「“いい服”は作りたくない」と言い放ち、服作りをする男。
『うちのブランドの服ってかっこいいでしょ』と言わんばかりに上から目線で生産される服が市場にあまりにも多い。お客さんのことを考えて作られている服は少なすぎる」
悲しげにそう言い放った彼が「トップダウン(上から下)」とアパレル業界を表現するのは、アパレルの生産サイクルがあまりにもまだヨーロッパ的だから。
つまり、オートクチュールに代表されるように、着ることができる人が少なければ少ないほど“いい服”、タイトなシルエットで着辛ければ着辛いほど“いい服”、カシミヤなど手に入れるのが難しい希少な繊維で作られていれば“いい服”だということを指している。
(Photo by Reo Takahashi)
そんなアパレル業界がはまった泥沼に「待った」をかけるべく、全く違う畑“テック業界”で行われている消費者を一番に考えた「ボトムアップ(下から上)」の姿勢を、彼は服作りに適用している。
木村氏は、おもむろに手に持っていた「iPhone」を眺めながらボトムアップなモノづくりの良さを説明し始めた。
「アップルのプロダクトはユーザーエクスペリエンス(ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験のこと)