE:FIRST色にして、みなさんに届ける。これも、やはりアートのひとつで、昔から続いているものだと感じました。そこからニュージェネレーションとか、新しいエンターテインメントが派生していく。僕たちも、その影響のひとつになれればいいと思っています。SOTAさん僕は昔、授業でボテロさんの絵に触れたことがありました。ボテロさんの絵は、人だけでなく、楽器や果物を描いても唯一無二の作品に仕上がります。僕たちも、アーティストとして、自分たちにしか出せない声やダンスを追求していますし、そうすることのすばらしさを改めて感じました。収録時のほっこりエピソード――最後に、音声ガイド収録時のエピソードについて、LEOさんとRYOKIさんのトークをご紹介。LEOさん俳優業もやっているRYOKIのナレーションが、すごく上手で勉強になった。噛まないし、声を聴いているだけでちゃんと心に入ってくるんです。メンバー同士で刺激をもらいながら、新たな発見もしながら楽しくできました。RYOKIさん(LEOさんのコメントに対して)素直に、すごくうれしいですね。ブースに入るときにプレッシャーがありました。噛んだらみんなに昼ご飯おごる、と自分で言ったので(笑)。でも、ほかのみんなも声のトーンがよくて。みんなすごく上手。みんな良かった。LEOさんでも、みんなは噛みました(笑)。RYOKIはすごくて、和やかなムードをRYOKIがつくってくれました。音声ガイドを聴いてみた!BE:FIRSTのみなさんのコメント、いかがでしたか?本当にみなさんの仲が良くて、和気あいあいと話をしていました。今回の取材会でも話題になっていた音声ガイド、どんな内容か気になりますよね。実際に、展覧会の会場で聴いてみました!BE:FIRSTのみなさんはプロローグから登場し、スペシャルトラックでは、好きな作品や絵の感想を楽しそうに語っていました。このガイドでしか聴けない貴重なネタもあります。ぜひ音声ガイドを片手に、展覧会を楽しんでみてください!Information会期:~7月3日(日)※5月17日(火)休館会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)※毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)※金・土の夜間開館については、状況により変更の可能性があります。※会期中すべての土日祝は【オンラインによる入場日時予約】が必要となります。観覧料:一般¥1,800、大学・高校生¥1,100、中学生・小学生¥800※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年05月17日ナンセンスでファンタジーな、あの漫画の世界を体感!『コジコジ万博』をご紹介します。さくらももこの漫画『コジコジ』は、宇宙生命体である主人公コジコジと、メルヘンの国の住人たちが繰り広げる日常を描いたナンセンスなギャグ作品。学校でのテストはいつも0点(時にはマイナスも)、空気を読んだり、忖度なども一切なし。向上心はない、悩まない、反省もしない。その一瞬一瞬を楽しく生きるおバカキャラクターのコジコジだけど、「遊んで食べて寝てるだけだよなんで悪いの?」「コジコジはコジコジだよ、生まれた時からずーっと。将来も」など、誰もがふと考えさせられる含蓄ある言葉や、メルヘンの国に広がるファンタジーの物語から、普遍性を感じられる名作だ。その作品の世界観を実世界で体感できる展覧会『コジコジ万博』が始まった。本展ではコジコジたちが暮らすメルヘンの国を再現したインスタレーションをはじめ、漫画やイラストの原画、オリジナル映像を通じて、個性的なキャラクターや名言、名場面を紹介。さくらももこが手がけた原画130点もが一堂に集結する。会場内は、にぎやかな万博をイメージ。巨大なコジコジが名言やギャグをしゃべる「ギャグ50連発」や名場面の原画を絵巻物のように展示する「原画で読む名場面8」、キャラクターたちが抱える心のモヤモヤで埋め尽くされたうず巻き状の廊下「モヤモヤトンネル」など、奇妙なパビリオン(展示)を巡りながら、コジコジや仲間たちと出会い、お話の奥深くへと入り込んでいく構成に。ラストには、テレビアニメのエンディング映像に入り込めるインスタレーションがお待ちかね。電気グルーヴの楽曲「ポケットカウボーイ」に合わせて、ミラーボールが輝くディスコ空間で盛り上がろう!なんて趣向も。また、アニメ制作スタジオ「ドワーフ」が本展のために制作したキュートなコマ撮りアニメーションや、漫画「ちびまる子ちゃん」のまる子とコジコジの交流紹介なども必見のコーナーだ。友情や恋、自分探しなど、仲間たちの悩みも、気ままなコジコジが笑いへと変えてゆく摩訶不思議な世界観。原作を知らない人も、この機会にまずは展覧会でぜひ体感してみて。漫画ではモノクロで描かれているメルヘンの国をカラーで楽しめる。《コジコジの住んでるメルヘンの国の全景》原画 漫画『コジコジ』第1話 コジコジはコジコジの巻 見開きイラスト、1994年12月号より ©さくらももこコジコジの名言も原画で見ると迫力あり。集英社りぼんマスコットコミックス新装再編版「コジコジ」1巻より ©さくらももこNHKキャラクター「どーもくん」などで知られるアニメ制作スタジオ「ドワーフ」によるかわいい仕草の新作コマ撮りアニメ「コジコジと次郎の不毛な会話」も上映。「コジコジと次郎の不毛な会話」©さくらももこ/dwarfCV:あおきさやか(コジコジ役)、高乃麗(次郎役)メルヘンの国の境界を越えやってくるちびまる子ちゃん。コジコジとまる子は旧知の仲。漫画『コジコジ』第29話 まるちゃん達がやってきたの巻 扉絵 原画1997年 ©さくらももこコジコジとは…さくらももこ作の計38話の漫画。1994年から『きみとぼく』(ソニー・マガジンズ)、『富士山』(新潮社)、『りぼん』(集英社)に掲載。アニメ(TBS)は脚本もさくらももこが手がけ、’97~’99年にかけて、全101話が放送された。『コジコジ万博』PLAY! MUSEUM東京都立川市緑町3‐1GREEN SPRINGS W3‐2F開催中~7月10日(日)10時~18時会期中無休一般1500円ほか※1時間毎の日時指定制を導入TEL:042・518・9625※『anan』2022年5月18日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2022年05月16日おなじみ“謎の微笑み”をうかべる膨らんだ風船みたいにふくよかな「モナ・リザ」。日本で26年ぶりの開催となるフェルナンド・ボテロの展覧会『ボテロ展 ふくよかな魔法』で世界に先駆けて公開される最新作《モナ・リザの横顔》だ。今、最も愛される画家の一人であるボテロの名を知らしめたのは1963年のNYで起きたある事件。メトロポリタン美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》が展示されたとき、ニューヨーク近代美術館ではボテロの《12歳のモナ・リザ》(※今回の出品はなし)を展示。新たなモナ・リザ像の登場は大きなインパクトを与え、以来、西洋美術史上の名画を独自の様式でデフォルメする作品は彼のライフワークに。〈芸術を通して伝えることができるふくよかさ、包容力、官能性が好きだ。現実はドライだから〉という自身の言葉が物語るように、ボテロの描くモチーフは人物も花も動物もはち切れそうに膨らんでいる。まるで世界のすべてが「ふくよかであること」を自らに許したかのように。故郷のラテンアメリカ、信仰、サーカスなどをテーマにした作品は、おおらかでユーモラスながら“ふくよかではない”実際の世界への風刺としても響いてくる。今、私たちの現実があまりに痩せ細り、幸せを感じられないのだとしたら。彼の絵筆がふりまく「ふくよかな魔法」にちょっぴりかかってみたくなる。フェルナンド・ボテロ《モナ・リザの横顔》2020年油彩/カンヴァス136×100cmフェルナンド・ボテロ《守護天使》2015年油彩/カンヴァス130×101cmフェルナンド・ボテロ《象》2007年油彩/カンヴァス112×84cm『ボテロ展 ふくよかな魔法』Bunkamura ザ・ミュージアム東京都渋谷区道玄坂2‐24‐1‐B1東急百貨店本店横開催中~7月3日(日)10時~18時(金・土曜~21時。入館は各閉館時間の30分前まで)5/17休一般1800円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※会期中、すべての土・日・祝日はオンラインによる入館日時予約が必要。公式ウェブサイトを参照。※『anan』2022年5月18日号より。文・松本あかね(by anan編集部)
2022年05月15日東京都美術館で『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』が開催中です。本展では、世界最高峰の美術館のひとつ、スコットランド国立美術館から上質な西洋絵画が集結。展示の様子や学芸員さんの解説、おすすめ作品をご紹介します!巨匠たちの作品に会える!【女子的アートナビ】vol. 244『スコットランド国立美術館THE GREATS美の巨匠たち』では、スコットランドが誇る美術品のなかから、ラファエロやレンブラント、ルノワールなど、巨匠たちの作品や、ターナーやミレイなどイングランド出身の画家たちの作品なども含め、約90点が集結。西洋美術の流れを名画とともに楽しめます。スコットランド国立美術館が開館したのは、1859年。ヨーロッパの他国のように、王室コレクションからスタートした美術館ではなく、購入や地元の名士たちによる寄贈や寄託などによってコレクションを増やしていき、世界有数の美術館となりました。本展では、コレクションのエピソードを楽しめる作品も見ることができます。あだ名が有名!では、おすすめ作品を数点ピックアップしていきます。まずは、第1章「ルネサンス」から、巨匠エル・グレコの《祝福するキリスト(「世界の救い主)」》にフォーカス。イタリアやスペインで活躍したエル・グレコは、ギリシャ出身の画家。本名は、ドメニコス・テオトコプーロスですが、あだ名のエル・グレコ(ギリシャ人)として知られています。故郷のクレタ島で美術の修業をし、その後ヴェネツィアに移住、さらにローマでも働き、最後はスペインに永住しました。本作は、表現力豊かな筆遣いと、赤と青のコントラストが目を引く美しい作品です。学芸員さんのおすすめは…?続いて、第2章「バロック」では、スペインの画家、ディエゴ・ベラスケスの描いた《卵を料理する老婆》をご紹介。ベラスケスは、国王フェリペ4世付きの画家に任命され、「画家の中の画家」と呼ばれた巨匠。国王に信頼され、王室の肖像画を数多く描いたほか、王宮配室長も任されるほど出世した人です。本展担当の東京都美術館学芸員・髙城靖之さんによると、この作品は、ベラスケスがまだ若いころに、自分の力量を知らしめるために描いた野心作。本作の注目ポイントについて、次のように語っています。髙城さん作品の手前には静物を描いている部分があり、金属などの質感をたくみに描き分けています。なかでも一番の注目ポイントは、調理中の卵。素揚げにしているところですが、白身が固まっている最中のものと、すでに固まっている状態のものとがきちんと描き分けられています。卵が固まっていく様子を絵画で見事に表現しているので、ぜひご覧になってみてください。7度も夫を殺された…!?もう一点、バロック絵画で筆者のおすすめ作品をご紹介。オランダ絵画の黄金期に活躍した巨匠、レンブラント・ファン・レインの《ベッドの中の女性》です。一見すると、ふつうに美しい絵画ですが、解説を読んで作品の背景を知ると、あまりに残酷なストーリーに驚愕します。本作品の女性は、聖書の登場人物であるサラと考えられています。彼女は、過去7度も結婚初夜に夫を悪魔に殺されており、この絵は、8人目の夫が悪魔を追い払うところをサラが見守っている場面。この絵を見て、聖書の物語を読み解ける教養や見識が鑑賞者に求められているそうです。絵の背景にあるストーリーを知ると、作品の見え方ががらりと変わります。絵は表面的な美しさだけを見ても十分満足できますが、解説を読むとさらに別の楽しみ方もできます。スコットランド人の故郷愛が伝わる…!最後は、スコットランド国立美術館のステキなエピソードがある絵画をご紹介。本作品は、アメリカの風景画家フレデリック・エドウィン・チャーチの作品です。なぜ、アメリカ絵画が最後に展示されているのでしょう?髙城さんによると、この絵は、スコットランドの貧しい家庭に生まれた人がアメリカに移住し、実業家として成功したあと故郷に寄贈した作品。スコットランド国立美術館は、市民らの寄付などによりコレクションを増やしていった美術館なので、その象徴として最後にこの作品を展示したそうです。巨匠たちの競演を楽しんで!巨匠たちの名画、いかがでしたか?本展は7月3日まで開催。幅広い西洋美術の名品を、まとめて見られる貴重なチャンスです。ぜひ美術館で楽しんでみてくださいね!Information会期:~7月3日(日)※休室日は月曜日会場:東京都美術館企画展示室開室時間:9:30~17:30(入室は閉室の30分前まで)※金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)※夜間開室については、展覧会公式サイトでご確認ください。観覧料:※本展は日時指定予約制一般¥1,900、大学生・専門学校生¥1,300、65歳以上¥1,400高校生以下無料(日時指定予約必要)※最新情報は展覧会公式サイトでご確認ください問い合わせ:050-5541-8600(ハローダイヤル)
2022年05月14日東京国立博物館で特別展『琉球』が開催中です。この展覧会では、金銀や水晶などで飾られた色鮮やかな国宝の冠をはじめ、キラキラ美しいガラス玉の瓶や、神々しい「神猫図」など、貴重なアートや資料が一堂に集結。琉球の歴史と文化を体感できる展示の様子や、おもな見どころをご紹介します!琉球の歴史と文化を体感!【女子的アートナビ】vol. 242沖縄復帰50年記念特別展『琉球』では、琉球王国として独自の歴史と文化をもつ沖縄ゆかりの文化財を過去最大規模で展示。琉球国王尚家400年の貴重な宝物をはじめ、工芸作品や考古遺物、歴史資料など、さまざまな品を見ることができます。さらに、琉球の美と技を今に伝える模造復元作品も展示されています。明治以降、多くの困難を乗り越えてきた琉球・沖縄。その歴史や文化をさまざまな作品で知ることができる展覧会です。研究員さんのおすすめ作品!では、いくつか見どころをピックアップしていきます。まずは、東京国立博物館の研究員さんによるおすすめ作品をご紹介。東洋工芸がご専門の三笠景子さんのおすすめ作品は、重要文化財にもなっている《首里城京の内跡出土陶磁器》です。「京の内」とは、首里城内でもっとも大きな祭祀儀礼の場所。そこから出土した陶磁器は、中国の有名な景徳鎮窯でつくられたもので、ほかの日本の地域では見られないものばかり。かなり貴重な優品とのことです。東洋絵画がご専門の植松瑞希さんのおすすめは、《虎図》。まんまるまなこにふさふさ眉、やわらかそうな足など、愛嬌のある姿が琉球の虎の特徴だそうです。注目ポイントは、寅の額に描かれた「つむじ」。写真ではわからないと思いますので、ぜひ現地で見つけてみてください。ちなみに、筆者が個人的におすすめしたいのは、《虎図》の近くにある《神猫図》。ふさふさした黒い尾をもつ白猫の絵です。神々しいネコさまのお姿に魅入られます!キラキラ&ゴージャス!次にピックアップするのは、キラキラしたまばゆい作品2点。まずは、国宝の《玉冠》(展示は5月15日まで)。国王の正装として用いられたもので、金、銀、珊瑚、水晶、碧玉など計7種類の玉が合計288個もついています。まさにキラキラ&ゴージャス。本作品が飾られている展示室には、ほかにも琉球国王の尚家に伝来した多くの宝物がずらりと並び、すべて国宝に指定されています。これらは、戦前に東京へ移されていたため戦禍を免れたそうです。もうひとつ、美しくまばゆい作品《御玉貫》をご紹介。錫の瓶に、ガラス小玉を麻糸でつづった覆いをかぶせた琉球独特の酒器で、首里城内で行われる祭儀や贈答品として用いられたものです。色彩が本当に鮮やかで、うっとりします。未来への希望を感じるアート最後は、歴史と希望を感じる作品にフォーカス。展示室のなかでもひときわ目立つ彫刻《大龍柱(旧首里城正殿前)》は、戦前、首里城正殿前に設置されていた柱です。本来は、下の部分にとぐろを巻いた姿があったそうですが、沖縄戦で胴体のなかほどから下は失われました。この柱が製作されたのは、1711年と推測されています。「未来へ」と題した最終章では、1992年の首里城再建や、琉球文化の復興と継承のための人々の地道な研究や取り組みを紹介。仁王像や工芸品、衣裳などの模造復元を見ることができます。コラボ企画も!今回ご紹介した作品のほかにも、貴重な衣裳や歴史資料、先史文化を知ることができる土器など多彩な展示品があります。また、沖縄ゆかりの国宝の刀剣と『刀剣乱舞-ONLINE-』とのコラボ企画があったり、サンリオキャラクターズとのコラボグッズがあったりと、さまざまな角度から楽しめます。ぜひ一度、足を運んでみてくださいね。Information会期:~6月26日(日)※休館日は月曜日会場:東京国立博物館平成館開室時間:9時30分~17時00分(入館は閉館の30分前まで)観覧料:一般¥2,100、大学生¥1,300、高校生¥900※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年05月13日都内の主要なアートスポットと国内外の人々を、「アートバス」と呼ばれる無料のシャトルバスで結びつける「アートウィーク東京」が、11月3日(木)~6日(日)の4日間にかけて開催されることが決定した。