9作目:「エイズ問題」を見て見ぬふりをする政府や、製薬会社に抗議する若者を生々しくエモーショナルに描いた映画『BPM ビート・パー・ミニット』|GOOD CINEMA PICKS
HIV/エイズと聞いて「死」を連想する人は近ごろでは少ないだろう。だが20数年前ならそうはいかなかった。その時代に死んでいったのは、イギリスのロックバンド クイーンのフレディ・マーキュリー、アーティストのキース・ヘリング、学者のミシェル・フーコー、俳優のジャック・ドゥミなどの著名人を含む多くの人々。社会派の映画を紹介する『GOOD CINEMA PICKS』では今回、そんな時代のエイズ問題を見て見ぬふりをする政府や、抗エイズ新薬の研究結果を出し渋る製薬会社と闘ったアクティビストたちを、ドキュメンタリーのようにリアルに、ハウスミュージックのビートを織り交ぜながら描いた映画『BPM ビート・パー・ミニット』をピックした。
エイズ有効な薬が出回るようになったのは、1995, 1996年になってからだった。それまでは、HIV/エイズに対する理解が世界的になく、同性愛者に対する偏見が根強かったため「エイズ=ゲイ、薬物使用者、刑務所に服役している者、セックスワーカーの病気」と考えられており、対応が見送られてばかり。そんな状況下で生き残った者として、これ以上苦しむ人が増えないように、そして偏見をなくそうと立ち上がったのが、当事者を中心とした若者たち。