愛あるセレクトをしたいママのみかた

自動運転など、いつのまにか生活に浸透する「ディープラーニング」 - 西田宗千佳の家電ニュース「四景八景」

マイナビニュース
自動運転など、いつのまにか生活に浸透する「ディープラーニング」 - 西田宗千佳の家電ニュース「四景八景」
●NVIDIAがディープラーニングに燃える理由
今回の題材は以下の記事だ。

GTC 2015 - Googleが「ディープラーニング」に対する取り組みを紹介 (3月20日掲載)

最近、「ディープラーニング」という言葉を耳にする機会が増えている。多くの人にとってはまだ縁遠く、生活に関連しないものに感じられるだろう。だが、現在その活用は急速に広がっており、製品に必須の要素となるのは間近だ。今回は、その影響と製品への組み込みの可能性について考えてみよう。

○NVIDIAが燃える「ディープラーニング」とは

件の記事で話題になっている「GTC」とは、GPU Technology Conferenceの略で、毎年、GPUのトップメーカーであるNVIDIAがこの季節にサンフランシスコで開催しているイベントである。その内容は、毎年少しずつ違う。単純にNVIDIAのGPUをアピールするイベントというわけではなく、その時々に、NVIDIAが考える「GPUの重要な使い方」「GPUとコンピューティングの未来」について考えるイベント、という色合いが強い。


そんな中、今年の軸となっていたのが「ディープラーニング」だ。

ディープラーニングとは、巨大なコンピュータシステムを使って、複雑なデータから必要な情報を収集するための手法であり、データの内容からある程度自律的に情報を整理する手法といっていい。

ざっくりと説明しよう。ディープラーニングでは、脳機能を数学モデルで再現する「ニューラルネットワーク」が使われる。これ自体は、PC普及以前の1960年代まで、コンピュータで問題解決を目指す手法として注目されていたのだが、現在一般的な「データベース的人工知能」に競争で負けた。

ニューラルネットワークは、人間が自ら学習して知識や認識を強化していくように、自ら認識を高めていくのが特徴なのだが、その学習よりも、人がパラメータ設定を行って認識に利用するほうが、パラメータ製作の手間を含めても効率がよかった。

そうした状況をひっくり返したのが、ディープラーニングという手法だ。ニューラルネットワークでの学習プロセスを多層化して「深く」するから「ディープ」なのだが、色やディテールなどに分割したり、エリアを分割したりして学習層を多層化し、グルグルとフィードバックすることで、機械学習によるパラメータ構築が、人の手によるパラメータ構築を超える速度と効率を実現した。
そのためには小規模な演算を多層的に、大量に並列に回せるコンピュータが必須になる。そうした仕組みはGPUでの演算に向いており、GPUを使ったスーパーコンピュータの用途拡大を狙うNVIDIAにとっては格好の題材である……というのが、GTCでディープラーニングが脚光を浴びる理由である。

○パトカーとRVを見分ける自動運転車

ディープラーニングはどのような価値をもたらすのだろう? 現在も音声入力や顔認識は、ディープラーニングの成果が生かされ、精度アップにつながっている。しかしここでは、もう少し目で見てわかりやすく、インパクトも強い例を挙げたい。

GPUによるスーパーコンピューティングとともに、NVIDIAが現在力を入れているのが「自動車」だ。1月のCESでは、アウディと共同で自動運転車「Jack」を開発、シリコンバレーからラスベガスまで「完全自動走行」するデモを行った。画像はCESに展示されたものだが、注目は道を走る自動車の種別が正確に認識されている点である。Jackにはカメラが搭載され、そこからの映像をディープラーニングによる画像認識で分析し、人や車を避け、パトカーに特に気をつけ(笑)、まるで普通の車のように走行してきた。
人間が持っている「白黒模様でこんなデザインの車はパトカーに違いない」という認識をディープラーニングの繰り返しによって会得し、自動運転の精度と技術を向上させたことが注目に値する。

自動車側に搭載されるロジックボードである「Drive PX」には、多数の外部ポートが用意されている。これは、車のいたるところに搭載されるカメラやセンサーとのコミュニケーションを行うためのものだ。

NVIDIAジャパン・シニアソリューションアーキテクトの馬路徹氏は、こうした機構の使い方を、筆者に次のように説明してくれた。

「クラウドの向こうのディープラーニング・ネットワークに、常に接続していては間に合いません。ですから、ディープラーニングの結果得られたパラメータだけが手元に蓄積されます。そして、それを使い、ローカルにあるTegraが画像認識を行って、コントロールに使います。しかし、実際に運行している際には、これまでの学習結果からずれた情報も得られます。
たとえば、とても変わっているけれどこれは自転車である……といったようなものに出会うこともある。そうした情報は車ごとに存在するわけですが、運転していない時などに、ネットワークを介し、ディープラーニングにかけられます。結果、パラメータ精度はさらに高まる。そして気がついてみると、日々認識精度は上がっていくのです」

それぞれの自動運転車は、ディープラーニング情報を集めて全体で精度を上げるための「端末」でもあるわけだ。

●「次に見るビデオ」まで推測する世界へ
ディープラーニングは未来のものではない。今回紹介した記事では、Googleの担当者が自社内のサービスに広く活用している例を紹介している。Googleでの画像検索やAndroidの音声認識、果ては広告の最適な配置方法の検討に至るまで、幅広くディープラーニングでの解析結果が使われているという。特にアメリカでは、大手IT系企業のほとんどがディープラーニングの活用に力を注いでおり、NVIDIAにとっても大切なパートナーとなっている。


画像は、NVIDIAのページから抜粋したパートナー企業の例である。IBMやfacebook、Microsoftがパートナーに名を連ねていることに違和感はないだろうが、ちょっと注目の企業の名もある。それが「Netflix」だ。

Netflixは世界最大のビデオオンデマンドサービスの運営元で、日本にも今秋参入が決まっている。ビデオサービスの提供元がディープラーニングとは、ちょっと意外な感じもする。Netflixはこれまで、ディープラーニングの使い道について明確に説明をしたことがない。しかし周辺事情を聞くと、今の用途がおおむね見えてきている。

Netflixは、番組に多量の付加情報をつけている。
同じ恋愛ドラマでも「男性向きか女性向きか」はもちろん、「ハッピーエンドかどうか」「コメディ性はあるのか」といった、ジャンルを越えた情報をデータ化している。分類総数は7万以上と言われており、日々進化している。そうした情報は、「顧客がどんな映像作品を好むのか」という趣味趣向のデータベースとして活用されている。

たとえば、あるハリウッド・アクションを、金曜の深夜(すなわち疲れている時)に途中で見るのを止めた40代男性が、次に見ると満足してくれる可能性のあるコンテンツはなにか……という推測まで行うわけだ。サービス開始当時は、そうした「サジェスチョン」の精度は高くなかったが、現在はサジェスチョンの精度の高さが、顧客のサービスからの離脱率の低さにつながっている。

Netflixの従業員の4割はITシステムを担当しているが、さらにその多くがデータ分析に関わるエンジニア。どれだけ力を入れているかわかる。ディープラーニングは、こうした分析の他に、「分析のソースになる付加情報の決定」に使われているのでは……と予測できる。


画像認識や自動運転のような未来的でわかりやすいものだけでなく、我々がなにげなく行う「選択を助けるサジェスチョン」にも、ディープラーニングは使われる。だからこそ、家電は常にネットワークにつながっていて、サーバーと情報をやりとりする存在でなくてはいけないのである。

提供:

マイナビニュース

この記事のキーワード