「アートウィーク東京」とは、一般社団法人コンテンポラリーアートプラットホーム主催で、日本の現代アートの創造性と多様性、またそのコミュニティーを国内外に紹介する年に一度のアートイベント。2021年11月4日から7日にかけて行った初開催は、美術館、ギャラリー、アートスペースなど都内50ヶ所のアート施設が参加し、2万人を超える来場者数を記録した。今年は日本で初めて、世界最高峰のアートフェア「アートバーゼル」と提携し、国際発信だけでなく国内アート市場の活性化も目指す。さらに、アートウィーク東京モビールプロジェクトは、文化庁の助成を受け、東京都とアートウィーク東京モビールプロジェクト実行委員会が主催し、主要なアートスポットを繋ぐ無料のシャトルバス「アートウィーク東京」を運行。車内での特別なアートプロジェクトも展開する。昨年は、「アーティゾン美術館」、「東京国立近代美術館」、「東京都写真美術館」、「森美術館」、「ワタリウム美術館」と、「東京オペラシティ アートギャラリー」の6つの美術館とインスティテューションがシャトルバスの主要中継地となり、都内各エリアで現代アートを体験する入り口としての重要な役割を果たした。今年はさらに、「国立新美術館」、「東京都現代美術館」、「東京都庭園美術館」、「銀座メゾンエルメス フォーラム」、「資生堂ギャラリー」の5つが加わり、合計11施設に拡大。また、現代アートの魅力をもっと知りたいという人々に向けて、昨年度も好評だったオンライントーク・プログラムを実施する。また、アートギャラリーも老舗から若手まで多様な現代アートを扱う計41軒が参加。1950年創業の老舗「東京画廊+BTAP」、90年代から東京の現代アートシーンの形成に貢献してきた「オオタファインアーツ」、「ギャラリー小柳」、「スカイザバスハウス」、「タカ・イシイギャラリー」、2000年代に台頭してきた「Take Ninagawa」、「MISAKO & ROSEN」、「無人島プロダクション」などのほか、海外に拠点をもつ「Blum & Poe」や「ペロタン東京」らが並ぶ。さらに、本年度は、「KANA KAWANISHI GALLERY」、「KOTARO NUKAGA」、「Fig.」、「LEESAYA」などの新進ギャラリーが参加するほか、日本を代表するアーティストの村上隆が率いる「カイカイキキギャラリー」や、写真専門のギャラリーとしての確固たる地位を築いた「PGI」など、いずれも東京のアートシーンを形成する重要なギャラリーが揃った。さらに、昨年は4つのルートを設けそれぞれ15分間隔でシャトルバスを運行したが、本年度は6ルートに増やし、さらに多くのアートスポットを巡る。新しく、誰でも自由にダウンロードできる無料の「アートウィーク東京」専用アプリが登場。シャトルバスの運行状況の確認のほか、ルートマップや会場案内を調べることが可能となり、鑑賞者を新しいアートアクティビティの体験に導く。【コメント】■アートバーゼルディレクター・アジア:アデリン・ウーイ東京が誇るアートとカルチャーの豊かな土壌の更なる発展に貢献するアートウィーク東京の開催に再び協力することができて嬉しく思います。アートウィーク東京への支援の継続は、東京のアートコミュニティーに対する敬意の表れであり、成長を続けるアジアのアートシーンの発展に長期的に貢献してきたアートバーゼルの理念を反映するものです。■アートウィーク東京ディレクター:蜷川敦子アートウィーク東京は、東京のアートシーンの創造性や多様性を体験する国際的なアートイベントです。東京を代表する美術館やギャラリーの積極的な関わりや、行政の全面的な支援には、東京のアートコミュニティー全体が、健全なアートシステムの構築を望み、より多くの人々が現代アートを身近に体験できる環境を整えたいと願う切実な決意が表れています。豊富な経験や専門知識をもつアートバーゼルをパートナーに、アジアおよび世界における現代アートの都市として、東京の存在を確立したいと考えています。【開催概要】「アートウィーク東京」会期:2022年11月3日(木)~11月6日(日)会場:都内52軒の美術館/インスティテューションとギャラリー/AWTインフォメーションセンター主催: 一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォーム提携:Art Basel(アートバーゼル)参加美術館等:都内11施設参加ギャラリー:都内41ギャラリー<料金>※ギャラリー41軒と銀座メゾンエルメス フォーラム、資生堂ギャラリーは入場無料。その他美術館9館は「アートウィーク東京」の割引価格適用※一般チケットは無料でダウンロードできる「アートウィーク東京」専用アプリのみ (アプリのリリースは9月予定)※VIPイベント参加者向けの有料パスは9月以降に公式ウェブサイトからご購入いただけます<アートウィーク東京(モビールプロジェクト)>名称:アートウィーク東京(モビールプロジェクト)主催:東京都/アートウィーク東京モビールプロジェクト実行委員会助成:文化庁問い合わせ:info@artweektokyo.com公式URL: (プログラムの詳細は6月発表予定)Facebook: : : <2022年度「アートウィーク東京」参加施設(計52軒)>■美術館/インスティテューション(計11軒)アーティゾン美術館/銀座メゾンエルメス フォーラム/資生堂ギャラリー/国立新美術館/東京オペラシティ アートギャラリー/東京国立近代美術館/東京都現代美術館/東京都写真美術館/東京都庭園美術館/森美術館/ワタリウム美術館■ギャラリー(計41軒)Gallery 38/WAITINGROOM/XYZ collective/MEM/オオタファインアーツ/カイカイキキギャラリー/KANA KAWANISHI GALLERY/カヨコユウキ/KEN NAKAHASHI/KOSAKU KANECHIKA/KOTARO NUKAGA/ギャラリー小柳/ギャラリーサイド2/Satoko Oe Contemporary/スカイザバスハウス/SNOW Contemporary/タカ・イシイギャラリー/タグチファインアート/タクロウソメヤコンテンポラリーアート/Take Ninagawa/TALION GALLERY/TARO NASU/東京画廊+BTAP/NANZUKA UNDERGROUND/日動コンテンポラリーアート/ハギワラプロジェクツ/PGI/ファーガス・マカフリー 東京/Fig./Blum & Poe/ペロタン東京/POETIC SCAPE/Maki Fine Arts/MAHO KUBOTA GALLERY/MISAKO & ROSEN/MISA SHIN GALLERY/ミヅマアートギャラリー/無人島プロダクション/Yutaka Kikutake Gallery/ユミコチバアソシエイツ/LEESAYA
2022年05月10日『アイアンマン』『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』『ブラック・ウィドウ』など、スーパーパワーを持つヒーローたちが、時に葛藤を抱えながらも人類の脅威と戦う姿を描いたMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)と呼ばれる映画やドラマのシリーズは、現在32作品。なかでもカギとなるのが、最強ヒーローたちによって結成されたチーム“アベンジャーズ”。その世界観に浸れる「アベンジャーズ展」が、現在開催中。アベンジャーズの世界観を、体験しながら楽しもう!アベンジャーズのトレーニング施設に参加して、“S.T.A.T.I.O.N.エージェント”という諜報員になるプロセスが楽しめるというこの企画展。キャプテン・アメリカが超人血清により、どのような能力を得たのかを明かす極秘ファイルや、感情が高まると超人ハルクに変身するブルース・バナー博士のラボを探索し、ハルクの脳内を見ることができるなど、ファンにとっては興味深いものばかり。また、アイアンマンのアーマーや、キャプテン・アメリカのヘルメット、ブラック・ウィドウやソーのスーツなど、映画で実際に使用された衣装や小物の展示もあるなど、貴重な機会といえる。この企画展は2014年に始まり、ニューヨークやパリ、ロンドンなど世界24都市での巡回を経て、ついに日本に初上陸。よりアップグレードし、世界初公開となる展示もラインナップ。アベンジャーズの頭脳や最先端技術に触れ、ヒーローはもちろん、ヴィラン(悪役)をより知ることができる。Tシャツやキャラクターのトレーディングアクリルスタンドなど、オリジナルグッズの販売もあるので、記念にぜひ。キャプテン・アメリカの秘密に迫るゾーンアベンジャーズの中でも代表的なキャラクターであるキャプテン・アメリカ。そのスーパーパワーの秘密が明らかに!?フォトスポットでは、キャップの武器としておなじみのシールド(盾)と一緒に写真が撮れる。ブラックパンサーのマスク心優しき国王でありヒーローでもあるブラックパンサーの、マスクやスーツが展示。資料とともにワカンダ王国やその民、技術について明かされる。ソーのムジョルニアに触れるフォトスポット作中で、心が清い人のみ持ち上げられるとされているマイティ・ソーのハンマーの展示も。ハルクバスターとアイアンマンの迫力等身大アーマーアイアンマンのスーツは、ハルクに対抗するために作られたハルクバスターなど、さまざまなタイプの展示あり。アベンジャーズ展森アーツセンターギャラリー東京都港区六本木6‐10‐1六本木ヒルズ森タワー52F開催中~6月19日(日)10時~20時(入館は19時30分まで)無休一般2500 円ほかTEL:050・5542・8600(ハローダイヤル)※『anan』2022年5月4‐11日合併号より。文・保手濱奈美(by anan編集部)
2022年05月03日東京・六本木のサントリー美術館で『大英博物館北斎』がはじまりました。本展では、大英博物館が所蔵するクオリティの高い北斎作品が集結。さらに、北斎を愛したイギリスのコレクターたち6名にもフォーカス。アートの目利きである彼らが絶賛&狂喜した、日本人が気づいていない“北斎のスゴさ”もご紹介!イギリスでも大人気…スゴい北斎!【女子的アートナビ】vol. 240『大英博物館北斎―国内の肉筆画の名品とともに―』では、大英博物館が所蔵する北斎作品を中心に、国内にある肉筆画も展示。イギリス人コレクターたちの“北斎愛”にも触れながら、彼の画業、特に数多くの代表作が生み出された後半生の作品群を一覧できます。葛飾北斎(1760-1849)は、江戸時代後期に活躍した浮世絵師。彼の作品は、日本だけでなく世界でも有名で、例えばモネやドガなどフランス印象派の画家たちや、ゴッホにも影響を与えています。フランスで人気があったというイメージが強い北斎ですが、実はイギリスでも大人気。すでに1870年代から北斎コレクターや研究者がいて、特に大英博物館には多くの作品が所蔵されています。本展のプレス説明会では、アルフレッド・ハフト氏(大英博物館アジア部日本セクション学芸員)のビデオメッセージが流れ、100年以上前に大英博物館の学芸員だったローレンス・ビニョン(1869-1943)の言葉が紹介されました。とても印象的でしたので、以下に抜粋します。「1908年、ローレンス・ビニョンは、北斎の風景画を見たときの体験を『美と驚きがひとつになった衝撃』と表現し、『世界は我々の想像を上回る驚きに満ち、我々を狂喜させる力の源であることを北斎は明らかにした。それは、これから我々自身で発見していくことができるものでもあるのだ』と語っています」これほどの衝撃をイギリス人に与えていた北斎、すごいです!「芸術家として北斎こそ正真正銘の日本人」では、展覧会のおもな見どころをご紹介していきます。第1章「画壇の登場から還暦」では、貴重な初期作から還暦近くの年齢で描いた作品が登場。ここでの見どころは、北斎が直接筆をとった「肉筆画」の名品《為朝図》。曲亭馬琴の読本『椿説弓張月(ちんせつ ゆみはりづき)』の主人公・源為朝を描いたもので、絵のなかには作者馬琴の祝詞も書かれています。本作品を購入したのは、イギリスの医師、ウィリアム・アンダーソン(1842-1900)。彼は解剖学と外科の教授として明治期に来日し、東京の海軍軍医学校の校長を務めました。さまざまな美術品も入手し、そのうち約2100点が大英博物館の所蔵品になっています。また、アンダーソンは、日本美術についての本も執筆。著書の中で、「芸術家として北斎こそが正真正銘の日本人」と絶賛しています。代表作が次々と…!第2章「富士と大波」では、《富嶽百景》や《冨嶽三十六景》シリーズの作品群などを紹介。大波が印象的な北斎の代表作《冨嶽三十六景神奈川沖浪裏》や、「赤富士」として親しまれている《冨嶽三十六景凱風快晴》もここで見ることができます。また、第4章「想像の世界」では、偉大な歌人や詩に読まれた景色、さらに目に見えない妖怪を描いた作品などが登場。不気味な見た目でも、どこかユーモラスさが感じられる人気作品《百物語こはだ小平二》も展示されています。「これが一人の画家の作品だとは信じがたい」最後の第6章「神の領域―肉筆画の名品―」では、晩年に描かれた肉筆画が登場。特に、88歳のときの作品《流水に鴨図》は必見です。2羽の鴨と水面に落ちた紅葉が描かれた作品で、鴨の描写が本当に細かいのです!近くで見ると、その精緻な美しさに圧倒されます。あの時代の88歳、大家の北斎先生でも老眼になっていると思いますし、集中力や持続力も若いころに比べれば低下しているはず。でも、線のブレもムラもなく、まさに“神の領域”に達した作品です。本作品を所蔵していたのは、イギリスの小説家アーサー・モリソン(1863-1945)。彼は2000以上の浮世絵版画を入手したほか、日本絵画も約600点購入。また、日本美術の研究書も出版し、その中で北斎について「複数の優れた絵師による作品でなく、すべて北斎一人によるものだということが、実に信じがたい」と語っています。究極の“推し活”展覧会本展では、北斎の名品を堪能できるだけでなく、日本美術好き・北斎大好きイギリス人コレクターたちによる究極の“推し活”も楽しめます。彼らが書いた北斎の推しポイントを読むと、今まで気づかなかった作品の魅力も発見でき、改めて北斎の偉大さを実感しました。100年以上前に北斎担当のファンたちが熱心に集めたコレクションを、現代の日本人が見るなんて、考えてみたらステキなこと。推し活をしていたコレクターたちも、きっと喜んでいると思います。究極の“推し活”展覧会、ぜひ足を運んでみてください!Information会期:~6月12日(日)※会期中展示替を行います。※会期は変更の場合があります。休館日:火曜日(5月3日、6月7日は開館)会場:サントリー美術館開室時間:10時~18時※金・土および4月28日(木)、5月2日(月)~4日(水・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,700、大学・高校生¥1,200、中学生以下無料※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年04月30日東京駅丸の内駅舎内にある東京ステーションギャラリーで、『牧歌礼讃 / 楽園憧憬アンドレ・ボーシャン + 藤田龍児』がはじまりました。本展では、ヨーロッパと日本で活躍した2名の画家の作品を展示。どちらの絵画も、癒される雰囲気のものばかりですが、彼らは破産や半身不随など過酷な人生を送っていました。両画家と作品について、館長の解説もあわせてご紹介します。どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 241本展では、アンドレ・ボーシャン(1873-1958)と藤田龍児(1928-2002)の代表作を含む計114点を展示。ボーシャンは20世紀前半のフランス、藤田は20世紀後半の日本で活躍した画家。生きた時代も国も異なる二人ですが、彼らの作品には楽園のような明るい光と自然への愛情があふれています。この展覧会を企画したのは、東京ステーションギャラリー館長の冨田章さん。冨田さんは、「二人の作品は、いつか紹介したいと思っていた」といい、両者の作品を一緒に展示した理由について、次のように語りました。冨田さん二人には意外な共通点が3つあります。まずは、モチーフ。どちらも自然を描き、自然に対する愛着が感じられます。2つ目は、両者とも50歳頃を境に新しい画家人生をはじめた点。3つ目は、それぞれがノスタルジックで心が休まる絵なのに、どちらも厳しい暮らしをしていたという点。過酷な状況で、安らぎに満ちた絵を描くのはどういうことなのか、いろいろ考えさせられます。半身不随を乗り越えて…ーーでは、二人の画家の経歴と作品を見ていきます。まずは、藤田龍児から。京都で生まれた藤田は、大阪市立美術研究所で絵画を学んだあと、1959年に美術文化展で初入選を果たし、毎年同協会で順調に出品を続けます。しかし、1976年から77年にかけて脳血栓を発症。半身不随となり、利き腕の右手が使えなくなります。藤田は、画家の道を断念し、作品も大量に処分してしまいます。その後、リハビリを経て50歳を過ぎてから左手で描き始め、1981年には個展を開き画家として復活。2002年に亡くなるまで、作品を制作し続けました。大変美しく、ジュエリーのよう…ーーでは、藤田の作品について、冨田さんの解説をご紹介します。冨田さん藤田の作品は、初期のころはシュルレアリスム風で抽象性が高い作品になっています。これが、前半生の重要ポイント。病気のあと、画風ががらりと変わり、メルヘン的でノスタルジックな作品を描くようになります。特に注目していただきたいのが、細密描写と色彩。花や雑草の穂のところに紫やオレンジなど、ちょっとした輝く色を差しているのです。それが、見ているとふっと浮き出てきて、大変に美しく、ジュエリーのような輝きを持っています。