12作目: メディアが報道しない、北朝鮮の“普通の暮らし”とは。撮影監督が韓国籍を放棄して挑んだドキュメンタリー『ワンダーランド北朝鮮』|GOOD CINEMA PICKS
また観客を驚かせるのは、北朝鮮の暮らしが他国と比べて非常にサステイナブルなところだろう。地熱発電、風力発電、太陽光発電など自然のエネルギーが推奨されて使われているようだ。さらに農村部の家庭では家畜などの糞から発生するメタンガスを利用して調理したり、畑で余った藁で暖をとったりするなど、使えるものを無駄なく使う循環型のライフスタイルが成立している。国が経済制裁下にあるからこそ、そのような生活をするしかないのだと推測できるが、それは地に足の着いた平和なライフスタイルとして目に映る。
©Kundschafter Filmproduktion GmbH
韓国籍を捨て、北朝鮮公認ドキュメンタリーを撮影した監督
北朝鮮への入国には制限があるし、映像を撮るには許可が必要だ。隠し撮りをしたことや身分を偽っていたことなどが理由で、同国を取材したジャーナリストや監督が入国禁止になったり、逮捕されたりしたことが過去に幾度もある。だが本作の監督チョ・ソンヨン氏は、事前に複数回同国を訪れて取材対象者や取材場所を選び、信頼関係を構築してから撮影したという点で、ほかのドキュメンタリー製作者と異なった。さらに撮影のため、彼女が韓国籍を放棄しドイツのパスポートを取得して北朝鮮に入国したことからは、人々の想像を絶する覚悟と、計り知れない熱意が感じられる。