台湾に移住した二人の女性が、70年以上前に消えた少女を探す“シスターフッド小説”
やがて、秋子はある青年と日月潭という美しい湖を訪れた後、消息不明になったことがわかる。事故か事件か。真相を調べる現代パートと、日記が語る過去パートとを行きつ戻りつ、物語は思いがけない真実へ。
「僕自身も日本の生活に行き詰まりを感じて、廈門(アモイ)で日本語教師をしていたことも。台湾は旅行者として行ったぐらいですが、台湾の風光明媚さや台湾らしい暮らしぶりはなるべくリアルに織り込みたかったんですね。また、日本の旧植民地では、終戦後、より過酷な状況をたどった国もある。そんな歴史が現代と地続きであることもフィクションを通してちゃんと書きたいと思いました。国内には当時の台中市街の資料があまりなく、当たりをつけて書き上げた後で、実際に現地を訪ねて修正を重ねました。
向こうで見つけた台中の歴史散歩本が参考になりましたね」
秋子の消息を追いかけていく過程で、少しずつ己を理解し、成長していくサチコやジュリがまぶしい。
『日月潭(にちげつたん)の朱い花』現在と過去と、日本、台湾、イタリアと。各情景が目の前に浮かぶように鮮やかに描かれていて、ロードノベルのような趣も楽しめる。集英社2200円
あおなみ・あん作家。