この色彩の美しさが見どころのひとつです。また、彼の作品には、エノコログサ(猫じゃらし)をはじめ、白い犬や蛇行した道、トンネルなど頻繁に出てくるモチーフがあります。特に、エノコログサは生命力の強さを感じられるモチーフ。藤田自身は、モチーフについて多くを語っていませんが、彼の人生や考え方を重ね合わせ、誤解でもいいので自分でいろいろ解釈してみるのもアートのひとつの楽しみ方だと思います。藤田は右手で20年、左手で20年描きました。50歳を境に、新しい画家の人生を歩み出したのです。破産や妻の病気を乗り越えて…ーー続いては、アンドレ・ボーシャンの経歴について。フランス中部で生まれたボーシャンは、苗木職人として自分の農園をもち、結婚して順調に暮らしていました。その後、第一次世界大戦が勃発。徴兵され、数年間部隊で活動します。除隊後、地元に戻ると農園は破産し、心労が重なった妻が精神を病んでいました。ボーシャンは妻を連れて彼女の故郷に行き、森の中に家を建てて自給自足しながら絵を描き始めます。1921年、48歳でサロン・ドートンヌに初入選。次第に評価が高まり、何度か個展を開き1949年にはパリで大回顧展を開催します。1958年に85歳で亡くなるまで、精力的に制作を続けました。斬新な描写が魅力ーーでは、ボーシャン作品について、冨田さんの解説をご紹介します。冨田さんボーシャンは、美術教育をいっさい受けていない人で、アンリ・ルソー以来の最も優れた「素朴派」の画家ともいわれています。絵を描くようになったきっかけは、軍隊生活。彼はそこで測地術(測量したデータをもとに正確な地図を描く)を学び、その技術で上官から高い評価を得ました。ボーシャンの作品は、稚拙にも見えますが、それが味わいになっています。プロの画家ではやらないような斬新な画面構成や描写が魅力です。また、もともと苗木職人なので、花や自然をモチーフにした作品が多く描かれています。絵の特徴は、あらゆるモチーフが同じような鮮明さで描かれている点。風景画を見ても、手前の木も、奥の山や川も、すべて同じ強さで描かれています。正確に地図を描く測地術の影響かもしれないが、ひとつひとつの対象に対して同じ注意力で描いています。ボーシャンと藤田は異質な二人ですが、彼らの作品は、のどかで牧歌的で響き合っている感じがします。どちらも見ていて心が和むし癒される。また、細部におもしろいところがあり、じっくり見るといろいろな発見があります。この展覧会で、ぜひ絵を見る歓びを感じてみてください。今しか見られない!館長の解説、いかがでしたか?この二人の作品を、これだけの規模で一緒に見られるなんて、奇跡のような展覧会です。本展は巡回しませんので、今、東京で見ないと次回いつ機会があるかわかりません。くれぐれもお見逃しなく!Information会期:~7月10日(日)※会期中一部展示替えがあります(前期4/16~5/29、後期5/31~7/10)休館日:月曜日*ただし5月2日、7月4日は開館会場:東京ステーションギャラリー開室時間:10時~18時※金曜日は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで観覧料:一般¥1,300、大学・高校生¥1,100、中学生以下無料※最新情報は公式サイトでご確認ください
2022年04月24日自身のドローイングをベースにした映像インスタレーション作品で高い評価を集めている束芋さんと、フランスの現代サーカスのパフォーミングアーティスト、ヨルグ・ミュラーさんとのコラボレーションによる舞台『もつれる水滴』が上演される。「初めてヨルグの作品を観た時、その面白さに大興奮したんです。彼は14歳からジャグリングをやっている人なんですが、ジャグリングの技術を使いながらダンスのようでもある。舞台上で奏でられる音楽も、ヨルグ自身が作っていて、サーカスの技術を用いたフランスのカンパニー『Anomalie&…』に出演した時は、演劇ともサーカスともダンスともつかない、私がこれまで体験も想像もしていなかった世界を見せつけられたんです。年齢や国籍を問わず楽しめて、驚きもあり、どこか考えさせられる部分もある。しかも私が幼少期に体験した移動遊園地のような後ろ暗さも感じられたり。私が舞台作品に関わり始めた頃から漠然とやりたいと思っていたことが、すべてそこに実現されている気がしました」ただ、制作を開始してからは困難続き。もともと頭で考え、それを言語化することで作品のコンセプトを探っていく束芋さんとは対照的に、ヨルグさんは目の前で起こることを感覚的に掴み表現していくタイプのアーティスト。そこをコロナ禍が襲い、クリエイションも約2年近く日本とフランス間でのリモートに。「昨年9月にようやく渡仏できたんですが、そこで彼と合わせてみたら、それまで想定して作ってきたものが何も機能しなかったんです。ただ、実際に一緒にやり始めると、全然違う展開というのも生まれて、これまで作ったものを全部捨てても、ここで今生まれているものを活かしていったほうがずっと価値があると感じて、約1年かけたアニメーションを全部捨ててリスタートしました」そして生まれた新作は、ヨルグさんのディレクションによる第1章、束芋さんによる第2章、そしてその世界が融合した第3章で構成。「一個人に焦点を当てる作品になりました。ある個人の内外で起こっていることが、さまざまに影響し、ひとりの人間の見え方が変化していきます。舞台作品を手がけるようになって感じるのは、携わる人たちの出し惜しみのない姿勢。それに見合うものをと自分に命じて作ってきました。鑑賞できる人の数に限りがある舞台作品だからこそ、少しでも多くの方にこの作品を体験していただけたらと思っています」日仏共同製作 束芋×ヨルグ・ミュラー『もつれる水滴』構成・演出/束芋、ヨルグ・ミュラー出演/ヨルグ・ミュラー、間宮千晴美術/束芋富山公演/4月28日(木)~30日(土)オーバード・ホール 舞台上特設シアター一般4000円ほか東京公演/5月3日(火)~5日(木)池袋・東京芸術劇場 シアターイースト一般3500円ほか他に山口、沖縄公演もあり。©watsonstudioたばいも1975年11月30日生まれ。’99年に大学の卒業制作として発表したインスタレーション作品「にっぽんの台所」で注目される。近年は音楽家、ダンサーなどとのコラボレーションも精力的に行っている。※『anan』2022年4月20日号より。インタビュー、文・望月リサ(by anan編集部)
2022年04月17日この春始めたい、習い事ことはじめ。ここでは“陶芸”に注目します。「作る」を習う。モノづくりや料理など、何かを作るということは、そこに自分の感性やセンスが反映され、表現力も磨かれる。好きなもの、おいしいものに囲まれ、生活もグッと豊かに!習い事:陶芸習っている人:モデル・長澤メイさん油絵、写真など、クリエイティブな趣味を持つモデルの長澤メイさんが、今ハマっているのが陶芸。「昔からモノづくりが得意で、図工の成績は5以外とったことがありません(笑)。さまざまなモノづくりに興味があり、陶芸は約4年前に始めました。都内のさまざまな工房の陶芸体験に行きまくり、しっかり基礎を学べて、自分の感性やスキルを高めてくれるなぁと思える先生に出会えたのが2年前。今は2つの工房を掛け持ちして、月に2~3回のぺースで通っています。工房によって扱っている土や釉薬も異なるし、窯の大きさも違うので、複数の工房で腕を磨きながら、自分の表現の幅を広げています。4月からは金沢にある工房にも通う予定です。年末にその工房にひとりで訪れて、4日間ずっとろくろを回していました。まさに修業(笑)。陶芸はその土地の風土がすごく反映されるものだし、金沢は空気も水もキレイで、今までとまた違う表現ができて面白いんです。環境も良く、作品づくりに集中できるから、今後は毎月通いたいと思っています」モノづくりも自己表現も得意な長澤さんがそこまでハマる陶芸の魅力はどんなところなのだろうか。「陶芸は、焼き上がるまでどんな作品になるか全くわからない。その待っている間のドキドキワクワク感がたまらないんです。それに作りながら好きなように形も変えられるし、釉薬ひとつで表面の色を多種多用に変えられて、垂らし具合で面白い変化をつけることもできる。まさに自由自在。そこに自分の今の思いが乗っかって、偶然の表情を持つ作品を生み出せた時が一番うれしい。だから毎回何を作るかは決めずに、その時の気分で作るようにしています。土に触っていると、自分が表現したいものがひゅーと上から降りてきて、手が勝手に動くんです(笑)。それに土に触れることで、体内のエネルギーバランスが整う『アーシング』効果も。陶芸をしている時間はメディテーションにもなっていて、すごく心が落ち着きます」長澤さんの作品は、シックなものもあるが、心がウキウキしてくるようなカラフルでキラキラしている、ポップで軽快な作品が多い。「展覧会に行くと、ネガティブなテーマを表現したアート作品が昔から多くてビックリ。私だったら絶対にポジティブなものしか作らない。だって自分が生み出すものは絶対に自分が好きなものだし、それに囲まれるだけでそこがハッピースポットになって、すごく幸せを感じられるじゃないですか…。作品にはその人のエネルギーが宿るので、作品を通して私のポジティブパワーをみんなに届けて、世界中をハッピーにしたい!それが私の野望です。まずは近々の目標として、今秋に国内で個展を開くために、今まで以上に作品づくりを頑張らなきゃと思っていて、大きな作品にも挑戦中。そしていつか海外で展覧会を開きたい。本気と書いて、マジです(笑)」偶然から生まれたユニークな鉢植え今にも歩きだしそうな鉢植えは、釉薬が垂れて自然とこんな形に。「偶然が作り出した奇跡の作品。キラキラの釉薬とクリスタルの天然石を用いているので、光が当たるととてもキレイ!」愛犬そっくり!陶器のお香立て長澤さんの愛犬“uni”をモチーフにした作品も。「お香をたくと、uniの口から煙がもくもく出てきます。uniの姿形は頭にしっかり入っているから、写真も何も見ずに成形しました」ながさわ・めいモデル。1990年12月8日生まれ、愛知県出身。名古屋PARCO開業30周年広告「LOVE PARCO」をはじめ、TVCMやMVなどに多数出演。写真展「Sammy」を開催したり、吸水ショーツをプロデュースするなど、マルチに活動中。※『anan』2022年4月20日号より。写真・小笠原真紀取材、文・鈴木恵美(by anan編集部)
2022年04月17日「出版120周年 ピーターラビット(TM)展」が世田谷美術館で開催される。会いに来たよ!世界で一枚だけのピーター。1902年に英国で初版刊行、日本では’71年に出版以来、愛されてきた『ピーターラビットのおはなし』。出版120周年の今年まで、日本語版の絵本では掲載されなかった挿絵の原画を含め、『ピーターラビットのおはなし』の彩色画全点が作者のビアトリクス・ポター(TM)の思い描いた姿で展示される初めての機会だ。そのほかにも見逃せないのが、ビアトリクスが少年に宛てた絵手紙のオリジナル。これは絵本の出版から遡ること約10年前、自分の家庭教師だった女性の子どもである5歳のノエル少年へお見舞いとして描いたもの。後に彼のもとで保管されていた絵手紙をもとに、ビアトリクスはピーターの物語を描き上げることになる。そして出版されるや大評判に。「当時、擬人化された動物を主人公にした絵本はありましたが、ピーターの姿は決してデフォルメされていません。もしウサギが2本足で立って歩くとしたら、どのように描けば自然なのかということがよく考えられていて、喜怒哀楽も姿勢や仕草で表されています。その頃、博物学が流行し、その影響を受けてビアトリクスが小動物の実際の骨格を調べていたこともわかっていますが、そうした博物学的な知識と目を持っていなければ描けない絵だと思います」と本展の監修を務める大東文化大学教授の河野芳英さん。「ヴィクトリア朝の英国の裕福な家庭の常として、ビアトリクスも乳母や家庭教師に育てられました。子ども部屋に弟と二人で『秘密の動物園』を作り、カメや小鳥、ウサギなどのペットを飼い、そのスケッチがたくさん残されています。そのような環境で優れた観察力が培われたのでしょう」出版の翌年にはビアトリクスはピーターのぬいぐるみを自作し、特許を申請。本展には100年以上前に作られたアイテムの数々も登場する。「自分の絵本のキャラクターをグッズとして販売するために特許を申請した初めての人といわれています。先見の明を持ちグッズとともに歩んできたことも、絵本がベストセラーであり続けた要因かもしれません」絵本、キャラクターグッズのビジネスで大成功を収めたビアトリクスは、幼い頃から避暑に訪れ親しんだ英国・湖水地方の自然景観を守るため、東京ドーム約360個分の土地を購入。亡くなった後はナショナル・トラストに寄贈、2017年には世界文化遺産に指定されている。「ビアトリクスが湖水地方の自然を残そうとしたのは、ピーターラビットの舞台となった場所が残れば、自分の絵本も残ると考えていたからとも。今回展示される原画は水彩で描かれた繊細なもの。印刷に表れないすばらしい魅力があります。ご覧いただければ心が洗われるような体験になると思います」原点は小さな友達に送った絵手紙。1893年に療養中の少年を慰めるため送ったお見舞いの絵手紙が『ピーターラビットのおはなし』の原点。最後はピーターがベッドに寝かされ、煎じ薬を飲ませてもらう絵本と同じ場面も。《ノエル・ムーア宛ての絵手紙》 ビアトリクス・ポター 1893年 ピアーソン PLC ©Victoria & Albert Museum,London,2015「ピーターラビット(TM)」シリーズとは?1902年の『ピーターラビットのおはなし』を皮切りに’30年までに全23冊を刊行。主人公はリス、カエル、ネコ、アヒルなど。ビアトリクスが子どもの頃から親しんだ小動物が、湖水地方などを舞台に物語を繰り広げる。《『ピーターラビットのおはなし』初版(濃茶色厚紙装丁版)》 フレデリック・ウォーン社 1902年ウォーン・アーカイブ/フレデリック・ウォーン社 ©Frederick Warne & Co.Ltd,2021『ピーターラビットのおはなし』彩色画全点が一堂に。《『ピーターラビットのおはなし』挿絵原画》 ビアトリクス・ポター 1902年 ウォーン・アーカイブ/フレデリック・ウォーン社 ©Frederick Warne & Co.Ltd,2017「出版120周年 ピーターラビット(TM)展世田谷美術館」東京都世田谷区砧公園1‐2開催中~6月19日(日)10時~18時(入場は17時30分まで)月曜休(5/2は開館)一般1600円ほか※会期中の土・日・祝日および5/2は日時指定券を販売。詳細は展覧会公式サイトを確認。TEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)ビアトリクス・ポター1866年、ロンドンに生まれる。幼い頃から絵の才能を発揮。ウサギなどの小動物が主人公の「ピーターラビット」シリーズは2億5000万部を超えるロングセラー。英国・湖水地方の景観を守ることにも尽力。1943年没。写真:1892年 ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館 Courtesy of the Victoria and Albert Museum※『anan』2022年4月13日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2022年04月11日人気の若手歌舞伎俳優、中村壱太郎さんと尾上右近さんが、『没後50年 鏑木清方展』のイベントに登場!歌舞伎をテーマにした展示室で、トークとフォトセッションが行われました。さらにその後、インタビューも実施。アートやエンタメの魅力、東銀座界隈の思い出など語っていただきました!中村壱太郎さん、尾上右近さん、登場!左:尾上右近さん右:中村壱太郎さん《道成寺 鷺娘》の前で撮影【女子的アートナビ】vol. 239東京国立近代美術館『没後50年 鏑木清方展』の展示室に登場したお二人。さすが歌舞伎俳優さん、立ち姿がとても美しいです!中村壱太郎さんは、歌舞伎俳優だけでなく日本舞踊の吾妻流七代目家元、さらに現代劇でも活躍。尾上右近さんも、歌舞伎俳優と家業である日本古典音楽の清元、映画やバラエティ番組にも出演し、多方面で活躍されています。まずは、鏑木清方の華やかな作品《道成寺(どうじょうじ) 鷺娘(さぎむすめ)》の前でフォトセッション。《道成寺 鷺娘》とは、歌舞伎の演目『京鹿子娘道成寺』と『鷺娘』をテーマに描いた作品。お二人とも、歌舞伎では女方を中心に演じられているので、作品にも興味津々なご様子。撮影の合間にも、絵に描かれている着物や仕草などについて、楽しそうに話されていました。続いてのトークセッションは、《京鹿子娘道成寺》の作品が並ぶ展示室で実施。お二人が鏑木作品の魅力について、語りました。壱太郎さん清方先生の作品は、一言で言うと、眼福。幸せになれます。美しいものを見ると人間は幸せになれる、と改めて感じました。特に、僕らは着物や日本の文化に触れて仕事をしているからかもしれませんが、日本人のどこかに眠っているものと紐づけられるのかなと思います。右近さん品格が高いと思います。画家がどんな人だったのか、絵を見ながら僕はよく人物像を想像してみるのですが、清方作品には品格があふれ、知性があります。江戸っ子の粋や風流、時代からくるモダンさなどに楽しみを感じます。心静かにカブいているのがいいですね。お二人にインタビュー!続いて、本展覧会の目玉作品である清方の美人画三部作《築地明石町》、《新富町》、《浜町河岸》が並ぶ展示室でインタビューを実施。まずは、三部作について、お聞きしてみました。――こちらの美人画で、どの作品、どの女性がステキだと思いますか?右近さんやはり、築地明石町のお姉さんでしょう。この凛とした姿。この瞳で見つめられたいです。