くらし情報『【シネマモード】逆説的に追及される唯一無二のスタイルを…『トム・アット・ザ・ファーム』』

【シネマモード】逆説的に追及される唯一無二のスタイルを…『トム・アット・ザ・ファーム』

そう。そこを追求すればするほど、きれいごとではすまされないのがこの世。とはいえ、そのビジュアルセンスは隠しようもなく、どんな題材、どんな被写体を撮ろうとも、美しいのがドラン監督の凄いところ。洗練されていない醜悪でリアルな映像ですら、どこかグロテスクな美があるのです。

それにしても、なぜ、方向性を変える必要があったのでしょう。“かなわぬ愛”という、描きたかったテーマを描ききったという達成感があったのでしょうか。彼独自のリズムと繊細な感性で描かれるこの切ないテーマを、ファンとしてはまだまだ見続けたいという思いはあります。でも、同じスタイルを繰り返すことで、崇高な“愛”に手あかがついてしまうのを嫌ったのかもしれません。
引き際というのは、いつも肝心なものですから。

作品にスタンプを押すかのように、自意識が知らないうちに、作品に「これは自分のものだ」と主張するような印を残してしまうのなら、常に進化を望むアーティストたちは、自分の印から離れたいと本能的に感じるのでしょうか。もしかすると、自らの“スタイル上の癖”を認識し、そこから離れようとすることで、より純粋な自分だけのスタイルを見出したいと思うのでしょうか。

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