時代に逆らい「自分がいいと思うもの」を追求してきた“還暦の音楽狂”が、現代の日本の若者へ伝えたいこと
経済がバブルのように膨らみ続け、その恩恵を受けた人々は豪遊し、異常な高揚感が日本に漂っていた80年代、ヨーロッパには違った空気が流れていた。冷戦の影響をダイレクトに受けたヨーロッパ諸国のなかでも一国が西(資本主義)と東(社会主義)の二つに分断されていたドイツは極端だったといえる。経済的に発展し自由を謳う西ドイツとは対照的に、映画や音楽などのカルチャーさえも検閲されていた東ドイツ。ドイツ北東部に位置する都市ベルリンにいたっては町内に存在する大きな壁を境に、西と東に全く異なる世界が広がっていた。西ドイツの住民すら近寄ろうとしない東ドイツのなかの孤島と化したそのベルリンに、ガードの目を盗み西から東へと音楽を“密輸”する、あるイギリス人の男がいた。
ベルリンの壁をすり抜け音楽を“密輸”した男
70年代後半から80年代後半にかけて、自由を謳歌する西ベルリンから厳しく統制された東ベルリンに音楽を“密輸”していた男の名はMark Reeder(マーク・リーダー)。

マーク・リーダー
Be inspired!の姉妹メディアHEAPSでは2017年5月からマークのベルリンでの回想録を半年にわたり連載した。