男目線でも、女方の役者として見てもステキです。男性の画家が描く女性は、理想の女性の姿で、男が演じる女方も理想の女。そのリンク性も作品から感じられますし、とにかく断然美しいです。男としては、こういう女性に振り返られたいですね(笑)。壱太郎さん浜町のおぼこさんもいいと思う。僕らも踊りを習うと、この絵のように「振り」をおさらいするのです。「今日習ったことは、こんな振りだったのかな」とこの絵を見てすぐにわかります。着物の袖を持ち、扇子を口に当てるというのは、日常にはないしぐさ。これを切り取っている清方先生のセンスはすばらしいですよね。右近さん確かに、浜町の作品もいいですね。どの作品も凛としてさわやか。そして、首がキレイ。九州系だね。――九州系とは?右近さん九州の女性は色白で、首が細くて、毛の流れがきれいというのが僕の勝手な思い(笑)。尾上右近の統計。九州の女性は色白で、輪郭がいいのです。壱太郎さんハハハ。でも、これ大丈夫?九州以外の人を敵に回していない?右近さん大丈夫、大丈夫!「想像させる絵がステキ」――全体を通して、お好きな作品はどれですか?右近さん僕は《墨田河舟遊》(※筆者注:屋形船で姫や若侍が楽しむ様子を描いた屛風)。人間が生き生きと描かれ、楽しそうでワクワクします。当時の時代の最先端が感じられ、若いエネルギーで楽しんでいる。僕らも結局、同じことを繰り返していますよね。カラオケ行ったり、クラブ行ったりするのと同じです。上品に遊んだほうが楽しいよ、ということもこの絵から感じます。壱太郎さん僕は、《佃島の秋》(※男性が女性に花を手渡している場面を描いた絵画)。勝手な解釈だけど、下に描かれている美しいアヒルと女性がリンクしていると思うのです。ぶっきらぼうな男の人が、白くてきれいなアヒルに花をあげてみた、という感じで、この絵をもとに芝居を書けるくらいの情報量があります。想像させる絵がステキです。見る楽しさを感じさせてくれます。「エンタメは、非日常を感じるのがいい」――お二人は、とても楽しそうにこの展覧会をご覧になっていますが、一般的に、特にanan世代の多くは、「日本画の展覧会ってハードルが高そう」と感じているような気がします。右近さんハードルが高い、とすでに存在を認識しているのなら、そのハードルを越えてみたらいいんじゃないのかな。触れてみたらいいと思います。知らないよりは知っているほうが絶対いいです。見に行ったら、「知っている」というステイタス以上に「おもしろい」という純粋な感情が生まれる。ハードルが高いと認識しているものは、もっと触れてみたほうが楽しいですよ。壱太郎さん歌舞伎も、同世代や若い方に「勉強しに行きます」とよく言われます。でも、別に勉強するものではないんですよね。右近さんそうそう。勉強するのは僕らの仕事ですから。壱太郎さんまさにそう。清方先生の《佃島の秋》みたいに、想像する楽しさをみんながもてる。絵を見ていると、それ以上のものを感じるのが絵画のおもしろさで、歌舞伎も一緒。「この人どうしてこんなにきれいなのかな」と素朴な疑問をもつとか、それだけでいいのです。そのきっかけさえ見つければ、それ以上のものをもって帰れると思います。右近さんエンタメは、非日常を感じられるのがいいです。美術館という空間自体いい。おならもできない静寂な空間(笑)。壱太郎さんもうちょっとananらしい良いたとえはないの(笑)。でも、展覧会なら、好きな絵をひとつ見つけに行こうと思って友達と出かけて、感想を伝え合うのもいいよね。朝イチで山盛り海鮮丼!――鏑木清方は築地界隈で暮らしたことがあるので、それらの地域が作品にも描かれています。歌舞伎座からも近いエリアですが、お二人にもなにか築地の思い出はありますか?右近さん以前、二人で歌舞伎座に出ていたとき、朝の築地に行きました。一幕目は昼の11時に開演するので、だいたい10時に楽屋入りします。その前にということで、朝7時に集合して行きました。壱太郎さんあれはよかったね。海鮮丼食べて。右近さんそう。高いのを食べました。よかったですよ、山盛りで(笑)。あの界隈のあの空気感も独特。浅草とか上野の江戸っ子も僕らは知っていますが、築地あたりの江戸っ子の空気は、また違うんですよね。河岸の人間の時間軸を感じて、いいなぁと思いました。『芝浜革財布』という芝居があり、河岸に通う男の話なのですが、築地にいると「こういう空気なんだな」とわかります。夕方には寝るという雰囲気。僕も、いつも午前中はちょっと眠いのですが、築地に行った日は、朝7時から食事をしているものだから、元気モリモリで(笑)。みんなと時の流れ方が違って、すごく充実感がありました。うまいもの食って来ているから(笑)。壱太郎さんこっちはもう始まってんだぜ!っていう感じだったね(笑)。「過去の自分は常に良くない…」――鏑木清方は、自分の作品を自己評価し、その記録が残っています。本展では、その記録をもとに、会心の出来には三ツ星など、作品に星がつけられていますが、そのような画家の姿勢をどう思いますか?右近さん目に見える絵画作品の場合は、いやでも冷静に評価が見えてきますよね。僕らは毎日同じことをやっていても、毎日コンディションも違うしお客さまも違うし、お互いのコンディションも違うし、状況が毎日違うので、自己評価の仕方が難しいです。常に揺れ動いているものなので、実態がわからない。後から振り返るとわかるときもありますが、この時が良かったというのは120パーセントないです。壱太郎さん清方先生の絵は、このまま一生残っていきますが、僕らの演技はその瞬間でしか残らない。だからこそステキさがあると思うので、その意味で評価の仕方は絵とは違うと思います。ただ、自己評価というより、仲間がいるから目指せるものはあるので、高め合いは常に意識しています。右近さん例えば過去の映像を見ると「ひどいな」と自分で思うのです。なんでこんなに拙いことやっているんだ、と。過去の自分は常に良くない、というのが植え付けられているので、冷静に判断ができない。成長がどこにあるのか、自分ではまったくわからないのです。へたに過去の映像など見てしまうと、進歩していない自分が目の前に立ちはだかって舞台に立つのが嫌になる。今日はいい舞台ができるぞという自己催眠がかけられなくなるのです。壱太郎さんこれは役者の宿命。今はビデオがあるから、僕らも頼るし必要だとは思います。でも、あまりにも見すぎると、自分は果たして何なのか。わけがわからなくなる。そこの難しさは僕らにはあります。右近さん客観性を持つのが難しいです。自分で三ツ星つけては取り消しての繰り返しです(笑)。アートとは「極上の…」――絵画作品だけでなく、歌舞伎などの舞台芸術もすべてアートといえると思うのですが、お二人にとってアートとは?右近さんアートとは、「人間の証明」。芸は人なり、という言葉から置き換えてみました。壱太郎さん人生においてのいろどり。人間のいろいろないろどりを総称すると、アートになるのではないかなと。時代時代において、いろいろな人や作品と関わり見ることによって人間力が増していく。これは生きた証です。右近さん僕、先ほどプレーヤー目線で言ってしまいました。すみません、はき違えました(笑)。アートとは、「極上のひまつぶし」です。壱太郎さん「人間の証明」からの落差がすごいね(笑)。右近さん生きるうえでは、いらないのかもしれないけれど、暇ができたら、その暇をやはり上質につぶしたい。それが、生きることへのこだわり。例えば、おにぎりとピカソの絵なら、食うに困るときはおにぎりしか選ばない。でも、食うに困らなくなったらピカソの絵に気づく。おにぎりもいいけど、この絵を見て心を潤うのもいいと気づく。だから、「極上のひまつぶし」です。「先に死なないで!」――お二人の関係、とてもいい感じですね。プライベートでも仲が良いのですか?右近さんいちゃこらしています(笑)。anan読者の女性たちも、僕らを見習って、いちゃこらしてください!壱太郎さん僕らは盟友、親友、ボイスメッセージ友達。同じ時代に生きて、同じものに取り組み、同じ感覚があります。もしかすると、今は追い求めるもの、求められているものが違っているかもしれないけど、いつかのゴールは絶対一緒のものを見ていると思います。一緒の思いをもてることに「ありがとう」と言いたい人です。右近さん僕にとって(壱太郎さんは)うれしいときも悲しいときもすべて報告したい人です。そんな人、清方先生にはいなかったのかな。(ここで、担当学芸員の鶴見香織さんが登場)鶴見さんそれは奥さまだと思います。奥さまは、清方が亡くなる数年前に他界され、その後、清方もがっくりとされていたそうですよ。右近さんがっくりきますよね。(壱太郎さんに向かって)先に死なないで!たとえ死ぬとしても、同じ年の同じ月の同じ日じゃ!壱太郎さん同じ刻限でね(笑)。右近さん芝居のようだね(笑)。――本当にステキなご関係ですね。楽しいお話、ありがとうございました!インタビューを終えて…立ち居振る舞いがとにかく美しいお二人。スーツを着ているとふつうにカッコイイのですが、少しでも動くと足の運びや指先の動きなど、一つひとつの所作が本当に優雅で、見とれてしまいました。くだけた話や楽しい話をしていても、品格が漂っているお二人。固い絆が感じられる友情にも感動しました。『没後50年 鏑木清方展』は5月8日まで開催。ぜひハードルを越えて、美しいアートに触れてみてください!Information『没後50年 鏑木清方展』会期:~5月8日(日)休館日:月曜(※5月2日は開館)会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開室時間:9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)(入館は閉館30分前まで)観覧料:一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料撮影:山本 嵩
2022年04月03日東京・町田にあるスヌーピーミュージアムで、企画展『しあわせは、みんなの笑顔』が開かれています。スヌーピーと仲間たちの楽しそうな笑顔、ニヤニヤ笑い、やさしい微笑みなど「笑顔」がテーマの本展は、この春のお出かけにもぴったり。ワクワク感いっぱいの館内や、映えるフォトスポット、楽しい作品を一挙ご紹介!笑顔のスヌーピーがお出迎え【女子的アートナビ】vol. 238スヌーピーミュージアムの最寄り駅は、東急田園都市線の「南町田グランベリーパーク駅」。そこから歩いて4分ほどで、大きなスヌーピーが描かれたかわいい建物に到着!外観も、今回の企画展に合わせて「笑顔」だらけ。建物だけ見てもワクワクします!館内では常設展と企画展を開催中。まずは、常設展から見てみましょう!常設展では、スヌーピーが登場するコミック『ピーナッツ』の作者、チャールズ・シュルツ氏の創作の歴史を知ることができる「チャールズ・シュルツ・ギャラリー」や、「ピーナッツ・ギャング・ギャラリー」などがあり、スヌーピーたちの基本情報を知ることができます。最初は四足歩行で、ふつうにペットの犬っぽかったスヌーピー。初期の複製原画や貴重なフィギュアなど、お宝がいっぱいあります。映えるフォトスポット!常設展エリアには、映えるフォトスポットもいっぱいあります!まず、3階にある「スヌーピー・テラス」。南町田グランベリーパークを一望でき、天気が良ければ富士山も見える気持ちのいいテラスです。ここにあるのが、かわいいスヌーピーがいっぱいのフォトスポット。雑誌やテレビなど、いろいろなメディアの撮影にも使われているそうです。モデル気分で撮影すると楽しいかも!2階の人気撮影スポットは、「スヌーピー・ルーム」。全長約8メートルの巨大スヌーピーをはじめ、お腹でスケートをしたり、ハロウィンの変装をしていたりするユニークなポーズのスヌーピーがずらりと並んでいます。さまざまな「笑顔」が集結!続いて企画展エリアへ。入り口でスヌーピーとウッドストックが、めちゃくちゃ楽しそうに笑っています!企画展『しあわせは、みんなの笑顔』では、スヌーピーたちの豊かな笑いを描いたコミック『ピーナッツ』の貴重な原画や複製原画約60点を展示。6つのグループにわけて、さまざまな笑顔が紹介されています。まずは、『笑わせておくれよ、チャーリー・ブラウン』のコーナーから。いつも何をしてもうまくいかない残念なチャーリー・ブラウン。ジョークを言った覚えがないのに笑われてしまうなんて、ちょっとかわいそうですが、逆に彼はみんなを笑顔にする才能があるのかも。開き直って笑ってしまえ、という豪快なスタンスをとるキャラたちも憎めません。『笑って笑って吹き飛ばせ!』のコーナーには、ペパーミント パティやマーシーたちのポジティブ思考が満載。ストーリーを読むと、自然に頬が緩んで元気になれます。ちなみに、作品が飾ってあるケースにもご注目。スヌーピーの犬小屋スタイルになっています!ブラックなスヌーピーも…!『ニヤニヤがとまらない』では、歯をむき出してニヤッと笑うスヌーピーが登場。ウラがありそうなアヤシイ笑顔にも出会えます。スヌーピーは、ちょっとしたイタズラが大好き。本気の意地悪ではないのですが、おふざけしているときは、歯を出して笑っています。ときどき、短いセリフでブラックなジョークをボソッとつぶやくことも。グッズのキャラクターとして、癒し系のかわいいスヌーピーに見慣れている人は、ちょっとビックリするかもしれませんが、本来のコミックとしてのおもしろさを味わえます。スヌーピーは小説家!?続いてのコーナー、『ハッピー!ハッピー!ハッピー!』では、「いい仕事して、笑おう」というストーリーの原画などを紹介。小説家のスヌーピーが、いいものを書いたときの喜びの笑顔を見せています。『ピーナッツ』ファンにはおなじみかもしれませんが、スヌーピーは屋根の上でタイプライターを打ちながら小説を書いたりしています。文豪トルストイの名著『戦争と平和』の続きも打っているとか。犬であることを誇りに思いながら、犬小屋の屋根の上でさまざまな夢を見ているのです。続く『ついニコニコしちゃうしあわせ』のコーナーには、友情や小さな幸せなど、ほっこりするストーリーがいっぱい。スヌーピーをハグしたり、膝の上に乗せたりしている仲間たちと過ごす穏やかな日常の姿を描いた絵は、見ているだけで優しい気持ちになれます。スマイルの連鎖…最後は、『スマイルの連鎖』。毎日コミックを描き、いつもおもしろいことを考えていたシュルツ氏は、アメリカだけでなく世界中に笑いをひろめていきました。このコーナーには、キャラクターたちのハッピーな笑顔があふれています。いろいろな出来事がある今、特にこのコーナーは刺さります。『ピーナッツ』の世界に触れて、楽しく笑ってスマイルが連鎖していけば、みんなハッピーになれるはず。スヌーピーのストーリーは、大切なことを教えてくれます。企画展のあとに続く展示室には、スヌーピーの「ベリー・ハッピー・ホーム」が登場!ここも「映えスポット」です!ショップもかわいい!展示を見終わったら、ぜひ立ち寄りたいのが「ブラウンズストア」。チャーリー・ブラウンをイメージしたおしゃれな店内には、ステーショナリーや雑貨など、ここでしか買えないオリジナルグッズがいっぱい!2022年の今年は、チャールズ・シュルツ生誕100周年を記念した限定商品もあり、どれもこれも集めたくなります。特に心を惹かれたのが、箸置き。四足歩行タイプと、ニコニコ笑顔で背中を丸めたタイプの2種類あったので、ひとつずつゲット。どちらも本当に愛らしく、食事をするたび笑顔になれます。春のお出かけにぴったりなスヌーピーミュージアム。南町田グランベリーパークには、アウトレットモールやレストラン、映画館、鶴間公園などのアクティビティがあり、一日中楽しむことができます。ぜひぜひ足を運んでみてくださいね!© Peanuts Worldwide LLCInformation<スヌーピーミュージアム企画展『しあわせは、みんなの笑顔』概要>会期:~7月10日(日)会場:スヌーピーミュージアム時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)観覧料:前売り一般・大学生¥1,800、中学・高校生¥800、4歳~小学生¥400当日券一般・大学生¥2,000、中学・高校生¥1,000、4歳~小学生¥600
