原子から電子を受け取ることで、錯体水素化物Mg3CrH8を形成することが分かった。
クロムとマグネシウム、水素によって構成される最も一般的な化合物の組み合わせは、金属クロム(Cr)とマグネシウム水素化物(MgH2)、水素ガス(H2)の混合物であり、予測されたMg3CrH8がこの混合物よりも安定であれば合成の可能性を示すことができる。同研究ではマグネシウム水素化物、金属クロム、水素ガスの混合物(3MgH2+Cr+H2)およびMg3CrH8の安定性を第一原理計算により評価し、錯体水素化物Mg3CrH8の合成が可能であるとの結論に達した。
以上の理論予測を受け、金属クロムとマグネシウム水素化物との混合粉末(Cr+3MgH2)を5万気圧700℃の水素流体中にて4時間保持し、予測された錯体水素化物の合成を試みた。そして大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)にある中性子高強度全散乱装置(NOVA)にて試料の中性子回折測定を実施した。理論予測された構造からシミュレートしたプロファイルと比較すると、ピーク位置、強度ともに非常に良い一致を示すことから、理論予測通りクロムに7つの水素が結合したCrH7イオンを含む錯体水素化物Mg3CrH8の合成に成功したことが示された。