2016年4月10日 07:00
【シネマ羅針盤】境界を超えるヒロイン像…『ルーム』『ボーダーライン』
(Photo:cinemacafe.net)
ブリー・ラーソンが第88回アカデミー賞主演女優賞を受賞した衝撃のヒューマンドラマ<a href="http://www.cinemacafe.net/special/6675/recent/">『ルーム』</a>がついに日本でも公開された。未体験の感動が静かな波紋となって、映画ファンにじんわりと広がることを期待したい、2016年を代表する傑作だ。
映画はある男に誘拐され、7年間“部屋”に監禁された女性と、外の世界を知らずに育った息子が外の世界に決死の生還を果たし、失った時間を取り戻そうと奮闘する姿を描いた。家族愛や母性といったテーマに加えて、緊張感あふれるサスペンスとしての魅力も放つ本作は「部屋/世界」という境界を超えるヒロインを通して、人間の尊厳、人生の輝きを見つめており、世代や性別を超えた普遍的な問題提起が深い余韻を残している。
先月、初来日を果たしたブリーは、記者会見で「ハローで始まり、グッドバイで終わる映画」だと語っていたが、この言葉には「グッドバイの先にある新しい世界」という意味合いが込められている。折しも就職や進学、異動など変化に富んだ春が到来し、その先の自分に不安や戸惑いを隠せない人も多い季節。