2022年03月31日「特撮」のリアリティはこうして生まれた!?『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』に注目します。東京湾から襲来するゴジラ、デパートの屋上に舞い降りるラドン。昭和の子どもたちが胸躍らせた怪獣映画の破壊シーンがすべて手作りだったと聞くと驚くかも?「CG映画のなかった時代、戦争や怪獣、自然災害によって破壊される市街地など実写では撮影不可能な場面をミニチュアセットや模型を使って撮影したのが特撮(特殊撮影)と呼ばれる手法です。1954年公開の『ゴジラ』をはじめ、特撮の先駆者といわれる円谷英二監督を支え、監督が描くイメージを“実装”する役割を果たしたのが美術監督の井上泰幸さんでした」(東京都現代美術館学芸員・森山朋絵さん)徹底したロケハンと綿密なスケッチをもとに実景に忠実なセットを作り上げ、数々の名場面に貢献したほか、自ら設計した撮影所のプールで模型を使った海戦シーンを撮影、波起こし機を考案するなど、新しい手法を果敢に切り開くパイオニアでもあった。本展ではそうした業績とともに、井上さんの「表現者」としての個人史にもスポットを当てる。「太平洋戦争で片足を失い帰国した井上さんは、紆余曲折を経て28歳で大学に入り、バウハウスで学んだ山脇巌氏のもとでデザイン教育を受けています。初期の作品からは、テクノロジーを戦争ではなく芸術に向けられる喜びが伝わってきますし、同時代の前衛美術グループ〈実験工房〉が舞台パフォーマンスの装置に電飾やプラスチックなど、新しい素材を進んで用いた“総合芸術”の姿勢とも共通するかもしれません」会場ではスケッチや図面、ミニチュアなど数百点に及ぶ資料や貴重なメイキング画像が見られるほか、「昭和の特撮が令和の技術で蘇る」(森山さん)さまも見逃せない。『日本海大海戦』(1969)で使われた戦艦三笠の6mの模型も原寸大の3D画像で会場に登場する。また『シン・ゴジラ』(2016)で特撮美術監督を務めた三池敏夫氏が『空の大怪獣ラドン』(1956)の名場面、福岡・天神のデパートにラドンが舞い降りるセットを復元。このセットのみ限定で写真撮影OKなので、ぜひ自分だけの特撮シーンを!福岡・岩田屋周辺ミニチュアセットのメイキング写真、「空の大怪獣ラドン」(1956)より©TOHO CO., LTD.CGがかつて苦手としていた物体の重みを感じさせる空気感が特撮の強み。地元のデパートに本当に怪獣が舞い降りたかと九州の子どもたちを驚かせた名場面の撮影風景。怪獣・建造物設定対比図、「モスラ対ゴジラ」(1964)より©TOHO CO.,LTD.名古屋のテレビ塔、天守閣、ゴジラ、モスラの大きさの比率を示した手描きの図面。万能潜水艦アルファ号 デザイン画、「緯度0大作戦」(1969)より©TOHO CO., LTD.戦時中、海兵団に所属した井上さんは海戦ものを得意とした。この潜水艦は肖像写真で井上さんが手にしている模型と同じ「アルファ号」。いのうえ・やすゆき1922年生まれ。円谷英二(1901‐1970)のもと、特撮美術スタッフの一員としてキャリアを本格的にスタート。井上に学び協働した三池監督に加え、庵野秀明監督、樋口真嗣監督ら最前線で活躍するクリエイターたちに大きな影響を与える。2012年没。井上泰幸 アルファ企画にて、1994年 撮影:斎藤純二『生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展』東京都現代美術館 企画展示室 地下2F東京都江東区三好4‐1‐1開催中~6月19日(日)10時~18時(入場は17時30分まで)月曜休一般1700円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※『anan』2022年3月30日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2022年03月29日大判カメラの「アオリ」と呼ばれる機構を駆使して、都市をジオラマのように撮影する写真家・本城直季さん。まるでミニチュアセットのように見える写真だが、実はすべて現実世界を撮影したもの。彼のマジックに魅了されたファンも多いだろう。まるでジオラマ?広がる不思議な風景。写真家・本城直季初の大規模個展。「大学の写真学部4年生の時、学校の備品だった大判カメラを自由に借用できるようになって。スタジオマンとして働いた経験などもなかったので、固定観念なく自由な撮影にトライできた。それがこの撮影法を習得したきっかけかもしれません」東京に生まれながらも高層ビルが乱立する都市に違和感を覚えていたという本城さん。この世界を知りたい、俯瞰したい。そんな想いが彼の創作の原動力となった。「実際にヘリコプターから空撮すると驚かされるのは人の痕跡。例えば、広大なサバンナにも車の轍は残っているし、東京のビルや人が密集する様には衝撃を受ける。地球上で人間がいない場所はないと感じるし、そこにあるのは美しさだけじゃなく、リアルな人の営みだと実感します」今回、彼が2年かけて準備をした初の大規模個展では、代表作「small planet」シリーズで日常の風景を俯瞰することから始まり、そこから「kenya」「tohoku 311」など、彼が注目するエリアへとフォーカスする展開に。注目は本展のため新たに撮り下ろした「東京」の風景。国立競技場や東京の摩天楼、長時間露光によって住宅街の路地裏を撮影した「LIGHT HOUSE」まで約200点の作品を展示し、その活動を振り返る。自分の住んでいる世界は、はたして理想的なのかをずっと問い続けてきたという本城さん。「かわいいと言われることが嬉しい半面、都市が抱え込んでいる陰の部分も表現されているのが僕の作品。そんな都市生活の奥深さを感じてもらえたら」small planet / Tokyo, Japan / 2005 © Naoki Honjosmall planet / Tokyo, Japan / 2002 © Naoki Honjoplay room / beach / 2005 © Naoki Honjokenya / giraffe / 2008 © Naoki Honjo本城直季(un)real utopia東京都写真美術館 地下1階展示室東京都目黒区三田1‐13‐3恵比寿ガーデンプレイス内3月19日(土)~5月15日(日)10時~18時(木・金曜は~20時。入場は閉館の30分前まで)月曜(3/21、5/2は開館)、3/22休一般1100円ほか(日時指定予約推奨)TEL:03・3280・0099ほんじょう・なおき1978年、東京都生まれ。2004年、東京工芸大学大学院芸術学研究科メディアアート専攻修了。『small planet』(リトルモア)で第32回木村伊兵衛写真賞受賞。ANA機内誌『翼の王国』の連載も担当する。※『anan』2022年3月23日号より。写真・小笠原真紀インタビュー、文・山田貴美子(by anan編集部)
2022年03月20日国内外のメディアに多数取り上げられるトリックアート作家・服部正志によるトリックアートミュージアム『トリック3Dアート in COEDO』(埼玉県川越市)は、最新作6点を含む当ミュージアム初登場の3Dアート作品11点を、2022年3月5日から入替展示しています。魔法のトラック1■川越観光に!参加型トリックアートミュージアムに新作が登場!『トリック3Dアート in COEDO』は、2018年に不思議な写真を撮って楽しめる参加型のトリックアートミュージアムとしてオープンしました。川越観光に訪れるファミリー、カップル、グループが楽しめる場所として多くの方にお楽しみいただいております。この度、最新作6点を含む当ミュージアム初登場となる3Dアート作品11点を2022年3月5日から入替展示しています。好評につき延長展示となる3Dアート作品も6点あります。その他にも不思議な錯視作品が10点ほどあるため、様々なトリックアートをお楽しみいただけます。館長であり全ての展示作品の作者である服部正志の作品は強い錯覚効果があります。作品を展開しているトリックアートミュージアムは国内外に合計4館あります。2018年にヨーロッパ主要国では初のトリックアートミュージアムがドイツ/ハンブルクに開館して行列が出来るほどの人気ミュージアムとなっています。現在ドイツ/ロストックにもあります。トリック3Dアート in COEDO MINDWAYS 3D TRICKART ■トリック3Dアート作家/服部正志(はっとりまさし)プロフィール1962年生まれ。多摩美術大学絵画科卒。2010年からは主にトリック3Dアートのイベントを展開。派手なトリックと斬新な表現で国内を代表する3Dアート作家として知られるようになる。国内外で100回以上の「トリック3Dアート展」「魔法の絵画展」を開催。ヨーロッパや日本国内のメディアにも多数取り上げられている。NHK「高校美術1」、日テレ「世界の果てまでイッテQ!」、ドイツのTV「ガリレオ」など多数出演。ドイツ/ハンブルクとロストックにて大型ミュージアムを開催中。国内では川越、湯布院にてミュージアムを開催中。作者ホームページ: 【店舗概要】店舗名 : トリック3Dアート in COEDO所在地 : 埼玉県川越市元町1-13-1(札の辻交差点すぐ)定休日 : 火曜日価格 : 大人(高校生以上) 800円小人(4歳~中学生) 500円3歳以下 無料営業時間: 10:30~17:30(最終入館17:00)TEL : 049-298-4727URL : ■会社概要屋号 : アートテイラー服部代表者 : 服部正志所在地 : 〒350-1328 埼玉県狭山市広瀬台1-9-21設立 : 1990年4月事業内容: トリックアートの製作URL : 【店舗・作品に関するお客様からのお問い合わせ先】服部正志TEL:090-3346-9844 詳細はこちら プレスリリース提供元:@Press
2022年03月16日春のお出かけにぴったりの展覧会が、都内各所で次々とはじまっています。今回は、特に日本が誇る美しい芸術品を見られる場所にフォーカス。サントリー美術館、山種美術館、アーティゾン美術館と東京国立近代美術館の企画展をまとめてご紹介!サントリー美術館『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』【女子的アートナビ】vol. 237御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』では、奈良にある正倉院宝物の精巧な再現模造のなかからセレクトされた逸品をまとめて展示。近現代の一流工芸家により再現された天平時代の技と美をたっぷり楽しめます。正倉院宝物とは、東大寺の重要な資財を納める「正倉」に伝わった約9,000件の品々のこと。聖武天皇ゆかりの品をはじめ、奈良時代の貴重な宝物が多く、調度品や楽器、武具、仏具、染織品など多彩な品があります。でも、なぜ本物の宝物ではなく再現模造を展示するのでしょうか?宮内庁正倉院事務所保存課長・飯田剛彦さんによると、正倉院宝物は壊れやすく、全国各地の展覧会で積極的に作品を公開するのは難しいとのこと。代わりに再現模造で理解を深めてほしい、とのお話でした。明治期の模造製作は、宝物を修理するための試作品としてつくられたことが多く、今では万が一の際のスペアとしての役目や、今回のような展覧会に出品する役割も担っているそうです。例えば、正倉院の国宝「螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)」の模造をつくる際、まず製作前にレントゲンやCTスキャンなども駆使して徹底的な調査を実施。痕跡を探り、さらに当時と同じ材料も各地から探し集め、そのうえで当代の名工たちが当時の技法を再現しながらつくりあげたそうです。「螺鈿紫檀五絃琵琶」は、正倉院宝物を代表する名品のひとつ。楽器としても大変珍しく、世界で現存するのは正倉院の現宝物のみ。それと同じものをほぼ完ぺきに再現した模造も、やはり素晴らしい芸術品といえると思います。前出の飯田さんは、この企画展の楽しみ方について、次のように教えてくれました。飯田さん再現模造には変色や欠けている部分もなく、ストレートな美しさがあります。また、現代の一流工芸作家が失われた技術をどのように再現したのか、という部分も注目点です。模造のパーツなども展示されているので、製作過程も含めて楽しんでみてください。本展は3月27日まで開催。その後、長野に巡回します。山種美術館『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』渋谷区広尾にある山種美術館では、美人画の巨匠として知られる上村松園と、その長男・松篁(しょうこう)に焦点を当てた展覧会『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』が開催中。気品あふれる日本画を心ゆくまで堪能できます。上村松園(1875~1949)は、京都で活躍した女性画家。葉茶屋の娘として生まれ、京都府画学校(現:京都市立芸術大学)で鈴木松年に、その後は竹内栖鳳などのもとで日本画を学びます。1902年に長男・信太郎(のちの松篁)を出産。家業の茶商を廃業して画家に専念し、シングルマザーとして息子を育てます。1948年には、女性初の文化勲章を受章。格調高い美人画で人気を博し、日本画家として成功を収めました。上村松篁(1902~2001)は、花鳥画で有名な画家。特に鳥の絵に定評があり、アトリエで多くの鳥を飼って観察しながら描いていたことで知られています。1984年には文化勲章を受章。息子の上村淳之も、日本画家として活躍しています。会場では、山種コレクションの上村松園作品全18点・松篁作品全9点を一挙に公開。さらに、淳之も含めた三世代の作品を見ることができます。なかでも時期的に必見なのが、松園の《春芳》(しゅんぽう)。梅の木の前でたたずむ女性の姿が描かれた大変美しい作品です。芳しい梅の香りが漂ってきそうで、作品の前に立つだけで一気に春の空気に包まれます。本展は4月17日まで開催。アーティゾン美術館『はじまりから、いま。1952ー2022』公益財団法人石橋財団アーティゾン美術館では、現在『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』が開かれています。本展では、石橋財団コレクションの歴史を約170点の作品とさまざまな資料で紹介。古代美術や日本東洋古美術から現代美術まで、幅広いジャンルの名作を楽しめます。展覧会は3部構成。第1章「アーティゾン美術館の誕生」では、近年収蔵された作品や、これまで開催された展覧会のポスターなども展示。ブリヂストン美術館時代の懐かしい企画展などを思い出しながら、美術館が歩んできた歴史に触れられます。第2章「新地平への旅」では、中国出身の画家ザオ・ウーキーによる墨で描かれた大作が登場。また、新所蔵作品《平治物語絵巻 常磐巻(ときわのまき)》も初公開中です。これは鎌倉時代に制作された作品で、清盛勢が内裏に討ち入りする場面などがドラマチックに描かれています。さらに、みんな大好きな“日本の宝”も第2章に登場!国宝《鳥獣戯画》(京都・高山寺蔵)甲巻の一部だった作品《鳥獣戯画断簡》も、石橋財団コレクションの所蔵作品です。最後の第3章「ブリヂストン美術館のあゆみ」では、開館初期のコレクションを紹介。モネやマネなどの絵画やギリシア彫刻などを楽しめます。本展は4月10日まで開催。東京国立近代美術館『没後50年 鏑木清方展』最後にご紹介するのは、美人画の大家として活躍した鏑木清方(1878~1972)の日本画約110点を集めた展覧会『没後50年 鏑木清方展』。こちらは3月18日からはじまります。鏑木清方は東京・神田生まれ。浮世絵系の画家に師事したあと挿絵画家としてデビューし、新聞や小説雑誌などの挿絵を手がけます。その後、人物画を中心とした日本画にも取り組み、庶民の暮らしや文学などをテーマに絵画を制作。関東大震災後、清方は再開発で失われていく明治の景色をテーマに作品を描き、代表作のひとつ《築地明石町》が誕生します。明石町は、明治時代に外国人居留地だった場所。本作の背景には洋館の垣根が描かれ、黒い羽織姿の女性の髪形は、明治期に流行した「イギリス巻」になっています。鏑木清方は、先にご紹介した上村松園と並び称されることも多く、特に美人画の雰囲気が似ているので違いがわかりづらいと思う人もいるかと思います。でも、山種美術館の企画展と本展を見れば、その違いがきっとわかるはず。ぜひ、どちらにも足を運んで、じっくりと本物の作品をご覧になってみてください。本展会場の東京国立近代美術館は千鳥ヶ淵にも近く、周辺にお花見スポットがたくさんあります。アートとお花見と一緒に楽しむのもおすすめです!Information御大典記念特別展『よみがえる正倉院宝物―再現模造にみる天平の技―』会期:~3月27日(日)※火曜休館※3月22日は開館会場:サントリー美術館開室時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)※3月20日(日)、3月21日(月・祝)は20時まで開館※いずれも入館は閉館の30分前まで※開館時間は変更の場合があります観覧料:一般¥1,500、大学生・高校生¥1,000『上村松園・松篁 ―美人画と花鳥画の世界―』会期:~4月17日(日)※月曜休館※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館会場:山種美術館開室時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)観覧料:一般¥1,300、春の学割 大学生・高校生¥500、中学生以下無料 (付添者の同伴が必要)『はじまりから、いま。1952ー2022 アーティゾン美術館の軌跡―古代美術、印象派、そして現代へ』会期:~ 4月10日(日)※月曜休館※3/21(月)は開館、3/22(火)は休館会場:アーティゾン美術館開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)※金曜日は20:00まで観覧料:ウェブ予約チケット¥1,200、当日チケット¥1,500、学生無料(※要ウェブ予約)『没後50年 鏑木清方展』会期:3月18日(金)~5月8日(日)休館日:月曜(※3月21日、28日、5月2日は開館)、3月22日(火)会場:東京国立近代美術館1F企画展ギャラリー開室時間:9:30-17:00(金・土曜は9:30-20:00)(入館は閉館30分前まで)観覧料:一般¥1,800、大学生¥1,200、高校生¥700、中学生以下無料
