国循など、心臓ホルモンによるがん転移予防効果の仕組みを解明
同成果は国循の野尻崇 生化学部ペプチド創薬研究室長、細田洋司 組織再生研究室長、徳留健 情報伝達研究室長、寒川賢治 研究所長らと、大阪大学呼吸器外科の奥村明之進 教授らの共同研究グループによるもので、米国科学アカデミー紀要に掲載される予定。
ANPは1984年に寒川氏らによって発見された心臓ホルモンで、心不全に対する治療薬として使用されている。また、肺がん手術の際、術中から3日間ANPを低用量持続投与することで術後の不整脈を抑制できることや、高齢者や閉塞性肺疾患を合併する肺がん患者ではさまざまな心肺合併症を予防できることが報告されている。
今回、肺がん手術時にANPを投与した患者を追跡調査したころ、本来は合併症予防のために投与されたANP群(手術+ANP群)は、手術単独群と比較して術後2年無再発生存率が良好であった。両軍において、年齢や性別、がん進行度などをマッチングさせた統計解析でも同様の結果が得られたことから、ANPが何らかのがん転移・再発抑制硬効果を持つことが考えられ、基礎的見地から解明が進められた。
マウスを用いた研究の結果、ANPはがんに直接作用しているわけではなく、血管への作用によるものだということが判明。ANP投与前後の血管内皮細胞を網羅的に遺伝子解析した結果、E-セレクチンという血管に特異的に発現している接着分子が、ANPによって最も抑制されている遺伝子であることがわかった。
がん手術時に血中に放出されるがん細胞はその多くが短期間で消退するが、手術時の炎症に惹き起こされた血管E-セレクチンの発現亢進によってその一部が血管へ接着・浸潤し、術後の早期再発・転移の一因となっている。今回の研究結果から、ANPは炎症によって起きるE-セレクチンの発現を抑制することでがんが血管へ接着することを防ぎ、再発・転移を抑制していると考えられる。
今回の研究成果により、国循主導の肺がん手術を対象とした全国規模での多施設臨床研究を開始する予定となっている。
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