【シネマモード】正直に人と向き合い続ける…“最期”の奇跡『おみおくりの作法』
日本人にはとてもしっくりきます。ウベルト・パゾリーニ監督はこう話しているそう。「私が視覚的に小津安二郎監督の晩年の作品を参考にしました。そこには日々の生活が静かに、しかし力強く描かれているのです」と。なるほど。小津映画で観られた、静かでシンプル、なのに力強く豊かな人間描写が確かに継承されています。そんな手法だからこそ、死というものを悲劇という単純な視点で片づけることなく、その周囲にある人情と、そこから生まれる希望や温かさをじっくりと映し出すことに成功したのでしょう。
決して逃れることのできない死を意識したとき、救いとなるのはやはり人の心。
誠実に生き、正直に人と向き合うことこそ、死という恐怖の呪縛から解放されるのかもしれません。重く、切ない物語ですが、最後に訪れる奇跡の瞬間に触れたとき、きっと胸が熱くなり、この作品と出会えてよかったと心から思えることでしょう。
(text:June Makiguchi)
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おみおくりの作法 2015年1月24日よりシネスイッチ銀座ほか全国にて公開
(C) Exponential (Still Life) Limited 2012
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