2022年03月13日春爛漫の桜の世界へ。日本初、ダミアン・ハーストの大規模個展『ダミアン・ハースト 桜』とは?ダミアン・ハースト《神聖な日の桜》2018年カルティエ現代美術財団コレクションPhotographed by Prudence Cuming Associates Ltd©Damien Hirst and Science Ltd. All rights reserved, DACS 2022『ダミアン・ハースト 桜』イギリスを代表する現代美術家の巨匠ダミアン・ハースト。彼は30年以上のキャリアの中で絵画や彫刻、インスタレーションと様々な手法で芸術、宗教、科学、そして生や死といったテーマを深く掘り下げてきた。なかでも彼が特に見つめてきたのが死。彼の名を聞いて〈Natural History〉という、死んだ生物をホルマリン漬けにしたシリーズ作品を思い浮かべる人もいるだろう。そんな彼の最新作〈桜〉のシリーズでは、19世紀のポスト印象派や20世紀のアクション・ペインティングなど、西洋絵画史の成果を独自に解釈し、色彩豊かでダイナミックな風景画を完成させている。昨年、カルティエ現代美術財団は本シリーズを世界で初めて紹介し、国際的に高い評価を得た。そして今春、ついにこの作品が日本に上陸。日本初のハーストの大規模個展となる。「本展は昨年7月から今年1月までパリで開催されていたもの。現地で大好評だったこの展覧会の日本開催をカルティエ現代美術財団より提案いただきました。ハーストの最新作を日本で紹介することに大きな意義を感じています」(国立新美術館主任研究員・山田由佳子さん)本展では107点から成る〈桜〉のシリーズからハースト自身が24作品を選抜。天井高8m、2000平方メートルの展示室の開放的な空間を生かし、大きいものでは縦5m、横7mを超える風景画の配置を彼自身が考案。大迫力の展示空間を作り上げている。「〈桜〉のシリーズは美と生と死についての作品です」とハースト。桜という具体的なモチーフを使いながら、作品は具象と抽象の間を常に揺れ動く表現に。その絵画世界は、生や死、さらに再生を感じさせる。一歩会場に入れば、咲き誇る桜の下に身を置いた時のように春爛漫の気分を満喫できるはずだ。ダミアン・ハーストのスタジオ風景ダミアン・ハースト2019年Damien Hirst1965年、英国ブリストルに生まれ、’84年からロンドン在住の英国を代表する現代美術家。’90年代に頭角を現してきたヤング・ブリティッシュ・アーティストと呼ばれる存在の代表。’95年、ターナー賞受賞など受賞歴多数。『ダミアン・ハースト 桜』国立新美術館 企画展示室2E東京都港区六本木7‐22‐2開催中~5月23日(月)10時~18時(金・土曜は~20時、入場は閉館の30分前まで)火曜(5/3は開館)休一般1500円ほかTEL:050・5541・8600(ハローダイヤル)※『anan』2022年3月9日号より。取材、文・山田貴美子(by anan編集部)
2022年03月08日『エーミールと探偵たち』『飛ぶ教室』『ふたりのロッテ』などの児童文学作品を筆頭に、世界的に知られるドイツの詩人、作家のエーリヒ・ケストナー。第二次世界大戦後、戦いや争いをやめない人類を彼の絵本『動物会議』では痛烈に批判。ケストナーはユーモアと皮肉を絵本に込め、人類が抱える大きな課題をわかりやすく訴えた。「争いをやめ、未来のため、子どもたちのために、大人たちが話し合う」という彼の問題提起は、作品の出版から70年以上が経った今日の世界にも通じると、本展は企画された。愛らしい動物たちが伝える、人間への痛烈なメッセージ。会場でまず目を引くのは、『動物会議』を描いたヴァルター・トリアーの原画(複製)の展示。カナダのオンタリオ美術館に所蔵されている原画と寸分違わぬサイズ&画質で用意された本品は、簡潔でふくよかな線、親しみやすい表現で描かれた動物が可愛らしい。見る人を惹きつけ、想像の世界へと誘ってくれる。さらに本展では、ケストナーのメッセージを現代へ問いかけるべく、様々な分野で活躍する8人のアーティストたちが集結する。『動物会議』のストーリー8場面を、絵画や立体、インスタレーション、映像などの手法で全員がリレーして描き出した。物語はチャド湖のライオン、ゾウ、キリンの集まりからスタートする。動物会議の招集、へんてこな動物ビルへの移動、人間と動物の会議や駆け引き、そして最後に動物たちがとった一手とは……。参加アーティストは絵本作家のヨシタケシンスケ、アニメーション作家の村田朋泰、画家のjunaida、イラストレーターの秦直也、映像作家の菱川勢一など、子どもと縁深く活躍する気鋭の作家が勢ぞろい。彼ら現代作家がミュージアムの空間全体をフルに使って紡ぎ出す、現代版『動物会議』に注目したい。What’s?『動物会議』1949年、エーリヒ・ケストナーとチェコ生まれの挿絵画家ヴァルター・トリアーが共に作り上げた絵本。第二次世界大戦後、各国の首脳は世界平和のために国際会議を重ねるが、成果が上がらない。それを見て怒った動物たちが自分たちで会議を開き、人間に平和の道を示そうと試みる名作。「どうぶつかいぎ展」メインビジュアル1.「闇の世界夢の世界」junaida/2021年ボローニャ国際絵本原画展をはじめ数々のコンクール受賞歴を持つjunaidaの描き下ろし作品が。2.「無題」秦直也/2021年シャープペンシルで描く繊細な動物のイラストで有名な秦直也作品も登場。3.「ケストナーとトリアー」ヨシタケシンスケ/2021年絵本作家ヨシタケシンスケは長年の盟友だったケストナーとトリアーの関係を作品で紹介。4.「めざせ動物ビル」村田朋泰/2021年へんてこな動物ビルに集う動物たちをアニメーション作家・村田朋泰は得意のコマ撮り映像で表現。どうぶつかいぎ展PLAY! MUSEUM東京都立川市緑町3‐1GREEN SPRINGS W3‐2F開催中~4月10日(日)10時~18時(平日は17時まで。入場は閉館の30分前まで)2/27休一般1500円ほかTEL:042・518・9625※『anan』2022年3月2日号より。文・山田貴美子(by anan編集部)
2022年02月28日黒塗りの画面に亡霊のような顔が浮かびあがる絵など、心に深く突き刺さる作品を数多く残した画家、香月泰男(1911-1974)。彼の生誕110年を記念した展覧会『香月泰男展』が、練馬区立美術館で開催中です。画家から兵隊になり、戦後はシベリアに送られ、帰国後再び画家に戻った香月は、自身のつらい体験を20年以上も描き続けました。展覧会の様子と彼の人生をあわせてご紹介します。画家として認められたが…【女子的アートナビ】vol. 236香月泰男は、代々医業を営む家の長男として山口県に生まれます。幼いころから絵を描くのが好きで、20歳のとき東京美術学校(現・東京藝術大学)西洋画科に入学。学生時代は、ピカソやゴッホの作品などから影響を受けます。卒業後は、美術教師として北海道に赴任。その後、故郷の山口県にある女学校に転任し、教師をしながら公募展に絵を出品していきます。27歳で結婚し、1939年には第一子が誕生。また、文部省美術展覧会で特選を受賞するなど、画家としても認められはじめましたが、そのころ第二次世界大戦が勃発していました。中国からシベリアへ…1942年に召集令状を受け、翌年、32歳のとき満州国(現・中国東北部)に配属されます。絵具箱を持っていった香月は、軍務の間にも絵を描き、また家族あてにスケッチ入りの郵便を数百通も出していました。終戦後の1945年11月、香月はシベリアの収容所に送られます。極寒のなか、森林伐採や運搬作業など過酷な重労働に従事。食糧事情もかなり悪く、多くの収容者たちが亡くなります。2年間の抑留後、1947年に帰国。香月は山口の学校に復職し、油彩画も描きはじめます。戦争体験のほか、草花や食材など、さまざまなテーマで描きながら、技法の研究にも取り組みました。しだいに作品に使われる色彩が限られるようになり、モノトーン系の画風になっていきます。悪夢のような体験をアートに…1959年から、香月は兵役とシベリアの経験を本格的に描きはじめます。現地で見た景色や強制労働の様子を描いたもののほか、私刑にされた日本人の姿、収容所で亡くなった仲間の顔など、苛烈な作品も制作。悪夢のような体験をした香月にとって、この重いテーマをアートにするまでには長い時間が必要でしたが、1960年代以降、シベリアの作品が一気に増えていきます。例えば、黒い塊に足が生えたような作品《運ぶ人》(1960年)は、60キログラムもある麻袋を運んでいる抑留者の姿を描いたものです。近くで見ると、黒い部分に亡霊のような顔が浮かんでいます。「シベリアの画家」に香月が描いた戦争・抑留体験の絵は注目されはじめ、1967年には画集『シベリヤ』を刊行。それらの作品は「シベリア・シリーズ」と呼ばれるようになり、香月は「シベリアの画家」として評価を確立していきます。晩年になると、黒や茶色のモノトーン系の作品に少しずつ色が戻りはじめます。特に、鮮やかな青を使った作品は印象的。《青の太陽》(1969年)は、戦争中、匍匐(ほふく)前進の演習をしていたときに見た地面のアリの巣から着想した作品で、地中から空を見上げる構図になっています。新たな画風が表れはじめた1974年、心筋梗塞により急逝。62歳でした。心が震え続ける…この展覧会では、香月の作品が制作順に展示されています。情感豊かな戦前の作品から、どのように画風やテーマが変わっていったのか、その流れを画家の人生と重ね合わせながら見ることができます。テーマも画面も重々しいものが多いのですが、目をそむけたくなるような残酷さは感じられません。恐怖や苦痛、鎮魂、祈りなど画家のさまざまな思いがアートに昇華され、作品の前に立つと、静かな感動が押し寄せてきます。美術館を出てからもその余韻は残り、ずっと心が震え続けました。会場には、香月が残した言葉もところどころに記されています。ぜひ足を運んで、作品を通して画家の思いを感じてみてください。Information会期:~3月27日(日)※途中展示替えあり前期:~3月6日、後期:3月8日~3月27日※休館日は月曜日。ただし3月21日(月・祝)は開館、3月22日(火)は休館会場:練馬区立美術館開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)観覧料:一般¥1,000、大学生・高校生、65歳~74歳¥¥800、中学生以下、75歳以上は無料その他割引制度あり
2022年02月27日2010年のデビュー以来、作品制作と並行して、数々のクライアントワークに携わってきた写真家・映像監督の奥山由之さんが、12年間の仕事をまとめた『BEST BEFORE』を刊行。ポカリスエットをはじめとする広告写真、米津玄師や星野源などのアーティスト写真、エディトリアルワークなど、見た人の記憶に残る一枚が詰まっている。出来上がったばかりの写真集を手にした奥山さんは、「12年間のいろんな思い出が蘇ってきて…。まずはクライアントの方や媒体の方、スタッフの方、被写体の方、一緒に物作りをしてくださったみなさんに、感謝の気持ちでいっぱいです」と、感慨深げな表情を浮かべた。「ポスターや雑誌など、世の中に初めて出た時とは違った見え方にならないと本にする意味がないと思い、一度、一点ずつの写真に解体し、再構築しました。基本的には感覚で、時に言語的に組んだレイアウトもあるのですが、クライアントワークとして撮影した写真の、明確にある個性や目的を取り払う作業が難しかったです。でも、企画も撮影時期も被写体も異なるのに意味がリンクしている写真もあり、奇跡的に感じました。今、出来上がった一冊を見て、自分で言うのは恥ずかしいですが、素晴らしい仕上がりです。アートディレクターの平林(奈緒美)さんには、挑戦しているエッジーな様相はありつつも、アーカイブとして機能している整頓されたものにしたいと依頼しました。サイズ等含めて、重厚感とユーモアが共存したベストなものになりました」『BEST BEFORE』とは、「賞味期限」の意味。「クライアントワークは作品制作とは違い、広告なら商品、雑誌なら服やタレントさんと伝えるべきものが起点になり、それを伝えるための機能として写真が存在します。写真は見る時どきによって見え方が変わるものなので、そういう意味でクライアントワークには、最大限に機能を発揮するタイミングがあると思ってつけました。ただ、賞味期限は決して消費期限ではない。そうした意図の違いを伝えたかったんです」クライアントワークに取り組むうえで大切にしているのは、真摯に向き合い、期待に応えること。「“奥山に頼んでよかった”と思ってもらいたいんです。なぜ僕なのかということを理解したうえで、全力を尽くす。この一冊を見ていただくと、写真の手法やアプローチ、スタイルがバラバラなことがわかると思います。その理由は、オーダーメイドのような感覚で、一つ一つの仕事における最適な答えを導き出そうと、新しいトライをしているから。同じクライアントさんでも打ち出したい企画意図は毎回違うので。独りよがりに撮っているから作家性があり、それを一冊にまとめたと思う人がいるかもしれませんが、僕の場合は逆です。一人から出てくるものやアイデアは、そんなに種類がないと思っているし、自分が得意ではないことをやるべき時もあります。僕が撮った写真は、クライアント、スタッフ、被写体の方々と物作りを突き詰めていく過程で生まれた、コミュニケーションの痕跡だと思っています。真剣に考えているからこそ、『こうしたほうがいい』と議論もするけれど、コミュニケーションを交わしたことにより、たとえ結論が最初と変わらなかったとしても、出来上がったものの質量は違いますから」被写体となる人やモノとのコミュニケーションも大事だと奥山さん。「クライアントワークで撮られた写真は、見る人に伝える目的が明確であるがゆえに情報的になりすぎて、被写体が一面的に見える場合が多い印象があります。でも、世の中に存在している人やモノは、もっと多面的で表裏一体だったりする。僕は、そのことを写したい思いがあるんです。そのためには、まず、撮影前に被写体のインタビューを読んだり、作品を見聞きして相手のことを掘り下げる。そして、コミュニケーションや会話を交わし、信頼してもらい、相互理解を深めるようにしています。作家性があるといわれている方々は、実は、他者を理解する力に優れていると思うんです。これは写真や映像に限らず、例えば陶芸をやっている人であれば、土の気持ちを感じ取っているでしょうし。すごく大事なことだと思っています」POCARI SWEAT「踊る修学旅行」篇(2017)米津玄師 アーティスト写真(2020)『BEST BEFORE』クライアントワークに焦点を絞った今作の作品総数は400点以上、500ページを超える。アートディレクションは平林奈緒美さん。「寄稿文やクレジットも、見たことのないレイアウトに」(奥山さん)。青幻舎8800円おくやま・よしゆき写真家、映像監督。1991年1月23日生まれ、東京都出身。第34回写真新世紀優秀賞受賞。主な写真集に『BACON ICE CREAM』(PARCO出版)など。※『anan』2022年2月23日号より。写真・土佐麻理子(奥山さん)インタビュー、文・重信 綾(by anan編集部)
2022年02月19日27年の沈黙を破り、あの大芸術家が帰ってくる。その名は楳図かずお。「グワシ!!」の決めポーズで知られるギャグ漫画の主人公まことちゃんの生みの親であり、『おろち』など一連のホラー漫画で一世を風靡した漫画界の巨匠が、85歳にして新作をひっさげ展覧会『楳図かずお大美術展』を開くという。目玉は101点の連作絵画「ZOKU‐SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」。1982~1986年に連載された『わたしは真悟』の続編であり、B4サイズ(漫画原稿用紙と同じ大きさ)の紙にアクリル絵の具で描かれている。「最初に見たのは鉛筆で描かれた素描。タッチの一つ一つからアーティストの原初的なエネルギーや情熱が直接的に伝わってきました」と本展キュレーターを務める窪田研二さん。一方、それらを一枚一枚コピーし、着彩したものからは、さまざまなチャレンジが窺えるという。「細かな筆致もあればアクションペインティングのように大胆な筆遣いもあり、飽きさせない。蛍光色や金色が入る独特の色使いも魅力です」ペンを筆に持ち替え、「画家」として、思う存分腕を振るった新境地。会場ではカラー作品を鑑賞した後、アーティストの冨安由真が手掛ける幻影的な空間の中で、モノクロの素描101点とも対面できる。さらに本展では作家の歩みをたどる代表作として『わたしは真悟』のほかに『漂流教室』(1972~1974年連載)、『14歳』(1990~1995年連載)にフォーカス。「この3作品には私たちの生活に直接結びつくような状況が凝縮して描かれています。意識を持つようになったロボット、環境が破壊され荒廃した地球に教室ごとタイムスリップした小学生たちのサバイバル、培養肉を作る工程で、突然変異により生まれた鳥人間、ウイルスの蔓延など、極めて現代的なリアリティを持つ作品ばかり。楳図さんのシャーマン的ともいえる予見性に驚かされます」しかし、物語は決して終末的な絶望で終わらない。主人公の少年少女たちが勇気を振り絞り、力を合わせて現実に立ち向かう姿は胸を打つ。「楳図さんにとって子どもとは、純粋性の象徴なのかもしれません。勇気や愛を発露させることができる存在として、希望を込めて描かれているのだと思います」「わたしは真悟」小学6年生の悟と真鈴は工場で出会った工業用ロボットに言葉を教える。やがてロボットは自らを「真悟」と呼び始め…。インターネット社会やAIの到来を予見したといわれる傑作。上は東京タワーから飛び降りようとする二人を描いた場面。©楳図かずお/小学館「ZOKU‐SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」そもそも「漫画とは物語を語る絵画である」と楳図さん。本展のために4年かけて連作絵画を描き上げた。芸術家のパレットから生まれる独特の色彩が描き出す、悟と真鈴のもう一つのストーリーに引き込まれてしまう。101枚すべてがメインディッシュだ。楳図かずお《ZOKU‐SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館》(一部)2021年アクリルガッシュ、紙©楳図かずおうめず・かずお小学4年生で漫画を描き始め、高校3年生でデビュー。“ホラー漫画の神様”と呼ばれる一方、ギャグ漫画やSF漫画でも異才を発揮。『漂流教室』で小学館漫画賞、『わたしは真悟』で仏・アングレーム国際漫画祭「遺産賞」受賞。『楳図かずお大美術展』東京シティビュー東京都港区六本木6‐10‐1六本木ヒルズ森タワー52F開催中~3月25日(金)10時~22時(入館は21時30分まで)会期中無休一般2200円ほか※日時指定事前予約推奨TEL:03・6406・6652※『anan』2022年2月16日号より。取材、文・松本あかね(by anan編集部)
