2014年6月以降、米国におけるシェール・オイルの生産増加などを背景とした需給悪化懸念から下落傾向が続いている原油価格は、OPEC(石油輸出国機構)による減産見送りや、原油需要見通しの引き下げなどを受け、足元で下げ足を強めています。原油価格の下落は、原油輸出国から原油純輸入国への実質的な所得移転をもたらすことから、日米欧などの先進国をはじめとする原油の純輸入国では、ガソリン価格や原材料コストの低下を通じた企業収益や消費の下支え効果が見込まれています。
こうしたなか、原油純輸入国の中でも、原油安の恩恵が特に期待される国・地域として、急速かつ内需主導の経済成長を背景に、高インフレや経常赤字などの問題を抱えつつ、成長資金の多くを海外に頼る新興国が挙げられます。例えば、エネルギーの輸入依存度が高いトルコは、その代表格とされており、同国の輸入の多くを占める原油価格の下落は、経常収支、ひいては成長率の見通し改善に寄与すると考えられます。また、アジアに目を向けると、インドでは、インフレ率の高止まりが緩和的な金融政策の実施を困難にしていたものの、原油価格の下落に伴なうインフレ圧力の低下期待を背景に利下げ観測が高まり、景気見通しの改善につながっています。