恋愛以前の男子たちへ (7) モテないハンパ者の矜持
ちなみ小林明子の『恋におちて-Fall in love-』は、今から30年前、1985年の歌である。不倫という言葉が広く社会に認知されたテレビ番組の主題歌だが、その歌詞中、不倫相手はプッシュホンではなくダイヤルを回し手を止めるのである。しかも完全週休2日制ではないから、既婚の不倫相手が妻の元に戻るのは土曜の夜であった。あれから30年間をボクはマスコミの世界で生き、後半20年間を田舎で暮らしてきた。いまどきITなんて言葉を使う者がいるかどうかも疑問だが、ボクの田舎暮らしを支えているのは紛れもなくITである。
と、そんなボクに先見の明があったとか、田舎暮らしの先人、ときに達人だとか、そんな見方をする者が最近、増えてきて困惑している。
「どうか田舎暮らしの極意を教えてください」
だって!
冗談じゃない!
告白しよう。そもそもボクが田舎暮らしを始めたのは、第一に都会の家賃が高いからである。
そして第二は、都会のがコジャレた女の子にモテなかったからに他ならない。ときどきそんな女性と絡むこともあったが、気後れはするわ、見栄も張らなきゃならないわ……とにかく疲れていけない。先見の明でも、人間らしい生き方を求めたわけでもなく、単に都会暮らしに落ちこぼれたにすぎない。