実際のノマドが「旧友に再会したよう」『ノマドランド』の場に溶け込む撮影手法
カメラはノマドに固定されたきりになります。心おきなく話ができるように、十分な時間、話しやすい環境、気遣いが用意されました。このシーンによって『ノマドランド』の核心に達することができました」とジャオ監督による徹底ぶりを振り返る。
10年以上ノマドとして生活しているスワンキーは「この映画に出演するために、実生活の状況を少しの間、忘れることにしました。出演してよかったです。ジャオは、なんと、わたしの腕のギプスのことも映画の筋に入れてくれました。素晴らしい人でした」と、ジャオ監督に信頼を寄せ、慣れない映画の撮影を心から楽しんでいた様子。
2度のオスカーに輝いているマクドーマンドとの共演についても「まるでわたしが有名な映画スターで、彼女がわたしの熱烈なファンであるかのようにふるまってくれました。
“一緒に映画に出られてとても嬉しい”と言ってくれました。なんだか、長い間離ればなれになっていた旧友に再会したような気持ちになりました。撮影中は今までに感じたことのなかったような愛、存在意義、感謝を感じました」と、撮影チームと丁寧に心を通わせながら作り上げたことを明かしている。彼女たち一般のノマドたちはほとんどが本名で登場し、自身の役に実体験も盛り込んでおり、ジャオ監督に演出を付けられながら映画用のキャラクターとして演じている。