2022年02月14日話題のドラマや舞台などで活躍中の俳優、杉野遥亮さんが、『ミロ展―日本を夢みて』の展覧会ナビゲーターに就任!今回、音声ガイドの収録を終えた杉野さんに、アート体験やご自身の活動などについて語っていただきました。杉野遥亮さんが展覧会ナビゲーター!【女子的アートナビ】vol. 235東京・渋谷のBunkamura ザ・ミュージアムで開かれる『ミロ展―日本を夢みて』では、スペインが生んだ巨匠、ジュアン・ミロ(1893-1983)の初期作品や代表作を展示。さらに、日本好きのミロが所有していた民芸品や、日本と深いつながりを示す資料なども含め、約130点の作品と資料が紹介されます。ミロが生まれたのは、スペイン・カタルーニャ地方にある都市バルセロナ。1888年に当地で開かれた万国博覧会の影響で、ミロの幼少期にもジャポニスム・ブームが続いており、生家近くには日本美術の輸入販売店もありました。日本にあこがれて育ったミロは、美術学校で学んだあと、画家として創作活動を開始。浮世絵をコラージュした作品を制作するなど日本への興味は尽きず、また、第二次世界大戦後は日本でもミロの展覧会が開かれるようになり、彼は二度も来日しています。本展では、相思相愛となったミロと日本の関係を、作品や資料を通して楽しむことができます。杉野遥亮さんにインタビュー!――まず、『ミロ展―日本を夢みて』のナビゲーターに就任されたご感想をお聞かせください。杉野さん光栄です。とってもうれしいし、このような経験ができたことは自分にとって、とてもよかったなと思っています。その“就任”という言葉、なんだかいいですね。――音声ガイドの収録もされたのですよね。いかがでしたか?杉野さん音声ガイドの収録は、はじめての経験でした。良いものをつくりたいという意識で臨みましたが、結果的に、それがどうなっているのか、自分でも気になります。この仕事でインプットできるものがとても多くありましたし、良い経験となりました。――展覧会がはじまったら、ご自身で音声ガイドを聞いてみたいですか?杉野さんそうですね、聞きながら作品を見てみたいです。でも、内容は知っているので、自分の仕事を確認する感じになっちゃいますね。どうして日本を愛してくれたのか…――特に見てみたい作品はありますか?杉野さん全部見てみたいです。(展覧会チラシを見ながら)この絵(《ゴシック聖堂でオルガン演奏を聞いている踊り子》)とか、あと新聞など切り貼りしたコラージュ作品も気になります。でも、資料だけではわからないので、ちゃんと展覧会で実物を見てみたいなと思いました。――この展覧会には、誰と行きたいですか?杉野さんひとりがいいです。展覧会で、自分が何かを感じたり思ったりするときに、誰かに対して意識がいくと集中できないので……。じっくり、ひとりで見てみたいです。――ミロは日本好きとのことですが、ミロの作品を通して、日本を感じられそうでしょうか?杉野さん日本を感じる、というところまでいくのかどうかはわからないけど、ミロがなんで日本をリスペクトしてくれたのか、どうしてこんなにも日本を愛してくれていたのか、という点は、自分で調べたり感じたりしてみたいです。それが、改めて日本の文化に目を向けて見る、ということになるかもしれません。相思相愛のお相手とは…――ミロは書道風の絵も描いています。杉野さんも、書がとてもお上手ですよね。杉野さん書道は、今はやっていないです。昔も、特に習っていたわけではありません。――以前ラジオ(『杉野遥亮の今夜もオフトーク』『杉野遥亮の「今度は長ズボン」』)で、小学生のころ何度か書道で金賞をとったと話されていたのを聞きました。ほかにも、英語のコンテストにも選ばれたとか。杉野さんあれっ、僕、ラジオで話しましたか!その話は、僕の「あるある」なのです。不思議なのですが、いつも“やっつけ仕事”みたいに「はい!」と提出したものが、たまたま評価されてしまうんです。英語も、スピーチコンテストに出るということを口実にして、みんなで部活をサボろうとしたのですけど、なぜか僕だけ受かってしまって。結果的に、夏休みは部活のあと、英語の練習もしなければならないという超ハードスケジュールになりました。サボろうとしたので、バチがあたったんです(笑)。――いやいや、書道でも英語でも、賞をもらえるというのは本当にすごいことだと思います。ところで、この展覧会には「ミロと日本は相思相愛」というキャッチフレーズがあるのですが、杉野さんの相思相愛体験について、教えていただけますか?杉野さんえーっ、相思相愛ですか……。人、ですよね?誰かなぁ。あ、でも以前、テレビの仕事でバルセロナに短期滞在していたときに、僕は相思相愛だと思っていましたよ、蝶野正洋さんと(笑)。――なるほど、蝶野さん!お二人で共同生活をするという番組ですよね。確かに、楽しそうでした。バルセロナでは、アート体験もしましたか?杉野さんバルセロナは、芸術のなかに住まわせていただいた感じだったので、それが当たり前になっていました。今となれば、とても貴重な経験だったし、ちゃんと目に焼き付けるべき場所だったと思います。本当に贅沢な環境でしたよ。だって、歩いていたら世界遺産があるのですから。サグラダ・ファミリアをはじめ、いろいろなガウディの建築物が見られますし、町中にアートがあふれていました。『恋です!』出演で味わったこと――2021年は、さまざまなドラマや舞台でご活躍でしたが、印象に残った出来事を教えていただけますか?杉野さん2021年は、全体通して、すごく駆け足でした。いろいろなことを経験させてもらい、どの仕事にも愛着があります。初めて舞台に立つ経験もしましたし、そのあとは『恋です!』に出て、いろいろな人に自分のことを知ってもらえました。初めて小さい子どもに声をかけられたり、おじいちゃんに「見てるよ」といってもらえたり。温かい気持ちになりました。――2022年になったばかりですので(取材時は1月初旬)、今年の抱負も聞かせていただけますか?杉野さん自分のペースで、自分の軸をぶらさずにやっていけたらいいなと思います。忙しかったり、疲れたりしているときは、どうしても自分自身に戻れない時間、自分がわからなくなる瞬間があるので、そういったときに、どうやって自分を保てるのか、というのが目標かなと思っています。――社会貢献にご興味がある、というお話も以前されていましたが、今年やってみたいことはありますか?杉野さん興味はあるのですけど、実際にそれができるのは、まだ自分的にはもう少し先かなと。まだ、自分のなかでも人間的に確立されていない部分があったりとか、ちゃんと整っていないことがあったりするなかで、人のために何か、というのはまだ自分には早い気がしています。時機がきたら、ですね。――杉野さんの言葉には、誠実さがあふれていますね。ラジオを聞いていてもステキな言葉が多いです。実は、心に響いた杉野さんの言葉をリストアップしているのです。杉野さん(リストを見て)へぇ、これ、すごい!でも、こういうのは、自分から出た言葉でも、自分だけでつくった言葉ではないですからね。誰か、例えば番組にメッセージをくれるリスナーさんと心を通わせてわかったこととか、例えば父親からもらった言葉とか、そういうものなので。――今のお話も、とてもステキです。最後に、展覧会を見る読者のみなさんにメッセージをいただけますか?杉野さん『ミロ展』は、展覧会に足を運ぶことが好きな方も、そうでない方も楽しめるようになっていますし、魅力がつまっています。何か気持ちをもらえたり、感じるものがあったり、人それぞれかもしれないけれど、受けとめられるものが何かあると思います。こんな時期だからこそ、芸術に触れることをしていただきたいなと思います。――ありがとうございました!インタビューを終えて…小顔で背が高く、信じられないほどスタイルの良い杉野さん。話し方に誠実なお人柄が表れ、どんな質問にも丁寧に答えてくれました。インタビュー中はクールで落ち着いた雰囲気でしたが、雑談になると表情が少年のような雰囲気に変化。そのギャップがまたステキでした。『ミロ展』では、声も「イケボ」な杉野さんが収録した音声ガイドを聞きながら、ぜひ作品を楽しんでみてください!※展覧会の最新情報など詳細は、公式サイトをご覧ください。Information会期:2月11日(金・祝)~4月17日(日)※2/15(火)、3/22(火)は休館会場:Bunkamura ザ・ミュージアム開室時間:10:00-18:00(入館は17:30まで)毎週金・土曜日は21:00まで(入館は20:30まで)観覧料:一般¥1,800(¥1,600)、大学生・高校生¥1,000(¥800)、中学生・小学生¥700(¥500)※カッコ内は前売り券の価格です。※会期中すべての土日祝および4月11日(月)~4月17日(日)は事前に【オンラインによる入場日時予約】が必要です。※状況により、会期、開館時間、日時指定予約対象日等が変更となる可能性があります。ご来場の際は最新情報を公式サイトにてご確認ください。
2022年02月02日東京ステーションギャラリーで『ハリー・ポッターと魔法の歴史』展が開かれています。本展では、ファンタジー文学の世界的ベストセラー「ハリー・ポッター」シリーズの背景にある「魔法」をテーマに、大英図書館が所蔵する貴重な資料や原作者J.K.ローリングの直筆原稿、スケッチなどを展示。物語の世界にどっぷり浸れるステキな展示空間をご紹介します!東京駅から魔法学校へ!【女子的アートナビ】vol. 235『ハリー・ポッターと魔法の歴史』展の会場は、東京駅丸の内駅舎内にある東京ステーションギャラリー。この美術館には、物語に出てくる「9と3/4番線」のような、東京駅創建当時(1914年)の赤レンガが残る趣のある展示室もあり、「ハリー・ポッター」の世界を楽しむには絶好のロケーションです。展示は10章で構成。ハリーが通ったホグワーツ魔法魔術学校の科目「魔法薬学」「錬金術」「呪文学」「天文学」などに沿って、大英図書館が所蔵する貴重な資料やJ.K.ローリングの原稿、スケッチなど約140点が紹介されています。「ハリー・ポッター」とは、主人公である魔法使いの少年ハリーが、ホグワーツ魔法魔術学校で学んだ魔法や魔術を駆使して仲間たちと協力し、邪悪な魔法使いと戦う物語。スリリングな冒険や、仲間との友情がドラマチックに描かれ、さまざまな魔法アイテムも登場します。担当学芸員の柚花文さんは、「魔法はファンタジーのなかにしか存在しないもののように思えるのですが、実は人類が何世紀にもわたって研究して書物に記録してきた例がたくさんある」と解説。「この展覧会では、大英図書館などの資料を通して、現実に記された魔法の歴史と、物語の創造世界とをつないでいる。このつながりを楽しんでほしい」と語りました。本展は、大英図書館が2017年に企画・開催した"Harry Potter : A History of Magic"の国際巡回展。2017年から2019年にかけてロンドンとニューヨークで人気を博した展示を、いよいよ東京で楽しめます。「賢者の石」のレシピ登場!では、いくつか見どころをピックアップしていきます。展示は、3階の展示室にある第1章「旅」からスタート。J.K.ローリングの本がどのようにして誕生したのか、主人公のハリーの旅立ちとともに紹介されています。作家がタイプした「あらすじ」やスケッチ、原作の挿絵を担当したイラストレーター、ジム・ケイの《『ハリー・ポッターと賢者の石』の9と3/4番線の習作》などが展示されています。第3章「錬金術」では、必見作『リプリー・スクロール』が登場。これは16世紀にイングランドで記された写本です。科学が発展する以前、ヨーロッパでは、卑金属を黄金に変えたり、不老不死の薬を生み出したりすることができる「賢者の石」のつくりかたを真剣に研究していました。4メートルを超える『リプリー・スクロール』には、その製造工程が美しい色彩で描かれています。ほかにも錬金術関係の資料や絵画、書物を展示。物語のなかでも重要な役割を果たす「賢者の石」のリアルな歴史がわかります。“美”魔女も…!第6章「天文学」では、レオナルド・ダ・ヴィンチの手稿「天体にまつわるメモとスケッチ」や、太陽系の模型「大太陽系儀」、「天球儀」などを展示。特に、側面に装飾が施された「大太陽系儀」は大変美しく、見ごたえがあります。「大太陽系儀」は昔から教材に使われ、ホグワーツ魔法魔術学校でも天文学や星座占いで使用されています。資料類だけでなく、絵画も楽しめます。第8章「闇の魔術に対する防衛術」では、イギリスの画家、ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスの作品《魔法円》が展示されています。中世ヨーロッパの魔女は、醜悪なイメージで描かれることが多かったのですが、ウォーターハウスの魔女は青く美しいドレスを身につけ、神秘的な美人風に描かれています。彼女は、身を守るために杖で周囲に円を描き、魔法円の外には不気味な動物や頭蓋骨が見えています。「ハリー・ポッター」のなかでも、ハーマイオニーが円を描きながら保護呪文をとなえる場面が出てくるので、この作品でも物語世界とリアルな魔法史とのリンクが感じられます。創作の秘密も…!原作ファンにとってうれしいのは、J.K.ローリングの創作資料やスケッチの展示作品です。特に、最後の章で展示されている「『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』の構想」は必見作のひとつ。時系列で登場人物の居場所などが書いてある資料で、名作が生まれるまでの試行錯誤が伝わってきます。リアルな魔法の歴史を紹介する本展を見終わると、きっともう一度、原作で「ハリー・ポッター」を読んでみたくなるはず。今まで以上に、物語世界をより深く理解でき、楽しめると思います。『ハリー・ポッターと魔法の歴史』展は3月27日まで開催。※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。Information会期:~3月27日(日)会場:東京ステーションギャラリー開館時間:10:00 - 18:00※金・土曜日は20:00まで開館※入館は閉館30分前まで観覧料:一般¥2,500、高校・大学生¥1,500、小・中学生¥500※日時指定予約制※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2022年01月15日IDÉE とのコラボなど現在も注目を集める99歳の染色家・アーティスト、柚木沙弥郎(ゆのきさみろう)さん(1922~)。彼の展覧会『柚木沙弥郎life・LIFE』が、立川のPLAY! MUSEUMで開かれています。染色作品や絵本原画が並ぶ展示空間は、ワクワク感であふれています!どんな展覧会?【女子的アートナビ】vol. 234『柚木沙弥郎life・LIFE』では、創作活動70年超のアーティスト、柚木沙弥郎さんの作品約150点を展示。温かみのある布作品や、ほっこりする絵本原画、ユーモラスな人形など、彩り豊かな世界が広がっています。柚木さんは、作品制作だけでなく商業意匠も手がけています。最近ではインテリアショップ、IDÉEとのコラボが注目されましたが、ほかにも数多くのデザインを担当。日本各地でロゴやパッケージなどを制作しています。調べてみたところ、筆者の自宅近くにある民藝品店の看板や、よくお取り寄せする和菓子店の包装紙も柚木さん作と判明。きっと、みなさんの身近なところにも柚木さんデザインがあるはずです。本展では、誰もが親しみを感じられる柚木さんの作品群が一堂に集結。優しくて温かい「柚木ワールド」にたっぷりと浸れます。学徒動員、染色家転身、パリで成功…柚木さんは1922年、大正時代に東京・田端で誕生。父親は洋画家で、幼いころから絵を描くのが大好きだった少年は、東京帝国大学(現・東京大学)文学部美学美術史科に入学します。1943年、学徒動員で兵隊となり、終戦後は岡山の大原美術館に就職。そこで柳宗悦の民藝運動に出会い、美術館をやめて工芸・染色の道に進みます。1950年、女子美術大学の専任講師に就任。学生を指導するかたわら、染色家としてさまざまな作品を制作し個展も開きます。1987年には、同大学の学長に就任。1991年に退職した後は絵本原画も手がけ、染色、デザイン、造形など幅広いジャンルで活躍しています。また、柚木さんは国内だけでなく海外でも精力的に個展を開き、2014年にはフランス・パリのギメ東洋美術館で大規模な展覧会を開催し、大きな成功を収めます。99歳になる現在も、毎日絵を描くなど創作活動を続けています。ワクワクする作品がいっぱい!では、本展の見どころからいくつかピックアップしてご紹介。まずは、絵本の原画やスケッチなどを展示した「絵のみち」。柚木さんは72歳のとき、はじめての絵本を刊行。その後、ジャズピアニストの山下洋輔さんや、詩人の谷川俊太郎さんと一緒に本を出したり、宮沢賢治の絵本原画を担当したり、絵だけでなくお話も自ら手がけたりと数多くの本を出版しています。会場には、約80点の原画を展示。シカやネコなどの動物たちが楽しそうに飛び跳ねていたり、生き生きとした人物が描かれていたりして、見ているだけでワクワクします。学生時代に戦争を経験された柚木さんには「戦火に散った友人たちの分も、自分は何かしなくてはいけない」という想いが常にあるそうです。どの作品からも、柚木さんの“丁寧に生きる”というメッセージが伝わってくるようです。作家本人が感動…!「布の森」もうひとつの見どころは、約50点の染色作品が天井からつるされた「布の森」。柚木さんの作品は、初期のころは人物や動物などの模様が多く、近年では抽象画風のデザインに変化。