6作目:ユーモアで「難民の現実」と向き合おう。“移民を排斥する世論”を打ち砕くフィンランドの鬼才の話題作『希望のかなた』|GOOD CINEMA PICKS
私がこの映画で見せようとしたのは、難民のことを哀れな犠牲者か、さもなければ社会に侵入しては仕事や妻や家や車をかすめ取る、ずうずうしい経済移民だと決めつけるヨーロッパの風潮を打ち砕くことです
これは世界的に有名なフィンランド出身の映画監督アキ・カウリスマキが、現在日本でも公開されている「難民」をテーマにした映画『希望のかなた』に込めたメッセージの一部だ。独特なユーモアセンスを持つことで知られる彼は、「難民問題」で揺れる世界にどのようなアプローチをとったのだろうか。
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難民の直面する現実を盛り込んだストーリー
舞台はフィンランドの首都ヘルシンキ。内戦が激化するシリアのアレッポから難を逃れようとして国々を渡り、同地にたどり着いた青年カーリドが主人公だ。ハンガリー国境で生き別れてしまった妹との再会を祈りながら難民認定を待っていた彼だが、トルコへ送還されることになり、不法滞在者として留まろうと決意する。そしてネオナチに襲撃されかけたところをレストランのオーナーに助けられ、彼は風変わりな従業員たちとレストランで働くことになる。実際のところ、難民が初めて入国した国が当人の難民申請作業を行なう責任を負うと定められているのだが、カーリドと同様に多くの難民は、逃れてきた人で溢れかえる地では難民申請をせずなるべく難民に寛容な国を目指すのだという。