3Dプリンタが改革する工芸の世界 - クリエイターの祭典「eAT KANAZAWA 2015」(3)
たち。そんな彼らが、華々しいキャリアを離れてまで実現したかったものは「食と工芸」だと語る。
「食器はまだまだデザインできる領域が大きい」と語る柳井氏の作品は、国際陶磁器コンペティションでここ数年入賞を続けるなどすでに一定の評価を得ている。陶芸の意匠としての素晴らしさを持ちながら、工業的なアプローチも忘れない氏の作品は、その形状からは想像しにくいがスタッカブル(積み重ねられる)であることを実現している。いわゆる手焼きの一点ものではなく、料亭などでも「しまう」所作を考えて設計されている。これを実現しているのが3Dプリンタの存在だ。
CADで図面を起こし、形状を作り上げていきながら、3Dプリンタでサンプルを作って実際にテストする。そうやって何度も試行錯誤を繰り返したうえで、サンプルから実際に陶器にするための「型」を起こす。
焼き物は火入れを行うと実際には10~20%縮んでしまうため、その収差を考えて設計するといったノウハウも氏ならではだが、出来上がった作品はどれも緻密に計算されているものの、そのデザインは手作りの温かみのあるものだ。彼のパートナーである上町氏のアプローチも非常にユニークだ。氏も3Dデザイナーでありながら、食へのこだわりから金沢でハヤシライス専門店を営むシェフでもある。