会場には、幅広い年代の作品が集まっています。この空間に入ると、色とりどりの布に囲まれ、まさに森の中にいるような感じ。ダイナミックな展示に圧倒されます。床に敷かれている白い砂利も、作品をより美しく幻想的に引き立たせていて、展示室を歩いていると美術館にいることを忘れてしまいそうです。「布の森」の展示空間については、美術館が実施したインタビューで、作家本人が「涙が出るほど感動する」と述べています(※)。まさに圧巻の展示で、どの世代の人が見ても感激すること間違いなしです!キュートなオリジナルグッズも!最後に、ミュージアムショップにもお立ち寄りください。PLAY! MUSEUMのオリジナルグッズや、IDÉEのグッズも購入できます。特にタイルのデザインは、とってもキュート。全種類揃えたくなります。『柚木沙弥郎life・LIFE』は1月30日まで開催。Information会期:~1月30日(日)会場:PLAY! MUSEUM開館時間:平日:10:00-17:00(入場は16:30まで)休日:10:00-18:00(入場は17:30まで)観覧料:一般¥1,500、大学生¥1,000、高校生¥800、中・小学生¥500※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2022年01月10日丘の上の家黒田邸が位置するのは鎌倉でも山と谷間の連なる起伏の激しい地域で、西側には谷をはさんだ向かい側の山に素晴らしい景色が広がる。滅多にお目にかかれないだろうこの景観を見渡せる敷地は丸2年、200件以上の土地を実見したうえで購入を決めたという。「平坦な住宅地はいっさい探さずに、傾斜があってダイナミックな景観が広がるような土地をずっと探しました。それと住宅地から少し離れた奥まったところで静かな場所ということにもこだわりました」(貴彦さん)。東側の少し離れた場所にまた別の山々を望み南側には小さな崖が迫るという変化のあるロケーションもポイントだったそうだ。家の裏(西)側は谷になっている。鎌倉は岩盤が1m程度下にあるため岩盤まで掘って基礎をつくろうと計画したが岩盤までの深さが想定していたほどはなかったため家全体が想定よりも高いレベルにつくられている。ギャラリーのような非日常的な空間設計を依頼したMDSの森さんと川村さんには家づくりのコンセプトをまとめた文章とともにインテリア雑誌の切り抜きからつくったスクラップブックを渡したという。このスクラップブックはよく整理されている上にそれぞれの写真にコメントが付けられていてお2人の目指す世界観がすごく伝わるものだったと森さんはいう。2階リビング側の開口は北側に隣家があるため空に向けて開けられている。床はネコがいるため掃除のしやすいタイルに。幸代さんが選んだものという。方形屋根の下の2階は無柱空間になっている。窓台をつくったのはネコのため。右の収納から移動できる。2階の隅部は吹き抜けになっているが人が立てない高さのため近寄れないうえ、家具が手すりの役目を果たしているので転落の危険はない。2階東側のキッチンを見る。幸代さんは開放感のある明るいキッチンをリクエストしたという。「大きなコンセプトとしては、ホテルかギャラリーのような非日常的な空間をつくってくださいと。とにかく家に帰って気分が上がるような空間をつくってくださいともお伝えしました。居心地が良くて、かつ、生活感の感じられない空間ですね。なので、水回りも全部1階中央の箱の中におさめてもらってベランダもつくりませんでした」(幸代さん)視線が空へと向かうように角度のつけられた開口。ソファの前に置かれたテーブルはアフリカのもの。現地の人がベッドとして使っていたものという。テーブルの下部に見える模様のようなものは人の顔の形に彫られたもの。実はこのお宅、竣工時に一度拝見しているのだが、その際に感じたのはまさしく「居心地が良くて、かつ、生活感の希薄な非日常的な空間」ということだった。そしてこの非日常感は、お2人が集めた骨とう品や美術品が置かれることでさらに増すことになった。建築家には、以前住んでいたマンションでは蒐集したものをディスプレイする空間がなかったためそれらが映えるような空間設計をお願いしたという。階段部分を見下ろす。ソファ側から見る。右の小上がりは今はベッドが置かれているが当初は貴彦さんが使うスペースとして想定されていた。階段途中から見る。蔵書が多いため本は階段部分と1階のライブラリースペースにわけて収めた。北西コーナーにつくられたライブラリー。幅が絞られたこの場所は読書に適した落ち着きのあるスペースになっている。発想を転換してそしてこの「骨とう品などが映えるギャラリー的空間」は2カ月前に本物のギャラリー空間へと模様替えされた。「2人とも美術品が好きで少しずつ古いものを集めていて、この家はそれらを自分たちで楽しもうということで建てた家でもあるんですが、一方で、わたしはギャラリーを経営したいとも思っていて店舗物件を探していたんです。でもタイミング的な問題もあって2年くらい過ぎてしまいどうしようかと思っていた時に、遊びに来る知人が皆さんこの家が“まるで美術館みたいだね”とおっしゃってくださるので“それなら下を開放してギャラリーにすればいい“と発想の転換をして、思い切って1階を予約制のギャラリーにしてみたんです」(幸代さん)。玄関を入ると風除室があるが、これは飼いネコの逃走防止のためのもの。メインのギャラリー側から見る。右が玄関。店名はラテン語で「Quadrivium Ostium」。「十字路の入り口」という意味という。「さまざまな時代のさまざまな場所から縁があって集まってきたものを、また次へと引き継いでいく場所」という思いを込めて名付けたもので、それぞれがもつ「ストーリー性を大切にしていきたい」という。古代のギリシャの壺や後漢の時代の犬を象った像から鎌倉時代の阿弥陀像など幅広い古美術品がしっくりと空間に収まっている。いわゆるギャラリー空間の敷居の高さを感じられないのは「非日常的」とはいえ元々が住空間としてつくられたからだろう。奥の左手の木床の部分がメインのギャラリースペース。このスペースを以前は寝室として使っていた。メインのギャラリースペースの壁にはジョルジュ・ルオーのリトグラフがかけられている。古代ギリシアで紀元前7世紀頃につくられた壺。寝室として使われていたようにはまったく見えない。メインのギャラリースペースに置かれた銅鏡や鎌倉彫の香合など。ユーモラスにも感じられるこの「加彩犬俑」は後漢時代のものという。2階からギャラリースペースを見下ろす。玄関正面のキャビネットには室町時代の獅子・狛犬が置かれ来客を迎える。奥のスペースは南西のコーナーにつくられたアトリエ。幸代さんの希望でつくられたこのスペースも適度な狭さでしっとりと落ち着く。ネコと共生できる家「ギャラリーのような非日常的な空間」とともに大きかったのが、「ネコと共生できる家」というテーマで、黒田邸では実は2匹いるネコのために考えられた仕掛けが随所につくられている。とはいえ、見てそれとすぐわかるネコ用につくられたステップや棚の類はいっさいない。しいていえば1階のトイレの壁に開けられたネコ用の出入り口くらい。幸代さんは「いかにもネコのためにつくりましたとわかるようなものはやめてほしい」と森さんと川村さんに伝えたという。しかしネコも住みやすい空間にしてほしいという、高度なリクエストだ。森さんたちによると家具の間の隙間はネコ用に開けたものだし、家具間の段差もネコのために考えたものという。言われてみてはじめてああそうなのかと気づくようなものばかりだが、これらがネコたちにとってはとっても快適につくられているようで、以前の家よりは明らかにのびのびと暮らしているし、「運動会タイム」になるとぴょんぴょんと家じゅうを走り回って遊び出すという。2階からアトリエ部分を見下ろす。1階は2.1mと天井高が押さえられているが吹き抜けがあるため圧迫感はない。2階からライブラリースペースを見下ろす。説明を受けないとわからないが家具のレベル差はネコのためのもの。右の収納の上にも左の棚からジャンプして移動できる。アトリエから見上げる。2階右隅にネコのために開けた隙間がある。2階の壁・天井も色を付ける希望があったが、白ならきれいに影が映るとの森さんの意見から白にすることに。浴室の壁は細かいタイルが幸代さんの希望で張られている。床は滑って危険なため現状のもので代替した。洗面所の奥にウォークインクローゼットがある。住み始めて2年半が過ぎて・・・「ネコのために家具の高さを変えて段状にしたほかにも、開口や吹き抜けの形の違いとかの2重3重にさまざまな要素が絡み合ったつくりこみ方がすごいなとじわじわと来ています。しかもそれがナチュラルに感じられているので違和感がない」と貴彦さん。「1階をギャラリーにして“自分たちが楽しむ”空間から“人様に楽しんでいただく”空間に切り替わったんですが、その変化にちゃんと耐えられるものだったというところも素晴らしいと感じています」メインのギャラリースペースから見る。左の箱にトイレが、右の箱に浴室・洗面所などが入っている。ともに入口上部がアーチ状になっている。美術展でのカラーリングを参考にして色を付けた壁は黒田夫妻がすべて自分たちで塗ったという。「最初はわからなかったんですが、わたしもこの2年半住んでようやくじわじわと感じはじめてきました」と幸代さん。「主人と同じような話になりますが、ディテールの細やかさ、繊細さをすごく感じるようになりました。2階の天井も光が入るとちょっとした角度の違いによってとてもきれいに見えるんです。そのあたりの美意識のようなものが森さんたちとわたしたちとちょうどマッチして実現できた家なんじゃないかなとも思っています。あと、ギャラリーに変えたように、いかようにも自由に変化できる可能性を秘めた空間、“じゃあ今回はこの部分を引き出そう”とか引き出しがたくさんある空間だなとも感じています」お2人が惚れ込んでいる内部から外へと目を転じると素晴らしい景色を見ることができるが、こちらでも貴彦さんは感嘆する。「家のなかにいても景色がピクチュアウインドウ的に切り取られていて、素敵な景色が家の随所で見られる。切り取り方の巧みさをとても感じています」1階のアトリエからも緑がよく見える。開口の格子はネコの網戸引っ掻き防止のためにつくられている。小上がり部分の開口からはダイナミックな景観が望める。この付近を撮ったカットが先月発売のMDS著『Life &Architecture』の表紙に使われている。黒田邸設計森清敏+川村奈津子/MDS所在地神奈川県鎌倉市構造木造規模地上2階延床面積86.31㎡
2022年01月10日ananやクロワッサンなど、雑誌のタイトルロゴを手がけた堀内氏の原点は絵本作家堀内誠一氏は、マガジンハウスの雑誌anan、クロワッサン、BRUTUS、POPEYE、Oliveのタイトルロゴを手がけた名アートディレクター。しかし、彼の原点は絵本作家。絵本を描くことこそ、最も大切にしていた創作活動でした。ぐるんぱのようちえん©Seiichi Horiuchi堀内誠一氏の生誕90年にあたる2022年に、彼の創作の原点である絵本に焦点をあて、多彩な原画を中心に展覧する『絵の世界』展が開催されます。『ぐるんぱのようちえん』『たろうのおでかけ』『こすずめのぼうけん』など人気作品の原画のほか、雑誌の表紙やデザインの仕事、旅先で描いたスケッチや絵手紙なども合わせて、約150点もの作品を展示し、堀内氏の豊かな創造の世界を味わえる空間となっています。こすずめのぼうけん©Seiichi Horiuchi堀内氏は図案家だった父の影響もあり、子どものころから絵を描くことが好きでした。子ども時代に描いたスケッチや画塾に通いながら描いたデッサン、油絵なども展示。絵本作家になる前から彼の魂の中にあった創作の原点に触れられる場所でもあります。ロボットカミイ©Seiichi Horiuchi「やっぱり生きる喜びっていうのを、絵描きがそれぞれどういう風に描くかってことだと思うんですよね。生きる喜びがなかったら、絵なんか必要ない。描かないんじゃないかな、そもそもの動機として」(堀内誠一さん)堀内誠一生誕90年全国巡回展「堀内誠一絵の世界」は、2022年1月4日の京都を皮切りに、静岡、神奈川、広島を巡っていきます。絵本、雑誌、商業アートなど、多くの人々に影響を与えた堀内誠一氏の絵の世界に、ぜひ触れてみてください。大丸ミュージアム京都2022年1月4日(火)~1月24日(月)075-211-8111クレマチスの丘ベルナール・ビュフェ美術館055-986-13002022年3月19日(土)~7月25日(月)県立神奈川近代文学館045-622-66662022年7月30日(土)~9月25日(日)ひろしま美術館082-223-25302023年夏予定
2022年01月01日デザイナー、アートディレクター、絵本作家として活躍した堀内誠一さん(1932-87)。2022年に生誕90年を迎えることを記念し、彼の画業を振り返る展覧会が開かれます。『堀内誠一絵の世界』展、開催!【女子的アートナビ】vol. 2322022年1月4日から京都の大丸ミュージアムではじまる本展では、昭和時代に多方面で活躍した“レジェンド”デザイナー、堀内誠一さんの「絵の世界」にフォーカス。今なお愛される名作絵本『ぐるんぱのようちえん』をはじめとした多彩な絵本原画を中心に、雑誌の表紙やデザインの仕事、絵手紙など約150点の作品や資料が紹介されます。堀内さんは、『anan』にとっても“レジェンド”。1970年の雑誌『anan』創刊時に、タイトルロゴや表紙、ページネーションを手がけられました。『BRUTUS』や『POPEYE』など多くのロゴも堀内さん作。それらのロゴは今でも愛され、使われ続けています。20世紀の雑誌や絵本などのカルチャー界で多くの偉業を残した堀内さんとは、どんな方だったのでしょう?その画業をざっくりとご紹介します。14歳で伊勢丹宣伝課に入社!1932年、東京に生まれた堀内さんは、図案家だった父親の影響を受け、幼少期から絵を描きはじめます。少年期に第二次世界大戦が勃発。疎開先の石川県で終戦を迎え、東京に戻ります。1947年、14歳という若さで伊勢丹宣伝課に入社。ディスプレイデザインやPR誌の編集作業に取り組みながら、美術研究所に通って絵画も制作。1949年には現代美術会展に出品し、奨励賞を受賞します。堀内さんは、著書『父の時代・私の時代わがエディトリアルデザイン史』(日本エディタースクール出版部)で「私がエディトリアルデザインに興味を持ったのは6、7歳の頃でした」と述べています。幼少期に自分でつくった詩に絵をつけたり、図案を描いたり、さらには雑誌風に編集もされていたとのこと。それらの記録の一部も、本展で展示されます。絵本画家デビュー!その後堀内さんは、クリエイティブ集団アドセンター株式会社でデザイナーとして活躍。雑誌のエディトリアルデザインや化粧品の広告、パッケージデザインなどを手がけます。1958年には、はじめての絵本『くろうまブランキー』を出版し、絵本画家としてデビュー。さらに『ぐるんぱのようちえん』や『たろうのおでかけ』など人気絵本を次々と生み出していきます。驚くのは、これらの本が今でも書店で購入することができ、正真正銘のロングセラーになっていること。1965年に出された『ぐるんぱのようちえん』は、2021年に大江戸線の「子育て応援車両デザイン」にも採用されています。パリに移住!1960年から61年にかけて、堀内さんはヨーロッパを視察。はじめての海外旅行で、フランス・パリを拠点にイタリア、スペイン、ドイツなどの美術館や教会を巡り、コンサートや芝居にも出かけます。帰国後は再びデザイナー、アートディレクターとして雑誌や広告の仕事を手がけ、当時のカルチャー界をけん引。トップランナーとして最先端のトレンドを生みだし、『anan』の創刊プロジェクトにも携わります。1974年、堀内さんは家族とともにパリ郊外へ移住。約7年滞在し、絵本の仕事に専念します。人気絵本『こすずめのぼうけん』が生まれたのもパリ時代。古今東西、さまざまな文化を吸収していた堀内さんの作風は多彩で、物語にあわせた絵柄で数々の絵本を制作していきます。堀内さんの絵本への情熱は格別だったようです。著書『ぼくの絵本美術館』(マガジンハウス)では、「幼児にとって絵本とは何と素晴らしい人間の発明品か」と述べ、同書で絵本の歴史と絵本愛を余すところなく語っています。また、ヨーロッパだけでなく世界中を旅した堀内さんは、風景画や絵手紙、シチリアやパリの地図なども描き残しました。それらの作品も、今回の展覧会で見ることができます。1981年にフランスから帰国。その後も創作活動を続けていた堀内さんは、1987年、下咽頭癌により急逝。享年54歳でした。ぜひ生の作品を!本記事でご紹介したのは、堀内さんの仕事のほんの一部です。展覧会では、子どものころに描いたスケッチや青年期の油絵、絵本原画、デザインの仕事など、生の作品を通して“レジェンド”の偉業に触れることができます。令和の時代まで色あせずに愛され続けている堀内さんの作品たちを、ぜひ会場でご覧になってみてください。展覧会は、大丸ミュージアム京都のあと、クレマチスの丘 ビュフェ美術館、県立神奈川近代文学館、ひろしま美術館などに巡回予定です。参考文献・参考サイト:堀内誠一『父の時代・私の時代わがエディトリアルデザイン史』(日本エディタースクール出版部)堀内誠一『ぼくの絵本美術館』(マガジンハウス)コロナ・ブックス編集部編『堀内誠一旅と絵本とデザインと』(平凡社)Information会期:2022年1月4日(火)~24日(月)※会期中無休会場:大丸ミュージアム〈京都〉[大丸京都店6階]開館時間:午前10時~午後7時30分まで(午後8時閉場)※最終日は午後4時30分まで(午後5時閉場)観覧料:一般・大学生¥1,000、中高生¥800、小学生以下無料※最新情報などの詳細は公式サイトをご覧ください。
2021年12月27日