人は集団のなかにいても「寂しさ」を感じる。「群集」をテーマに絵を描く男に聞いた、自分との向き合い方
というもの。彼は自身の肩書きを定めていないのだが、アーティストや画家、表現者だと口に出すことで、日常生活で感じる「不確かさ」や「混沌」の先にあるものを追求し作品を生み出すという役割を自分自身に自覚させている。アーティストやフォトグラファーなど表現を職業とするとき、どこからが表現者なのかという境界線がわかりにくいが、名乗ってはじめてそうなれる、という側面があるといっても過言ではないだろう。
ときには、世間のなかにもう少し溶け込んで“まぎれこんでしまえば”楽なのかもしれない、と思うことがあります。でも、実際は人との関わりが複雑な日常に溶け込むと、集団のなかの寂しさを抱えることになります。どのみち人は寂しさや疎外感を抱えて生きているのです。ただそんな気持ちを抱えているのは、生きたいっていう気持ちがあるからではないでしょうか?なので、それらは生きていくためには大事な感情だと思っています
彼の話してくれた「生きていくための大事な感情」という言葉には、他人がどうかという話ではなく、そんなことも含めて等身大の自分自身として力強く生きていこうとする彼の心情が込められている。彼はそんな思いをあくまでも個人的なことのように話してくれたが、それは多くの人にとって普遍的なものであろう。