生き物に学ぶ、オドロキの「性」と「サバイバル術」(後編)
井口教授は「環境中にはさまざまな人工的な化学物質が放出されていますが、報告をたどると1950年頃にDDTという農薬が使われ、毒性が強いだけでなく女性ホルモン作用もありました(レイチェル・カーソンの著書「沈黙の春」がきっかけで先進国では使用禁止になったことで知られる)。その後もさまざまな化学物質が使われ女性ホルモン作用するものはありますが、男性ホルモン作用するものはありません。逆に男性ホルモンにくっついて邪魔する農薬はいっぱいある。男は弱いのです」
自然界がメス化しているとも言われるように、性ホルモンが正しく働かなければ、オスとメスのバランスが崩れ、いずれ種の絶滅につながるという事態も起こりえます。
環境と生物について調査や研究を継続し、どのような影響があるかを見極め、どう対処するかを冷静に考えていくことが重要です。まずは、身の回りの生き物に関心をもち、その生態に学ぶことが、その第一歩かもしれません。
○おわりに - 「不思議な生き物=研究者」集団、基礎生物学研究所
取材に訪れた愛知県岡崎市の基礎生物学研究所は基礎生物学の特化した国内唯一の研究所です。井口教授が生息(!)するラボには、井口教授自らオークションなどで収集したワニやカメの剥製が、机の下から次々出てきます。