中国の全地球衛星航法システム「北斗」と、新型上段「遠征一号」 (2) 2020年の完成を目指す「北斗」
このことから、中国はいきなり全地球でのサーヴィス展開を狙っていたわけではなく、まず中国国内のみを対象にサーヴィス提供ができるようにし、次にその周辺のみを、という形で、堅実に構築を進めていく方針を採っていたことがわかる。
2012年の北斗衛星16号の打ち上げと、その年末のアジア・太平洋地域を対象にしたサーヴィス開始の後、北斗の打ち上げはしばらく行われなかった。しかし2015年3月30日に、第3世代機にあたる「北斗三号」の1号機、正式名称「北斗衛星17号」が打ち上げられた。
北斗三号が北斗二号からどの程度変わっているのかについては、詳しくは明らかにされていないが、おそらく搭載されている機器の性能、特に原子時計の正確さは上がっているものと思われる。また、測位の精度については従来の最大10mから、2.5mにまで改善されることが報じられている。
衛星の姿かたちは、静止軌道、傾斜対地同期軌道、中軌道ですべて変わっており、静止軌道用は新たに「東方紅三号B」バスが用いられ、さらに大きなパラボラ・アンテナが装備されている。傾斜対地同期軌道用は東方紅三号Bを使うもパラボラ・アンテナはない。中軌道用は東方紅三号Bではなく、小型の新しいバスが使われているようで、打ち上げ時の質量は800kgほどになるという。