【シネマモード】ジム・ジャームッシュからの贈り物は“あたりまえを繰り返せる幸せ”
そんなローラも個性的です。でもパターソンに比べると自信家で意欲的。自分の感性を外に放出しながら生きています。モノトーンが大好きで、自宅のインテリア、洋服、そしてカップケーキまで白と黒に塗ってしまうほど。そして、パターソンに持たせるランチにも、メッセージ代わりにコラージュした写真や、オレンジの皮やお弁当箱にモノトーンの柄を描くなど、参考にしたいアイディアがいっぱい。わかりやすいタイプの個性派で、頑張れば真似できそうなタイプでもあります。
でも、パターソンは違うタイプ。刺激がないと創作できないタイプのアーティストともひと味違います。
バスの運転手として生計を立ててはいますが、心は真のクリエーターで、どんなものからも刺激を受けることができる豊かな感受性の持ち主。彼の生活は、つまらないものの代表格であるルーティーンワークや、誰の周りにもあるもので囲まれていて、彼は平凡の中に特別性を見出しているのです。だから、彼の詩のテーマは、お気に入りのマッチや誰も気に留めないような出来事など、身近なものばかり。同じものを観ているのに、違うものが見える。それこそ、特別な才能のであるように思えるのです。
パターソンの日々を描いた本作には、あたりまえを繰り返せる幸せに溢れています。