中国の全地球衛星航法システム「北斗」と、新型上段「遠征一号」 (2) 2020年の完成を目指す「北斗」
北斗二号では傾斜対地同期軌道と中軌道の衛星はほぼ同型だったと思われるが、実際の運用を通じて得られた知見から、別個の衛星にした方が良いと判断されたものと思われる。
○北斗の今後
北斗三号は今後も続々と打ち上げられ、2020年ごろに全地球での航法サーヴィスが開始される予定だ。一部報道では、これを3年早め、2017年を目標にするように変更されたとも言われているが、実際のところは不明だ。
北斗による全地球での航法サーヴィスが始まれば、中国はGPSなどに頼ることなく、またより高い精度で、地球上のどこでも自身の位置や速度、時刻がわかるようになる。例えば、中国国内はまだインフラが整っていない地域が多いため、役に立つことは間違いない。すでに2008年の四川大地震で活用されたことが報じられている。また、GPSやGLONASSなどにはない、メッセージを送受信できる機能があることが特長だ。
北斗による恩恵を一番受けるのは、やはり中国人民解放軍だろう。
以前までなら、中国は民間向けのGPS信号を利用せざるを得なかったが、米国のGPSは、民間向けの暗号化されていない信号と、軍用の暗号化された信号の大きく2種類の信号を出しており、軍用の信号は民間用の信号よりも高い精度を出せるといわれている。