7作目:偽善的な世の中に波紋を起こす。「命を奪うことを楽しむ人間」の姿を非批判的に描いた映画『サファリ』|GOOD CINEMA PICKS
ことに誇りを持ち、純粋に楽しむハンターたちの姿に嫌悪感を覚える人は多いだろう。しかし、この映画はハンター批判も、動物愛護を押し付けることもしない。自身の非道な行いを「ハンティングが管理された条件で行われている限り、それは合法であり実行可能です。特に、 アフリカのような途上国では、人々はそこからお金を得ることができる。私たちは、通常の観光客が2ヶ月で使う費用を、たった1週間で使っている。ハンティングはすべての者に利益をもたらせている」と正当化するハンターの姿。獲物を仕留めたあとに涙を流しながら抱き合う家族の姿。狩りに出る前に互いに日焼け止めを塗りあう老夫婦の姿。
決してハンターたちを正当化しないが、彼らのなかでは成立している“理論”が垣間見られ、ところどころに誰もが感情移入できるような人間の姿が映し出される。
人間の気持ち悪さやダークな側面をモチーフにした作品がこれまでも多かったザイドル監督。同じくアフリカを舞台にした『パラダイス』 3部作(2012)の1作目『パラダイス:愛』では、売春の相手を求めてアフリカに訪れるオーストリアの孤独な中年女性の姿を描いた。現地の黒人男性をまるで肉の塊かのように話す彼女の気持ち悪さが描写されつつも、自分の生きる社会で女としての価値を失った「中年女性」